第9話 祐輔とピオランは誰もが認める恋人同士
農業と一部の観光と国土の半分が森林で水が豊富でありアジアのバッテリーと言われる水力発電が主な収入源だ。そんなラオスで比較的恵まれた女性のビオランだろうと思ったが、聞いている内にそうでもない事が分かった。
頭の良さは抜群で国の援助金で大学を出て通訳の仕事に着いたらしい。
車は以前にアジアの、大手の会社の通訳を一年ほど勤め、その会社の所長が帰国する為、中古だがプレゼントされた物だと分かった。それだけ優秀で信頼を得たからだろう。
「ねえ、ユウスケ。橋の完成はあとどのくらい掛かるの?」
「順調に行けばあと十ヶ月くらいかな。十月末頃完成予定になっているけど」
「そうあと十ヶ月なの……」
しかし橋の工事は予定より四十日くらい遅れている。休日を利用してビオランとの交際も次第に深まっていった。
ビオランの云う通りになった。好きになった事には嘘が付けないが、だけど祐輔は此処に仕事に来たのだ。それを優先して恋の行き着く先は川の流れに委ねて、流されるままにと勝手に自分に言い聞かせていた。
そうは云っても若い二人の恋は冷める事もなく、橋の工事は予定通り進まないが二人の関係は確実に恋は進んでいった。
工事が遅れても細かい事で現地の作業員と摩擦を起こしたくなかった。橋造りは大事だが友好が何より最優先する。二人の交際は今では誰もが認め結婚しても驚かないだろう。月日は流れ八月を迎えていた。国境に掛かる橋は順調に進み八割程度が完成していた。ただ雨季に入り、川も増水している。纏まった雨が降らない事を祈るだけだ。
橋の完成が近づくのに比例してビオランと祐輔もなんらかの決断を迫られた。
複雑さが入り混じって、その完成して行く喜びと完成したと同時に、このままでは別れもやってくる。後ろ髪を引かれる思いで帰国しなくてはならない祐輔だった。そんなある日、ビオランが祐輔と日本に一緒に行きたいと言った。
祐輔も決断した。ここまで来て別れる事はもう出来ない。祐輔もそう思うようなっていた。国際結婚ともなれば何かと問題が多いだろうが、ビオランならそれを乗り切り事が出来るだろうと、そして自分もそうなって欲しいと願うようになっていた。
祐輔と付き合うようになりビオランは熱心に日本語を勉強した。日常会話なら問題ないくらい。日本の習慣さえ慣れれば問題ないだろう。
そんなある夜の事、作業員と親交を深めようと裕輔は若い者達だけ誘い飲みに出掛けた。日本からは裕輔だけ、それにビオランとジオレードその他にラオスの作業員十一人とベトナム側から八人だ。
居酒屋といいた処だが、こちらは屋台だ。日本円で一人三百円も出せば好きなだけ飲み食べられる。
ここラオス周辺の国は熱帯地で年間でも一番気温が低くとも十五度態度で昼間は平均三十度以上ある。だから屋台は寒さ避けの囲いもない、せいぜい雨除けと日差し避けのシートがあるだけだ。二十数人でも六千円もあれば充分だ。裕輔は日本円で給料を貰っているから全員にご馳走しても安いものだ。日本なら一人で六千円は飛んで行く。
つづく
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