第8話 もうつきまとわないでくださいじゃあこれっきりで②
前回のあらすじ。
塾でさんまさんを録画したビデオをJKに貸すことになった、以上!
それから2週間程の月日が経ち、俺は悩んでいた。
「……ヤバいかもしれん」
ビデオを貸してあげたJKが可愛すぎる件について。
さんまさんビデオの会話の翌週、俺は先生にビデオを貸し、そのまた翌週先生から帰ってきたそれを丁度その日も来ていたJKに渡した。その時のJ K はもう満面の笑みで、
「うわぁ〜、ありがとうございます〜」
と、飛び跳ね始めるんじゃないかという喜びっぷり。
その純真なリアクションと清楚系な見た目も相まって俺のハートは見事にブレイクしてしまったのだ。
そのJ K(小池さんというらしい)は、隣町の進学校に通う一個下の2年生。普段女子とほとんど話さない俺にとっては、その無垢で愛らしい笑顔が感謝と共に自分に向けてなされているという事実は、無駄に頭をくらくらさせる。そして当然のように俺は、自分がモテないことや初めて話す相手にビデオを借りた最低限の礼儀としてそれくらい愛想良くするのは当たり前だという事実など忘れ、有頂天バカのスパイラルに飲み込まれていくのである。
有頂天スパイラルの中では、その可愛らしい瞬間が頭の中で何度もフラッシュバックを起こし、俺の脳は順調にバグっていく。
全く救いようのない話だが、わかってくれるイカした(童貞の)メンズもたくさんいるのではなかろうかいてくれ頼む。
そしてそれを一晩繰り返す頃には、俺の人生の目標第1位が『どうすれば小池さんと仲良くなれるのか』という残念無欠な受験生の出来上がりだ。
そんな無欠の残念王となった俺は、塾で授業の予定表をこっそり覗き見ては小池さんが次いつ来るのかチェックしてその日を楽しみにし、友達に振る話題は殆ど『小池さんが好きすぎてヤバいどうすれば振り向いてくれるだろうか』になり、塾で一緒になったら単語帳を見るフリしながら塾から出るタイミング合わせたりと、順調にぶっ壊れていった。完全にストーカーである。
♡♡
「うぉ〜、……小池さん」
そして当たり前だが、この片思いは順調になんて進まない。
トークは自分勝手、顔はイケメンなんて程遠い鼻とか低くて平らで捻くれた童顔、更には無駄にツンツンに立たせた茶髪にパンツが見えそうなほどずらした腰パンという残念なファッションセンスのおまけ付き、当時の俺はそんな男だったのだから尚のこと救えない。
塾で会うたび必死で話しかけ、浮かれ、バレンタインの日には俺の目の前で小池さんがイケメン生徒にチョコを渡し(もちろん俺はもらえなかった)、俺は限りある時間をひたすら浪費した。
そしてそのまま時は順調かつ残酷に流れ、まだ幸いな事に一応第二志望の大学には合格した俺は、塾で小池さんに会う最後の日を迎える。
「あの、せ、……せっかくやし、そ、……その、よかったら、これ、俺のメアドやねんけど、俺、初めて携帯買って、そんで、よかったら送って……」
無力な俺に残された最後の選択肢は、ドモりながらきったない字でメアドの書かれた紙切れに、未来を託すことだけだった。
この薄汚れた紙を一応笑顔で受け取ってもらったところで、もう半分終わってる片想いに胸を痛ませるもう完全に終わってる俺の話は次回へと続く。
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