第5話

 使いの兵士は、若い人間の男だった。バルキエールと、名乗った。辺境の地で、危険を背負う立場に居るが故の鋭さは有ったが、鍛えられた厚みは見えなかった。

 ただ、ガイアン達が好感を持ったというのは、弱気そうな雰囲気が、つまりは己に色々不足している事を自覚している故であって、それはただ、賢さでもあったからだった。


「ガイアン・バイアソルクだ」


「ガルボックだ」


 禿髪の大男が、名乗った。


「シャウタールだ」


 エルフが、名乗った。


「宜しく、お願い致します…傭兵の皆さんと会うの実は、初めてでして」


 腰の低い、話し方。元は商人だろうとガイアンは、当たりを付けた。


「ヤリジュアには、一人位いないのか?」


「居てくれた方が間違い無く、安全でしょうけれど…それだけの金も無く、それに、言うまでも無く嫌がる方も、多い場所ですから」


「実際良い度胸だと、思うぞ?」


 ガルボックの声は、良く響いた。


「度胸、ですか?」


「デアリアの近くに住みつこうっていうのは、そう呼ぶのが相応しいだろ」


 バルキエールの口元に、苦笑が微かに浮かんだ。


「正直皆、訳有りで」


 その場にはジャフリカも居たが、ガイアン達は、暗黙の空気を出して沈黙を、強制していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る