第12話 川が氾濫してラオス、ベトナム人は動かない
大量の機材を動かすには人とクレーン車やトラックが沢山必要だ。
我々日本人スタッフ七人で幾つかの車両三台を川岸から上に上げたが。心配なのは機材などが流されたら大変だ。
被害を防ぐ為に必死になって働いた。しかし雨が強くなり一向に仕事がはかどらない。現地人を恨んだ。誰の為に橋を造っているのか彼等には関係のない事らしい。自分達の損益しか考えない連中の為に、どうして徹夜で働くのだ。こっちも放り出したくなる。そんな時だった。
祐輔は双眼鏡を取り出して懐中電灯を照らした。川岸にあるクレーン車がグラッと傾いた。そんな筈はない! 祐輔は呆然した。他の車両やクレーン車は作業が終わったら川岸のコンクリートのある硬い所まで移動させロープで固定させて終了する事になっている。
それなのに砂地の上に置いたままだ。どうして決まられた事を守らないのか、その結果がこれだもの。
その砂が削り取られクレーン車が傾き水に押し流されようとしている。
まだ橋は完成していない。クレーン車一台だって高価なものだ。ぜったいに壊してはいけない。祐輔はクレーン車を目がけて走った。流される前にクレーン車に飛び乗りエンジンを掛けて安全な場所に移動させるしかない。
祐輔はクレーンに向ってロープを投げた。ロープの先端に鉄の棒を括り着け三度目でなんとかクレーンの一部に絡まった。
裕輔はロープを体に巻きつけ、腰まで水に漬かりながらクレーン車に近づいて行った。すると平井監督が裕輔に大声で怒鳴った。
「おい谷津、何をやっているんだ。危ないぞ!」
「分かっています。クレーン車のエンジンを掛け安全な場所まで移動させます」
「馬鹿! 何を言ってんだ。クレーンが傾いている早く引き返せ」
「でも此のままではクレーン車が横倒しになり、使えなくなります」
祐輔はどしゃぶりの雨が降る中をクレーン車の運転席に飛び乗った。
必死になってエンジンを掛けようとしている。数分後エンジンが始動した。ライトを点けクレーンの先端を岸に向ける。
こうすれば最悪の場合でも川に流される事を防ぐ事が出来ると考えた。
その頃ビオランはベトナム側の作業員の責任者とラオス側の責任者ジオレードへ電話を掛け必死に説得していた。
「ねぇジオレードどうして分かってくれないの。日本人がこの雨の中を必死で橋を守ろうとしているのよ。それも私達の橋の為によ」
「だってそれが奴等の仕事だろう。俺達は約束通りの仕事をして時間通り帰って何が不満なんだ。俺達の橋というけど、時間外まで働く必要はないだろう」
つづく
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