第19話

 北方の地には、幾つもの入植砦が有った。文字通り、入植者達が危険な北の地で暮らしていく為に、或る程度の広さを持った砦の中に、住処を置いている。

 いずれは無論、町と成っていくのかもしれなかったが。


 北の国々は何処も、正規に軍を派遣し、人々を守り土地を開いていく勢力や気概を、持ち切らなかった。砦そのものこそ、色々な国が人手や幾ばくかの費用を、出して建てられていたが。何処の国に属するとも言えなかった。という事は何処の国も、守る義務を負わなかった。

 入植の人々は、元の地で色々有って、新天地に夢を求めた者も居た。辺境の地へ、逃亡して来た様な者も居た。両方な者も、勿論居た。

 そしてつまり、兵も又、砦の自前であり、同じ様な者達だった。軍務や戦いの経験を売り込んで来た者も、いない訳では無かったが。守備兵として危険の可能性も有る代わりに、取り敢えずの生活が保証されるという事で応募して来たのみ、というのが大多数だった。支給された武器と鎧以外に、兵士たらしめる物は無かった。

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