13・母蜘蛛の猛攻
マザー・タランチュラと対峙する一同、マザー・タランチュラはその巨大な前足を振り上げ襲い掛かって来た、 一同は散会してその足を避ける。
「野郎……!」
ブランドンは剣を振り、その足を切り裂こうとするが……
ギンッ!!
「何!?」
ブランドンの剣は弾かれてしまった、まるで岩を切ろうとしたかのように、さらにマザー・タランチュラは背中から百足のような6本の触手を伸ばして攻撃する。
「グァ!!」
バロンは触手を斧で防ごうとするが、吹き飛ばされる。
「バロン! ガッ!!」
ビリーはバロンに気を取られている内に触手に吹き飛ばされた。
「大丈夫!? しっかりしなさい!」
「イテテテ……」
「クソッ、なんてパワーだ。」
二人の元に飛ぶシェリー、なんとか立ち上がるビリーとバロン、さらにマザー・タランチュラは前足をエラに向かって振り下ろす。
「フォースシールド!!」
エラは光の盾を展開し、その盾を防ごうとする、しかし……
パキィン
「!?」
その盾は容易く破られてしまった、前足がエラに迫る。
「エラさん、危ない!」
「キャッ!!」
ラウルがエラを突き飛ばし、エラは前足から逃れた。
「大丈夫ですか。」
「はい……ありがとうございます。」
エラの無事に安堵するラウル、一方カティは上級魔法の詠唱を始めていた。
「サンダー……スピア!!」
カティは魔法で巨大な雷の槍を作り、マザー・タランチュラに向かって放つ、その雷は確実にマザー・タランチュラを捕らえた。
「よし!」
「やったか!」
ビリーとバロンは仕留めた事を確信する、しかし……
「!?」
驚愕するカティ、マザー・タランチュラは無傷だった、マザー・タランチュラはカティに向かって口から毒液を吐く。
「カティ!!」
ブランドンがカティを抱えて毒液を避ける。
「カティ、無事か。」
「……うん、ありがとう。」
「だがどうする……とても歯が立たないぞ。」
苦渋の表情でマザー・タランチュラを睨むバロン。
「当然よ、マザー・タランチュラは並大抵のモンスターとは違う、生半可な武器や魔法じゃ傷一つ付けられないわ。」
「くっそ……こんな時、ヘリオスがいればなぁ……」
シェリーの言葉に対し、ヘリオスがいない事を悔やむビリー。
「仕方無い……逃げるぞ!!」
真正面からでは勝ち目がないと判断したブランドンの言葉に従い、再び洞窟内を走り出す一同、当然マザー・タランチュラも追ってくる。さらに触手で攻撃してくるマザー・タランチュラ、一同はその触手を必死で避けながら逃げ続ける。
「クソ、しつこい奴だな!」
触手を避けながら悪態をつくバロン。
「このままじゃ捕まっちゃう!!」
カティも逃げながら魔法で防ぐ。
(……そうだ!)
何かを思いついたラウル、走りながら魔法の詠唱を始める。
「ラウル、何する気?」
シェリーがラウルの詠唱に気付いた、そしてラウルはマザー・タランチュラの頭上を見つめて魔法を放つ。
「イグニッション!!」
ラウルはマザー・タランチュラの頭上で爆破魔法を炸裂させた。頭上の岩が崩れ落ち、マザー・タランチュラは生き埋めになる。
「ナイスだぜ、ラウル!」
ビリーがラウルを褒める。マザー・タランチュラは瓦礫から出ようと悪戦苦闘していた。
「今の内に逃げましょう!」
「そうだな。」
シェリーに賛同するブランドン、一同は再び走り出す、そして一同は洞窟を出たが、そこは外ではなく、広大な地下空洞だった。
「地下空洞か……?」
息を切らしながら辺りを見回すブランドン。
「!? みんな! あれ!」
元来た洞窟を指さすカティ、瓦礫から抜け出したらしく、マザー・タランチュラが迫って来ていた。
「本当にしつこいデカブツだぜ……」
同じように息を切らしているビリー。
(待てよ、これだけ広ければ……)
辺りを見回し、何かを思いついたラウル。
「クッ……こっちへ逃げるぞ!」
再び逃げ出そうとするブランドン。
「待って下さい!」
一同を止めるラウル。
「皆さん、3分ほど時間を稼いでくれませんか?」
「ラウルさん、何か作戦があるんですか?」
エラはラウルに問いかける。
「はい、これだけの広さがあれば……呼べます!」
そう言うラウルの表情には確かな自信があった。
「……成程な。」
ブランドンはその表情を見てラウルの考えに気付いたらしく、表情に笑みを浮かべた。
「そういう事か……」
バロンを始めとした他のメンバーも気付いたようだ。
「3分か……正直ヘロヘロだが……ま、なんとかして見せるさ。」
ビリーは顔を叩いて気合を入れる。
「いえ、1分で良いわ。」
「シェリー?」
「私なら魔法陣を簡略化できるわ、そうすれば1分で済む。」
シェリーは得意気な笑みを浮かべて言った。
「そうか、お願いするよ。」
「まかせなさい。」
そう言ってる内に、洞窟を抜けたマザー・タランチュラ、一同はマザー・タランチュラに向き直る。
「頼んだぜ、二人共。」
「はい。」
「ええ。」
ラウルとシェリーはブランドンに応えると、離れた場所に移動する。
「行くぜお前ら!」
「おう!」
「おう!」
「うん!」
「はい!」
銀の流星は散開してマザー・タランチュラを囲い込む。
「おっらぁあ!!」
先陣を切ったブランドンはマザー・タランチュラの足に切りかかる……が、当然歯が立たない。
「クッ……やっぱかてえ……」
マザー・タランチュラは前足でビリーとブランドンを襲う、ブランドンは後ろに跳んで避けた。
「俺の素早さを舐めんな!!」
ビリーは俊敏な動きでマザー・タランチュラの足を躱す。
「フレイムスコール!!」
カティは魔法で複数の火球を作り出し、マザー・タランチュラにぶつける、しかし、マザー・タランチュラは無傷であった、さらにマザー・タランチュラは触手でカティに反撃する。
「!?」
「おおおお!!」
しかし、その触手はカティに届く前にバロンの斧で地面に叩きつけられた。
「クッ……」
苦い顔をするバロン、全力で斧を叩きつけたにもかかわらず、その触手は傷一つ付いてなかったのだ。
「リストリクション!!」
マザー・タランチュラが光のオーラに包まれ動けなくなる、エラの魔法による拘束だ、しかし、数秒動けなくなったがすぐに拘束は破られた。
「クッ……」
「キシャアアアア!!」
マザー・タランチュラは甲高い鳴き声を上げると、6本の触手で更に熾烈に攻撃を加える、銀の流星一同は必死にその攻撃を避ける。
「おい、まだなのか!!」
必死に攻撃を防ぎながらバロンが叫ぶ。
「これ以上は……持たねえぞ!」
ビリーも必死に避ける。
「……キャッ!!」
ついにカティが触手に捕まってしまった。
「カティ!! うぉっ!!」
そして、それに気を取られたブランドンも捕まってしまった。
「クッ……」
「放せこら!! 」
「うぅ……」
さらに、バロンとビリー、エラも触手に捕まってしまう、そして、マザー・タランチュラは捕まえた面々を口元へと運ぼうとする、銀の流星が覚悟に目を瞑ったその時、眩い光が放たれた。
「!?」
一同はその光に目を向ける、突然の出来事にマザー・タランチュラも目を向けた。
「待たせたわね……」
そこには、その光を背に腕を組んで得意気な笑みを浮かべるシェリーと魔法陣を前に呪文を詠唱しているラウルがいた。
「来たか……」
ブランドン達は顔に笑みを浮かべる。
「……盟約に従い……来たれ! 我が同胞よ!」
ラウルが詠唱を終えると、魔法陣がより一層強い光とスパークを放ち、辺りが光に包まれる。
「……頼んだよ……ヘリオス!!」
「グオォォォオオ!!」
やがて光が収まった、魔法陣の中央に現れたヘリオスは、ラウルに応えるようにマザー・タランチュラに対して咆哮を浴びせるた、そして、マザー・タランチュラが怯んでいる間に距離を詰め、エラとカティを捕まえていた片方の触手2本を両手で纏めて掴む、そして、ブランドン達の攻撃では傷一つつかなかったその触手をいとも簡単に引きちぎった。
「わわっ」
「キャッ!」
引きちぎられた触手が二人を掴んだまま暴れだし、女性陣二人が驚く。
「シャアアアア!!」
触手を引きちぎられたマザー・タランチュラが悲鳴を上げると、その拍子にもう片方の三本の触手に捕まってた男性陣が解放された。
「ガッ!!」
「ギャッ!!」
「グッ!!」
しかし、高い位置で解放されたため、男性陣は真っ逆さまに墜落した、全員が解放された事を確認したヘリオスはマザー・タランチュラに右手の平を叩きつけ、そのままマザー・タランチュラを掴んで投げ飛ばす。
「皆さん、こっちへ!!」
ラウルは解放された三人をヘリオスの後ろに連れて来る。
「お……おう……」
「イテテテ……」
「クッ……」
男性陣三人は、落下した際に打った体の箇所を押さえながらヘリオスの後ろへ来る。マザー・タランチュラは起き上がるが、先程のヘリオスの1撃で既にボロボロになっていた。
「はっはー! ざまーみやがれ、虫けらが!!」
ビリーはヘリオスの後ろに隠れながら中指を立ててマザー・タランチュラを罵倒する。
「お前今すげー情けないことやってんぞ。」
ブランドンはそんなビリーを冷ややかな目で見ている。
「キシャアアーーーーーーーー!!!」
突然マザー・タランチュラが一際大きな鳴き声を上げた、その声の大きさにその場の全員が思わず耳を塞ぐ。
(……何だ……何をする気だ?)
ラウルも耳に響く鳴き声に耳を塞いでいる、その時、その声に応えるように大量のスカル・タランチュラがマザー・タランチュラの周囲に現れた。
「何だあの数は!?」
明らかに洞窟にいた時を上回る数に驚くバロン。
「まさか、数で押しつぶす気か!?」
ブランドンはマザー・タランチュラが人海戦術に出たと見て警戒する……が、マザー・タランチュラは予想外の行動に出た。
「……!?」
「た……食べている!?」
その凄惨な光景に驚くエラとカティ、マザー・タランチュラは周囲に現れたスカル・タランチュラを片っ端から食い漁り始めたのだ。
「何だ、ショックでおかしくなったのか?」
予想外過ぎるマザー・タランチュラの行動に訝しげな顔のビリー。
「……!? ラウル、あれ!」
「……!?」
その時、マザー・タランチュラの異変に気付いたシェリー、ボロボロだったマザー・タランチュラの背中に大きな罅が入り始めたのだ、そして、その罅から背中が開き中から一際巨大な何かが現れる。
「わかったわ……あれは……進化よ。」
「進化!?」
「ええ、周囲のスカル・タランチュラの魔力を片っ端から取り込んで、自ら進化したんだわ……目の前の強敵に対抗する為に。」
そして、マザー・タランチュラの身体を破って現れたその身体はヘリオスよりも一回りも大きく、6本だった背中の触手も8本に増えていた。
「マザー・タランチュラよりも更に巨大で、さらに強い……クイーン・タランチュラにね。」
「ギシャアアアアアアア!!」
「グオオオオオォォーー!!」
クイーン・タランチュラは甲高い鳴き声でヘリオスを威嚇する、ヘリオスも負けじと咆哮を返した。
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