17・暗黒に閉ざされし王都

 アンディの懇願を受け、ヘリオスに乗って王都に戻ったラウルとシェリーは目の前の光景に唖然としていた。


「……!?」


「これは……」


 王都全体が暗黒のオーラに包まれ、所々から不気味な漆黒の職種のような物が魔法陣から伸びていた、王都中で黒く禍々しい怪物がウヨウヨしていた。


「……まるで魔界ね……」


 その光景を見てシェリーは呟いた。


「……!?」


 同じように王都を見回していたラウルは王都の中の一か所に目を付けた、そこでは、禍々しい怪物に襲われている親子がいた。


「ヘリオス!」


「グオ!」


 ヘリオスはラウルの声に応えるように鳴き声を上げ、親子の元へ向かう。


「えーーん!!」


「助けて……助けて……」


 母親は泣き喚く娘を抱きしめている、怪物が親子に襲い掛かり、母親が目を瞑ったその時、怪物は切り裂かれた。


「大丈夫ですか!?」


 怪物を切り裂いたのは、ヘリオスから飛び降りたラウルだった。 


「あ……ありがとうございます……」


 ラウルにお礼を言う母親、そして、ヘリオスとシェリーも降りて来る。


「ド……ドラゴン!?」


 ヘリオスに驚く母親。


「大丈夫です、彼らは俺の仲間ですから、王都の他の人たちはどうしたんですか。」


「王都の外へ避難しました……しかし、私たちは逃げ遅れてしまって……」


「……」


 母親の話を聞いたラウルは数秒考える。


「ヘリオス、シェリー、二人を王都の外まで連れて行ってくれ。」


「はあ? 王都の外にって、あんたはどうすんのよ。」


「俺は城に向かう。」


 ラウルは城を見つめながら話す。


「何言ってんのよ! 一人じゃ無理よ!」


「二人をここに置いていくわけにもいかないし、もう時間がない、これしか方法は無いよ。」


「だからって……」


「グォオ!!」


 その時、シェリーの言葉を遮るようにヘリオスが鳴き声を上げた。


「ヘリオス……」


 ヘリオスはシェリーを見つめている、まるでラウルを信じろと言わんばかりに、そしてラウルは口を開いた。


「大丈夫、あれくらいなら俺でも倒せるし、ヤバかったら逃げるなり隠れるなりするさ……頼む。」


 ラウルは頭を下げる。


「ああ……もう……間違っても死ぬんじゃないわよ!」


「……ありがとう、頼んだよ、ヘリオス。」


「グォ」


 ヘリオスは軽く鳴いて返事をすると、親子に背中を向ける。


「さあ、さっさと乗った乗った。」


「え……ええ……」


 母親の手を引いて親子をヘリオスの背中に乗せるシェリー、ドラゴンの背中に乗せられた母親は戸惑っている様子だった、そしてヘリオスは飛び立つ。


「お兄さん!」


 ラウルが城に向かおうとした時、少女がラウルに声を掛けた、ラウルは振り向く。


「頑張って!」


 ラウルに応援の言葉を送る少女、そしてヘリオスは飛んで行った。


「……」


 軽い微笑みを浮かべるラウル、そしてラウルは城に向かって走り出した。


 その時、ラウルの近くの物陰にて人影が動いた。


(ラウル……!?)


 黒いフードを被るその人物は、ラウルを知っている様子だった。

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