第7話 就業時間に遅れるのは当たり前のお国柄
日本を出て十月末に此処の現場に来たが、ラオスは六月から十月にかけて雨季で三月から五月は夏季にあたる。二月から四月までを乾季と呼んでいる。ここに来て一月半が経つ、計算から行くとあと半年で雨季に入る予定だ。
その雨季の前に地盤と橋台作りを完成させたい。いよいよ本工事が始まった。
監督を始め日本人スタッフは気合が入ったが、現地の人間の働きぶりには驚いた。
始業時間は守らない、しかも休憩時間は仕事が途中だろうと勝手に休憩に入ってしまう。途中で止めるなと言ったら、今度は三十分前には次の仕事に手を付けようとしない。まだ時間があると言うと昼休みまでに終わらないから、やらないと言う始末だ。
監督や先輩が怒ってラオスの責任者に文句を言ったら、ここは日本と違う、それが当たり前の事で強引にやらせたら暴動が起きるとまったく習慣の違いとは恐ろしいものだ。
祐輔は思った。国が違えば人種も違う当然日本人の考え方を押し付ける事は間違っているのかと。日本では上司に嫌われない為に、休憩を削っても仕事を止めないし、言われなくても残業もする。
しかし彼等は始業時間に遅れても、都合の良い規則だけは主張する。
お国柄の違いにイライラする日々が続いたが、度々ビオランとデートするようになり、その時だけは癒された。
祐輔はビオランに尋ねた。そして現地の人の考え方の違いも教わった。彼等との仕事に対する相違から工事予定は当然のよう大幅に遅れた。
監督は状況を日本の本社に説明するが、本社では依頼された政府には小言を言えない。だからその辺は臨機応変に対応し親善が最優先だと、現場任せの答えが返ってきた。
これは慈善事業なのだ。現地の人間はその辺を理解しようとしない。己の損得だけで生きている。この橋造りは日本国の援助で行なっているのに俺達は何しに来たのだと、すっかり意欲を無くした。
あの若い責任者に言っても返って来る返事は、それが習慣だからと開き直る。
監督は言った。仕方がない郷には入れば郷に従えだ。我慢しろと言われた。
親善が第一と耳にタコが出来るほど聞かさせてはいるが……
ベトナム人とラオス人の仕事ぶりにはイライラが募るが、監督の云うとおり怒っても仕方がない。
つづく
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