14・女王蜘蛛との闘い
クイーン・タランチュラは地響きを鳴らしながらヘリオスに向かって突進する、ヘリオスはそれを受け止めるが、抑えきれず壁に押し付けられる。
「なっ!?」
「嘘だろ!?」
ドラゴンが押し負けるクイーン・タランチュラのパワーに驚くラウルとビリー、しかし、ヘリオスは腕力でクイーン・タランチュラをひっくり返し、前足を片方もぎ取る。
「おお!」
「いいぞ!」
「流石!」
ブランドン、バロン、カティがヘリオスを応援する、しかし、もぎ取られたクイーン・タランチュラの前足は数秒で再生した。
「再生した!?」
「進化した事で再生能力を得たんだわ!」
エラが驚愕の声を上げ、シェリーが説明する、クイーン・タランチュラはヘリオスに向かって毒液を吹き出した、ヘリオスは翼でガードするが、翼の表面が少し爛れてしまい、痛みに表情を歪める。
「ヘリオス!!」
ラウルが傷を負った事に叫ぶラウル。
「ヘリオスの鱗でさえ溶かすなんて……」
カティはクイーン・タランチュラの毒液の威力に戦慄している、さらに2体は激しくぶつかり合う。
「私も予想外だわ、まさか進化する事でここまで強くなるとは……」
シェリーはクイーン・タランチュラの予想外の強さに焦りを覚えている。
「けど、見たところパワーはヘリオスの方が上だぜ、このまま押し切れば……」
「いえ、恐らくそうはいかないわ。」
ビリーの予想を否定するシェリー。
「さっきの再生能力を見たでしょう、さらにあの毒液にあの動き、このままじゃいくらヘリオスでもジリ貧よ。」
シェリーの言う通り、ヘリオスはクイーン・タランチュラの巨体に似合わぬ俊敏でトリッキーな動きに翻弄されている様子だった。
「なら……」
ラウルは剣を抜き、2体のもとへ向かおうとする。
「ラウル、どうする気?」
「ヘリオスを援護するんだよ。」
「馬鹿言わないで! 無茶よ!」
シェリーはラウルの前に来て止めようとするが、ラウルはシェリーを避ける。
「このまま黙って見ているなんてできないよ、ダメージは与えられなくても、あいつの邪魔くらいはしてみせるさ。」
「それなら……大人数で闘った方がいいよな。」
ブランドン達もふらつきながら2体のもとへ向かおうとする。
「無茶ですよ、皆さんはさっきの戦闘でもうボロボロじゃないですか。」
「だからって見てられないのは俺達も同じだ。」
バロンは斧を担ぐ。
「正直、このままヘリオスに任せっきりというのも情けねえしな。」
ビリーは肩を軽く回す。
「妨害なら、私の魔法でも出来るよね……」
カティは杖を掲げる。
「私も……頑張りますわ。」
エラも手を合わせて魔法の準備を始める、しかし、最早簡単な魔法を使えるかどうかも怪しい状態だった。
「ああもう……しょうがないわね!」
シェリーは両手の指を絡めて呪文を唱える、すると全員の周りに魔法陣が現れた。
「なんだ?」
「
シェリーが両手を天に向けると、魔法陣が強い輝きを放つ。
「なんだ?」
「身体が……軽い……?」
フラフラだったブランドン達の身体が万全の状態まで回復していた。
「
「すごいねシェリー、こんな魔法使えるなんて……」
シェリーを褒めるカティ、しかしシェリーは力尽きたように地面に突っ伏していた。
「シェ……シェリー!?」
ラウルはシェリーを持ち上げる。
「……やっぱり……この人数に……完全回復かけるのは……キツいわね……」
どうやらシェリーは回復に魔力を使い果たしたらしい。
「……さっさと行きなさい……多分……内臓をを焼けば……流石に死ぬと……思うから……」
「……ありがとう、シェリー。」
シェリーからクイーン・タランチュラの弱点を聞いたラウル、ラウルはシェリーを壁に座らせる。
「行きましょう! 皆さん!」
「おう! 行くぜ! お前ら!」
「ああ!」
「おう!」
「うん!」
「はい!」
ラウルとブランドンを筆頭に戦いに挑む一同、クイーン・タランチュラはヘリオスに向かって毒液を吐き出す。
「プロテクト!!」
しかし、その毒液はヘリオスの前に展開されたエラの魔法によって防がれた。
「毒液くらいなら防いで見せますわ!」
毒液を防がれたクイーン・タランチュラは素早く動いてヘリオスから距離を取る。
「サンダースピア!」
カティはクイーン・タランチュラの頭部に向かって雷の槍を放つ。
「ダメージは与えられなくても、目眩ましくらいなら!」
狙い通り、クイーン・タランチュラはカティの攻撃に一瞬怯んだ様子だった、その隙にヘリオスはクイーン・タランチュラに掴みかかり、クイーン・タランチュラは8本の触手で対抗する。
「ヘリオス! ひっくり返すんだ!」
ラウルの言葉に従い、クイーン・タランチュラを持ち上げて背中から叩きつけるヘリオス。
「エラさん! 俺達を出来る限り強化してください!」
「!? はい!
ラウルの言葉どおり、ラウル・ブランドン・バロン・ビリーにありったけの魔力を使って強化の魔法をかけるエラ、魔力を使い果たしてへたり込んだ。
「皆さん! 奴のお腹に集中攻撃を!」
「!……成程な!」
ラウルの言葉に納得した様子のブランドン達。
「そういう事なら……」
カティもありったけの魔力を込めて詠唱を行う。
「ジャッジメントフレイム!!」
カティの魔法が上空からクイーン・タランチュラに火柱を落とす。
「いいぞカティ、まずは俺からだ!!」
火柱が収まると、ビリーは小刀を構え、さらに自身の魔法で身体に強化を重ねると、仰向けのクイーン・タランチュラの腹部に飛び乗る。
「オラオラオラオラオラァァァ!!」
ビリーはカティの火柱の熱で少々弱まったクイーン・タランチュラの腹部を連続で切りつける、連続で切りつけられた事でクイーン・タランチュラの腹部に少々の亀裂が入る。
「うぉ!!」
しかし、クイーン・タランチュラが起き上がり、ビリーは振り落とされた。
「ウオォォォ!!」
そして、バロンが自身の魔法で身体に強化を重ね、斧を下から振り上げてビリーが作った腹部の亀裂に叩き込む。それにより、亀裂が少し大きくなった、そしてブランドンも剣に魔力を収束し突っ込む。
「ライジング……カリバー!!」
ブランドンの剣に巨大な光の刃が形成された、ブランドンはその刃を同じ亀裂に叩き込む、それによってさらに亀裂が大きくなり、バロンとブランドンの連続攻撃によって再びクイーン・タランチュラはひっくり返った。
「ハアア!!」
さらにラウルが大きくなった亀裂に剣を突き刺す。
「サンダー……フォール!!」
ラウルはさらにその剣にありったけの魔力を込めて雷を落とす、剣を通してクイーン・タランチュラの内部に雷が走り、クイーン・タランチュラは悲鳴を上げる、亀裂がより大きくなり、ラウルは腹部から飛び退く。
「ヘリオス!!」
ヘリオスはラウルの声に応えるように亀裂の入った腹部に拳を叩き込む。すると、クイーン・タランチュラの腹部の甲殻に穴が空いた、ヘリオスは深く息を吸い込み、その穴に炎のブレスを吐く。
「ギシャアアアアアアアアア!!!」
そして、内側から内臓を焼き尽くされたクイーン・タランチュラは断末魔の叫びを上げ、やがて沈黙した。
「……勝った……?」
「やったのか……?」
カティとブランドンは安堵した様子で座り込む。
「はー……まったくしつこい虫だったぜ。」
ビリーは大の字に寝転がった。
「まったくだ……正直死ぬかと思ったぞ。」
バロンも座り込んだ。
「生きている心地がしませんでしたわ。」
エラは座り込んだまま安堵の表情を浮かべる。
「……どうやら終わったようね。」
「シェリー。」
シェリーは飛んで近づいてくる、しかし、まだ回復していないのかふらついていた。
「……さてと、いつまでもへたり込んでるわけにもいかねえし、出口を探そうぜ。」
ブランドンは起き上がる。
「……そうだな……」
バロンを始め、他のメンバーも起き上がる。
「……待って下さい、皆さん。」
歩き出した銀の流星の面々を制止するラウル。
「……どうした?」
「出口ってあんたたち……月光花は?」
「「「「「…………あ」」」」」
シェリーの言葉により洞窟に入った本来の目的を思い出し、揃えて素っ頓狂な声を上げる銀の流星、この後洞窟内を探し回り、無事に回収したのであった。
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