10・冒険者達と
ラウルが冒険者パーティー『銀の
「あー良く寝た。」
ブランドンは教会の扉を開けて外に出る。
「あ、ブランドン……お……おはよう。」
そこではカティが薬を調合していた。
「お……おう、カティ……」
昨日のヘリオスと出会った時の告白の事を思い出し、気まずそうに顔を赤らめる二人。
「え……えーと、ラウル君が道具を貸してくれたよ、おかげで薬はどうにかなりそう!」
因みにこの調合道具はもちろんセバスチャンのマジックバッグに入っていた物である。
「そ……そうか! いやー、ラウルは本当すげえ奴だな! ……で、そのラウルはどこだ? 朝起きたら姿が見えなくてよ……」
「え……えっと……ヘリオスと一緒に湖に釣りに行ったよ。」
「そ……そうか……湖!?」
「どうかしたの?」
「忘れたか? あの湖には……」
その時、二人の足元に巨大な影が現れた。
「!?」
二人が驚いて空に目を向けると、ヘリオスが空から降りてきた。
「ブランドンさん、おはようございます。」
ラウルがヘリオスの背中から降りて来た、肩に下げた籠には湖で釣った大量の魚が入っている。
「ラウル、湖に行ったって本当か?」
「え? はい、そうですが……」
「あの湖、サーペントフィッシュがいなかったか?」
「え? ああ……はい。」
ブランドンが言うには、以前あの湖で水分を確保しようとしたが、そこでブラッキーボアがサーペントフィッシュに捕食されるのを見たらしい、サーペントフィッシュはAランク、とても自分たちでは太刀打ちできないと判断して逃げたらしい。
「情けねえが、俺らの手に負える奴じゃねえからな、お前は大丈夫だったのか?」
「はい……まぁ……」
そう言うとラウルはヘリオスに目をやった、目を向けられたヘリオスはキョトンとしている。
「あ……あぁ……」
ブランドンは何かを察した様子だった。
「けど、相手はサーペントフィッシュだろ、いくらヘリオスといえど、多少苦戦したんじゃないのか?」
「いえ、一撃で終わりました。」
それを聞いたブランドンとカティは驚いた顔でヘリオスに目を向けた。
「サーペントフィッシュを一撃で……」
「やっぱドラゴンって……とんでもねえんだなぁ……」
自分達が尻尾を巻いて逃げ出した魔物をいとも容易く仕留めたというヘリオスの強さに冷や汗をかいている二人。
「ふぁー…」
「おはようさん。」
「おはようございます。」
起床したバロン・ビリー・エラが教会から出て来た。
「お、ラウル、釣りに行ってきたのか?」
「はい、結構大漁でしたよ。」
ビリーが釣果を見ようと近寄ってきたのでラウルは魚が大量に入った籠を降ろす。
「こりゃすげーな! どこで釣ってきたんだ?」
「この先にある湖です。」
「へ? あの湖って確かサーペント……ああ。」
ラウルの後ろからヘリオスを親指で指すブランドンに察した様子のビリー。
「では、皆さん起きた事ですし、朝ごはんにしましょうか。」
「そうだな。」
エラに賛同するブランドン、その後、釣ってきた魚を焚火で焼いて朝食を取る一同。
「それで、これからどうするよ?」
「これからって?」
ビリーの問いにカティが返す。
「月光花もまだ見つかってねえし、いつまでもここにいるわけにもいかねえだろ?」
「確かになぁ……とはいえ、地図がねえ以上、下手に動くわけにもいかねえからなぁ……」
ブランドンが腕を組んで唸っていると、ラウルが手を挙げた。
「俺に一つ提案があるんですが……」
そして、大空へと飛び立つヘリオス、その背中にはラウルとカティが乗っていた。カティの手には羊皮紙と筆が握られている。
「まさか、ドラゴンの背中に乗る日が来るなんて……」
そう、ラウルの提案というのはヘリオスの背中に乗り、空から周囲を見てそれをもとに新しい地図を描くという事である、ブランドンが言うにはそういう事はカティが一番得意だというので一緒に乗っている。
「あんな高さまで飛べんのか……」
地上からヘリオスを眺めているブランドン。
「すげえな、俺も後で乗せてもらおうかな。」
同じくヘリオスを眺めているビリー。
「俺はあまり乗りたくないな……」
苦い顔で眺めているバロン。
「フフッ、そういえばバロンさん、高い所は苦手でしたね。」
柔らかい笑みを浮かべるエラ。
「えーと……海は向こうで……あそこが湖で……」
カティは周りを見回しながら羊皮紙に地図を描く。
「そう言えば、月光花ってどんな花なんですか?」
「うーん、月の光に反応して花が開く……という事しかわかってないんだ、そもそも発見されたのが割と最近だから、色々と解らない事が多いの。」
「じゃあ、どのみち探すのは夜ですね。」
その時、ヘリオスが何かに気付いたように遠くに目を向けた、その方向はラウルの故郷である王国の方角である、しかし、二人はそれに気付かない。
「地図が出来たよ。」
地上に降りたヘリオス、作成した地図を囲んで座り込む一同。
「ここが今私たちがいる教会だよ。」
カティは地図に付けた×印を指さす。
「成程、となると俺たちが越えて来た海は向こうか。」
バロンが後ろの方を指さす。
「そうだね、サーペントフィッシュがいた湖がここだから……」
その後、出来上がった地図を元に話し合いを続ける一同。
「月光花は月の光が無ければ現れないって言うしな、とりあえず夜になったら探しに行くぞ。」
「そうですね。」
「了解だ。」
ブランドンが今後の方針を決め、エラとバロンが賛同する。
「じゃあそれまでは準備を整えないとね。」
そう言うとカティは製薬の続きに取り掛かる。
「じゃあ山菜とか薬草を集めて来ますね。」
ラウルはバッグを肩に下げ、森へ向かう。
「私も手伝います。」
「俺も行くぜ。」
エラとビリーもラウルに着いて行く。
「……」
バロンはその三人を見つめていた。
「どうした、バロン。」
三人を見つめるバロンに対してブランドンが問いかける。
「いや……ラウルのバッグに付いてるエンブレムなんだが……どっかで見た事あるような気がしてなぁ……」
顎に手を添えて考えるバロン、しかし、結局その日の内にそれを思い出す事は無かった。
――――――――――
「こんなものでしょうかね。」
その後、しばらく森を歩き回って籠いっぱいに山菜や薬草が集まった。
「そうですね、では戻りましょうか。」
教会に向かって歩き出す三人。
「それにしてもそのバッグすげーな、山菜やキノコの図鑑まで入ってるなんて」
「はい、セバスチャンが色々入れてくれてましたから」
「マジックバッグなんて貴重な物を残すなんて、余程あなたの事が大事だったんですね。」
「はい、子供の頃から本当に……」
「お?」
教会に近付いたその時、ビリーが何かに気付いた。
「どうかしました? ビリーさん。」
ラウルの問いに対し、ビリーが教会の方を指さしながら答える。
「協会の方、何か騒がしくねえか?」
ラウルとエラが目を向けると、確かに教会で何かが騒いでいるような声が聞こえた。
「何かあったのでしょうか……」
心配そうな様子のエラ、三人は教会に向かって走り出す、そして、三人が到着すると、そこには……
「覚悟しなさい! この泥棒猫!!」
ヘリオスに向かって叫んでいる、銀髪緑眼の小さな妖精がいた。
(泥棒猫って……竜なんだけど……)
妖精の言葉を聞いて、ラウルはこう思った。
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