第9話 もうつきまとわないでくださいじゃあこれっきりで③
前回のあらすじ。
イケメンに嫉妬した僕はJKにメアドを書いた紙を渡しました以上!
♡♡
俺はやはり悩んでいた。いや、病んでいた。
メールが中々来ない。
そのことでずっと頭を悩ませていた。
俺は高校を卒業して大学に入学。入学オリエンテーション、新しい友達、繰り返される飲み会、地元での揉め事、パンパンに腫れた顔、普通二輪の卒業検定、まだ春になったばかりだがいろんなことがあった。
だけど、俺の頭の中のど真ん中は、手の中に握り込まれた小さな端末に集約されていた。
一応、返信は来たのだ。メアドを渡して1ヶ月ほど経ってから、割と長文の(今思えばやたらと他人行儀な)メールが。それの度俺はエアダスターも真っ青の鼻息を飛ばしながら痛々しい(内容は覚えていない。脳の防御システムが思い出すことを拒んでいる)内容のメールを送り返し、また中々返事が来なくて悩む日々を過ごす。
友達には、会う奴会う奴小池さんの話をひたすら(みんなよく聞いてくれてたなホントいい奴らだ)して、頭の中はほぼずっと小池さん絡み。
唯一忘れられてる時といえば、買ったばかりのゼファーχでニヤニヤしながら国道を飛ばしてる時くらい。なんならその時だって信号待ちとか油断すると頭に浮かんでくるレベル。
大学生で、友達がいて、バイクがあって、毎日遊んで。きっとあの頃の俺は最高に恵まれていた。
だけど心はきっと、『もっと、もっとだ』ってずっと幸せを求めていて、その目的地を勝手に小池さんに設定して、満足感をどこかへ押しやってまで何かを求めてた。
それがどれだけカッコ悪くて、人に負荷をかける行為かさえ知らずに。
そこに気付きそうになる自分から逃げるように、
『恋をすることは素敵なことだ』
『恋を本気で追いかけることは青春だ』
そんな自分勝手な魔法をかけて、その時間、そして行為を正当化していた。
つまり、あの頃の俺はシンプルに言って、自分に“酔って”いたのだ。
本気で悩むほど誰かを好きになって、叶わなくても追いかけてしまうくらいに不器用で、そんな苦悩を仲間に共有して、って感じで自分を主人公へと仕立て上げる。
俺は小池さんを、俺が主人公であるための”養分”にしていた。
なのに俺は、好きになった、という感情に正しいという魔法を与えた。
そして俺は、それを小池さんに、メールの返信に執着するという形で押し付けてしまったのだ。
ただ待ってるだけならばそれでも良かった。
俺の中の歪な心が、小池さんに強く伝わることはないのだから。
だけどあの時の俺は、動いてしまった。
って感じで謎にシリアスっぽい悩み方し出したところでこのアホな男の迷惑アホ行為の話は次回ラストです。
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