15・冒険者との別れ

 月光花を回収した翌日、ラウルとシェリー、そして銀の流星一同は大森林を超えた海岸に来ていた、そこには銀の流星が乗って来たであろう大きな帆船が止まっている。


「ここでお別れだな、二人共。」


 ブランドンは名残惜しそうな様子で言った。


「はい、残念ですが。」


「しっかりやりなさいよ。」


 ラウルはブランドンと同じく名残惜しそうな様子だったが、シェリーは若干偉そうな様子だった。


「お前達には何から何まで世話になってしまったな。」


 バロンが申し訳なさそうに言った。


「まさかクイーン・タランチュラの素材までくれちまうとはな。」


 ビリーは船に積んだクイーン・タランチュラの爪やら甲殻やらを見ている。


「皆さんお金が必要なんでしょう、どの道俺には活用できない素材ですから気にしないでください。」


 銀の流星の故郷、アルセント王国ではつい先日新しい国王が即位したのだが、その新しい国王は人間性に問題があるらしく、権力を傘に国民に対してやりたい放題を始めているという、なので銀の流星は巻き込まれる前にアルセント王国から移住する予定らしい。


「ラウルさんはこれからどうするんですか?」


「俺はもうしばらくしたらまたどこかへ行こうかと思います、まあ人里は避ける事になりますけど。」


「まあ、ヘリオスがいたら100%騒ぎになるよね……」


 カティは苦笑しながらヘリオスを見上げている。


「それもあるんですけど、ヘリオスの存在が貴族に知られたらと思うと……」


「貴族って大半ろくでなしだから、あまりいい事にはならないでしょうね。」


 シェリーは腕を組んで言った。


「確かに……最悪戦争に駆り出される可能性もありますわね。」


「……あ、だったら、冒険者ギルドに登録したらどうだ?」


 ビリーが少しの間考え込んだ後、一つの案を出した。


「冒険者ギルド?」


「確かに、ギルドの管理下に入れば貴族からは逃れられるが……」


「どの道人前に出なきゃ駄目だから、難しくない?」


 バロンとカティがビリーの提案に意見する。


「そうか……」


 ビリーはがっくりと肩を落とす。


「まあでも、選択肢としては有りだと思うぜ、どの国のギルドに入るかは、考える必要があるけどな。」


 ブランドンは国を選ぶよう補足した。


「さてと、そろそろ出発しなきゃな。」


 バロンが先に船に乗る。


「そうだな、じゃあなラウル、また会おうぜ。」


 ブランドンも他のメンバーと一緒に船に乗ろうとする。


「はい……あ、それとブランドンさん、カティさん。」


「ん?」


「なんだ?」


「……お幸せに。」


「!?」


「な!?」


 ラウルは満面の笑みで言った、二人の顔が真っ赤になる。


「ませた事言ってんじゃねーぞこいつ!!」


 ブランドンは真っ赤な顔でラウルを羽交い締めにする。


「……苦し……苦し……」


「ははっ、次に会う時は子供出来てるかもな……」


 ビリーがふざけて言ったその時、カティがビリーのつま先を踵で踏みつけた。


「ギャー!!」


「ビリーさん、その発言はいくら何でも……」


 エラはジト目でビリーを見ている。


「やれやれ……」


 バロンは呆れている様子だった。


 そして、銀の流星を乗せた船は出港した。


「お元気でーーー!!」


「さようならーーー!!」


「また会おうぜーーー!!」


「オオオォー!!」


 ラウルとシェリー、銀の流星は互いに腕を振っている、ヘリオスも別れの挨拶のつもりなのか、大きな鳴き声を発している。


「……行っちゃったわね。」


「……そうだな。」


 やがて船が見えなくなったので、腕を振るのを止めた二人、名残惜しそうな様子だ。


「……ところで、シェリーはどうすんの。」


「私? 私はあんたに付いて行くわ」


「へ?」


 シェリーの言葉に素っ頓狂な声を上げたラウル。


「元々私はあんたと契約する筈だったんだし、あんた達と一緒だと、退屈しなさそうだしね。」


 そう言いながらラウルの周りをクルクルと周るシェリー。


「……まあ、シェリーが一緒にいてくれるなら心強いし、俺は良いよ、ヘリオスは?」


 ラウルはヘリオスに問う、ヘリオスは返事をするように軽く鳴いた。


「……良いみたいだな、これからよろしく。」


「ええ、よろしく。」


 こうして、少年と竜の旅に妖精が一人加わったのであった。



――――――――――



 その後、教会に戻り3日ほど経った時の事だった。


「ラウルーーー!」


「!?」


「?」


 突然ラウルをよぶ声が響く、二人が声のした方に目を向けると……


「……アンディ?」


ラウルの幼馴染、アンディが走って来たアンディは息を切らしている。


「ラウルだよな……やっと見つけた……」


「アンディ、なんでここに……」


「ラウル!!」


 アンディは切羽詰まった表情で走って来てラウルの肩を掴んだ。


「お願いだ……リリーを、助けてくれ!!」

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