第16話 炸裂! おじさんローキック①
皆さん、エロ本は好きですか?
ネットを使えば、エロい画像や動画なんてチョチョイのチョイで手に入る。そんな令和の時代と違って、あの頃の中学生にとってそいつは紛れもなく宝物だった。
13歳、エロい事に興味が出てきて、だけどそのことが恥ずかしくて、エロいってバレたらどう思われるのかが不安、そんな微妙な年頃の話。
「なぁ、お前買ってこいよ」
中1の夏、俺は近所の仲間達と古本屋の前でたむろしていた。
一緒にいるのはガキ大将の吉海、ド変態の春山、硬派の安岡だ。
「ちょ、じゃあもうジャンケンで決めよや!」
安岡がそう言い、皆それに一様に頷く。
俺たちは今、誰が古本屋にエロ本を買いに行くかで揉めていた。
表向きは、『エロ本を誰かに書いに行かせる』というノリをしているが、実際の俺達の頭の中は性欲でギンギンだ。
『エロが見たい』
もちろん、俺の頭の中もそれでいっぱいだった。だから俺も買いに行くのは怖くて嫌だけどエロへの欲求がギリギリ勝ち、このジャンケンの話に頷いた。
「ほないくぞ!」
「「「「じゃーんけーん」」」
「「「「ほい!」」」
……俺が負けた。
📙💕
『……大丈夫かな? ヤバない?』
数分後、俺が一人でうろついているのは古本屋の店内、エロマンガコーナーだ。買う本はもう決まっていて、タイトルとかは忘れたけど、なんかJKがサラリーマンの家に泊まってエロいことされる感じのやつだ。
『……よし! ……いやまてよ?』
本に手を伸ばしては引っ込める。
『うーん、これレジに持って行くと、こういうの好きって思われるのかな』
レジにいるのはくたびれたおっさんだけど、そんなことを心配してしまう。今となってはそれがどうした! ってなもんだけどこの時はそうもいかなかった。
急にエロくなった自分に戸惑っていて、それがバレると自分がひどくキモい存在になってしまうような気がしてどこか不安だった。皆も思春期の頃を思い出してほしい。急に訪れる変化、それがいいものであれ悪いものであれ、不安になる。それがいいものなのか悪いものなのかわからないから。いずれそれは当たり前になるんたけど、それを受け入れる器がない。だから一生懸命、血反吐を吐きながら器を作ってる。この頃は、きっとそんな年頃なのだ。
だから俺は、この頃そんなことは一切合切意識なんてしちゃいないが、器を作るために一歩を踏み出す。
『いや、関係ない、俺が選んだ本じゃない、変態なのは春山だ。俺は暇つぶしに横から読ましてもらうだけの普通の人だっ!』
心の中に他力本願かつヘタレな呟きを充満させながら、俺は本を手に取りレジへと向かう。
心を無にしてただ金を渡し、おっさんの顔を見ないようにして本を受け取り、階段を小走りに駆け降りた。
「おぉ、雪田買ってきたん?」
「いけた?」
俺の素敵な仲間達はそう口々に、あくまで軽いなんてことない感じで言う。
『緊張したの俺だけかよ、ダサいな……』
なんてこの時は思ってたけど、多分皆性欲に、ぎらついてるのが恥ずかしくて演技してるだけだったのだろう。
皆もあったか? 思春期の時、周りの強がってる友達がやたらと度胸あるように見えて、それに合わせて無理してカッコつけて、だけど内心、
『ホントは怖いんだけどな……、ダサいの俺だけなのかな?』
なんて不安になって、だけどカッコ悪くて誰にも言えなくて、なんて時が。
あるんだったらちょっと、嬉しいな。
なんてかまちょなことを思ったところでこの話は次回へと続く。
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