第8話 ビオランが祐輔に愛の告白

 監督以下スタッフ六人は現地のレベルに合わせるしかなかった。

 十二月も終わりに入り日本では正月になる為、日本人スタッフを含め全員が三日間の休日となった。勿論ラオスも一月一日は祭日として休日となるが、ラオスでは単なる祝日に過ぎない。

 このラオスの正月は四月十三日~十五日でビーマイ・ラーオはラオスの新年(水掛祭り)と呼ばれて、お互いに水を掛け合って無病息災祈念する行事があるそうだ。あれからビオランとは取れる休日の半分いつも一緒だった。

 今では日本人スタッフを問わずラオス人、ベトナム人の現場仲間では公認の仲となった。今日は元旦とあって祐輔は初めてビオランのアパートに招待された。   

 ラオスの主食であるカオニャオ、餅米を蒸して籠に入れたものを手にとって千切って食べるらしい。それに野菜、魚、肉などの料理を出してくれた。


 二人は食事を終えたあと、ビオランは祐輔が好きな珈琲を出してくれた。

 祐輔の好みを知っているのか町で飲む珈琲より美味かった。そんなビオランが祐輔をしみじみと見つめている。その魅力的な眼で見つめられ裕輔はドキッとする。祐輔は生まれて初めて恋をした。ただビオランには過去に恋愛経験があるかは知らないが過去は過去だ。そう祐輔は日本人気質なのか過ぎた事に拘らない。ビアランは大きな眼に黒い髪を掻きあげてから真面目な顔をして言った。

「私……ユウスケが好きよ」

 祐輔は突然のビオランの告白に驚いた。確かに魅力的な女性だが告白されても先を考えたら難しい話だ。例え恋が発展したとしても国は違うし互いの習慣はあまりにも違い過ぎる。

「ありがとう。ビオラン、でも俺は橋が完成したら日本に帰るんだぜ」

「分かっているわ。でも好きになった事に嘘がつけないわ」

 なんとストレートな女性だろう。ラオスの人口(2010年時)六百七十万人前後でしかない国で中国、ミャ ンマー、タイ、カンボジア、ベトナムに囲まれ東南アジアで唯一、海のない国である。やはり海がないと大きく国益を損なうだろう。


つづく

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