第6話
スーパーへと向かう...そのはずだった。
「...宏、なにか聞こえない?」
「え?」
耳をすませても、何も聞こえない。
「...なにも聞こえないけど。」
「ちゃんと...もっとちゃんと聞いて。」
「どこらへんから聞こえる?」
「...近い。」
「え?」
「宏っ!後ろ...」
「...え?」
振り向くと、俺が殺した子供を食べる、女の姿があった。
「ゔっ..何だあれ...」
「...わからない...けど...。逃げる?」
「...逃げないよ。」
銃を構える。さっきよりも身が軽い。
血だらけになった、女がこちらを見る。
銃口を向け、姿勢を正し、引き金に指をかける。
「はあーっふう...ふーっふう...よし。」
息を整えた、その瞬間だった。
「ゔああ...り...りっく...ん...ゔぁあ...あ...」
その不気味な声とともに、女は泣いた。それは、人の涙だった。
「...ゆ...雪音...」
「...大丈夫。大丈夫だよ。」
「うあああああああああああああああああああああああっ!」
銃声が響く。
そうだ...感情はあるのだ。人はどれだけ変わろうと、感情はあるのだ。
「...雪音、僕は...もう何が正しいのか...分からない。”アレ”は人だ。僕は...人殺しだ。人を殺したんだ...。」
「宏くん...」
「ごめん雪音。僕はやっぱり...変われない。こんなにも世界はひっくり返ったというのに、何も変われなかった。何度も変わるチャンスはあった。きっかけはあった。
君も僕を変えようとしてくれた。世界は僕を変えようとしてくれた。父さんも
僕を変えようとしてくれた。だけど...やっぱり僕は変われないんだ。」
「変わったよ。」
「え?」
「君は、変わったよ。私を救ってくれた。前の君なら、逃げて逃げて逃げて...
卑屈になっていたと思う。自害しちゃってたかもね。」
「雪音...。」
「変わってく君が...私はかっこいいと思う。」
「そっか。...そっかあ。」
気づけばまた情けなく泣いた。
雪音...僕は...ちゃんと君を守れている気がしないんだ。
君に守られている気はするけれど、君を守っている気はしない。
こんな僕の...どこがかっこいいっていうんだ。
僕はただの...情けない男だ。
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