第7話 もうつきまとわないでくださいじゃあこれっきりで①

 当たり前の話だがその昔、俺は童貞だった。


 いや、もっと言うと童貞クソ野郎だった。


 女心なんて1ミリもわからず、女性を男と、いや自分と同じシステムの精神で物事を考えてる前提で接していた。男で、しかもモテた試しがない童貞クソ野郎のメンタリティを前提として女性に投影するというウンコタレ丸出しの悪事を働いていたのである。さらに、俺自身にはその自覚は全くなく、あくまでも相手を女性として最大限尊重しているつもりなのだから余計にタチが悪い。


『俺はあの子が好きだ』

『俺が好意を向けるということはモテているのだから相手は悪い気しないに決まっている。ゆえに何も考えずに空気も読まずアタックしても大丈夫なはずだ』

『本気で俺が好意を伝え続ければいつかは振り向いてくれるだろう』


 ……過去の自分の公開オ○ニーっぷりに眩暈がしそうになる。


 これを読んでくれてる人の中にもし“童貞クソ野郎”な奴がいるのなら、アンタも是非注意してみて欲しい。


『果たして俺はちゃんと、デリカシーを持てているのか? 人はそれぞれ、大なり小なり自分と違う精神構造を持っていると理解できているのか?』


 なんて、そんな自問自答でモテスキルを是非磨いてほしい。


 ……一応言っておくがここでいう“童貞クソ野郎”というのは童貞そのものを指すのではなく、女心に対するデリカシーが存在していないメンタリティを有している人間のことを指している。もちろんそのメンタリティさえ持ち合わせていれば童貞でなくても“童貞クソ野郎”に当てはまるし、紳士的な童貞の方はもちろんこれには当てはまらない。


 ゆえに俺には童貞をバカにする意志は一切ない。気分を害された童貞の方がいたらゴメンなさいm(_ _)m。


 ……と、前振りが長くなってしまって申し訳ないが、ここから本題に入らせて頂く。


 今回こんなクソみたいな自分語りに耳を貸してくれてるイカしたハートの童貞供に聞かせたいのは、昔の俺の滑りに滑った片想いの話。最初に断っておくが、あの頃の俺には明らかにストーカー気質がある(書いててそのことを思い出して今頭が割れそうに痛い死にたい)。それでもよければ、「こいつマジ終わってんなー」なんて気楽に読んでもらえるとありがたい。


 さて、この話をするにはちょいと時間を、高校三年生(10年以上昔)まで遡る必要がある。


 ♡♡


 高校三年生の冬、バリバリの受験生かつ人身事故を起こしてバイクに乗ることを家族から禁止されて暇で死にそうだった俺は、かなりの頻度で塾に通っていた。暇人な俺にとって塾は楽ある種の救いだった。何せカワイイ女子大生の先生にマンツーマンで勉強を教えてもらえるのだから。しかも、宿題を忘れて優しく叱ってもらうというオプションにも追加料金はないというオマケ付き! だからそりゃあもう、通わずにはいられないのは必然だといえよう。


 そんな快適キャバク……いや通塾ライフを過ごしている俺の心にその冬、電撃が走った。そう、あれは、俺がお気に入りの田上先生から英語を教えてもらっている時のこと……。


 っとその前に、まずは当時俺が通っていた塾について説明させてくれ。


 俺が通っていたのは“個別指導塾”というタイプの塾で、1人の先生が教える生徒は1人か2人、つまり先生:生徒の比率は1:1もしくは1:2なのである。飲み屋に例えると普通の集団塾がスナックとかラウンジで、個別指導塾がキャバクラって感じ。なのでもちろん個別指導塾の方が月謝は高い。あと基本先生は大学生(ココ重要)だ。


 そしてこの個別指導というシステムがミソなのである。先ほども言ったように、スケジュールと人件費の都合上、2人の生徒が同時に同じ先生について比率が1:2になることがよくある。まぁそれは普通に勉強のことを考えると、先生が常には見ててくれないからハズレの状態。けれど塾をキャバクラ代わりに使っている俺からすると話は変わってくる。生徒が女子である場合、そこは控えめに言って天国に変わるからだ。


 女子を含めて1:2になると、


【生徒(JK)、先生(JD)、生徒(DT)】


 の3人が横並びという、(DTにとっては)夢のコラボレーションが発生するのである。


 つまりこの時、個別指導塾は普段の単なるキャバクラ(個別指導塾さん勝手なこと言ってゴメンなさい)から“キャバクラ+相席屋”という神システムなサービスへとクラスチェンジするのだ!


 さて、話を戻そう。あれは毎週受けてる田上先生(カワイイ)の授業の時だった。その日は先生を挟んだ向こう側にもう1人JKの座る夢コラボの日。


 とはいえ自分から女子に話しかけられないチキンハートな俺は、ひたすら田上先生に意味のない雑談を浴びせかける←勉強しろ。


 そんな中、話題はテレビの話になる。田上先生は『恋のから騒ぎ』という、“さんまさんがテンションの高い女の頭をシバきまくる”番組が大好きで、それをいつも観ていたらしい。しかし、最近やってた『恋のから騒ぎスペシャル』は時間が合わなくて観逃してしまい、そのことをやたらと後悔していた。そしてそれを聞いた俺も『恋のから騒ぎ』は大好きであり、スペシャルはちゃんと録画していたのでもちろん、


「そーなん? 俺録画してるから貸すでー」

 

 ってな感じの、提案をする。すると先生は満面の笑みで、


「え? ホンマ? じゃあ借りてもいい?」


 っていうちょっと前のめりな感じのリアクション。年上のお姉さんがビデオを借りることに浮かれてる感じに俺はちょっとキュンキュンする。……けどそれがバレちゃ恥ずかしいのであくまで平静を装いながら、


「いいでー」


 と応える。


 すると次の瞬間、先生の向こう側で真面目に勉強していた真面目系JKが『グルン』と音が鳴りそうな勢いでこっちを向く。


「え? すいませんあの、先生の後でいいんで私もそれ借りていいですか?」


 いや話聞いてたのかよ。そしてさんまさん女子人気高過ぎ羨まし過ぎるだろ。


 まぁでもその時の俺としては、JKと絡むきっかけ出来てラッキーありがとうさんまさんって感じなので快く了承した。


 なんて思ったところでこのさんまさんのビデオきっかけのアホくさい話は次回へと続く。

 

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