8・パートナーの為に
廃墟の教会に住み始めて少し経った頃、ラウルは山菜や木の実、キノコを集めていた。片手にはマジックバッグに入っていた山菜やキノコの図鑑を持っている。
「えーとこれは……」
ラウルは手に取った笠の黒いキノコを図鑑で調べる。
「クロカサタケ……食用になる……大丈夫だな。」
ラウルはクロカサタケをバッグに入れる。
「こんなもんかな。」
ある程度集まったので教会へ戻るラウル。
「……?」
教会へ戻ると、足元に巨大な影が現れる。
「ヘリオス、戻って……」
大きな音を立てて降り立つヘリオス、その口には巨大な鳥が加えられていた。
(ロック
ラウルは顔を引きつらせながらロック鳥を見つめる、因みに以前ヘリオスが一撃で仕留めたサーペントフィッシュもA級の魔物である、本来A級の魔物の討伐には最低でも熟練の冒険者パーティー3組は必要、それを無傷で容易くねじ伏せるヘリオス、というよりドラゴンの強さを再認識したのだ。ラウルはロック鳥の肉と採集したハーブでスープを作る。
「うん、美味い……」
ラウルはスープを食べながらロックバードを貪るヘリオスに目を向ける。
(よくよく考えれば、ヘリオスは俺を助けてくれて、今も獲物を取ってくれたりしているんだよな……)
ラウルは自分がヘリオスの世話になりっぱなしだと思っているようである。
(何か俺がヘリオスに出来る事は……)
ラウルはしばらくヘリオスを見つめていると、何かを思いついたようだ。
――――――――――
ラウルはヘリオスと共に湖に移動すると、まずは大量の水をヘリオスにぶっかける。
「えーと……」
バッグから長い柄の付いたブラシを取り出し、ヘリオスの身体をこすり始める、ヘリオスは気持ち良さそうに寝そべっている。
(力加減はこのくらいか……)
その後はヘリオスを仰向けにして手足やお腹の辺りもこすり続ける、さらに角や爪も手入れする。
(正直これで釣り合いが取れるとは思えないけど……やれることは少しでもやらなきゃな。)
手入れを終えたヘリオス、鱗の艶が増しており、どこかスッキリした様子だ。
――――――――――
一方その頃、王国ではラウルとヘリオスの行方に関する会議が行われていた
「国内から国境付近の森に至るまで虱潰しに探しましたが、ラウル・ロックヴェルトの姿は何処にもありませんでした。」
大臣の一人が国王に報告する。
「そうか……もしや既に帝国へ……」
「いえ、帝国側を調べましたが、帝国へ渡った様子は無いと思われます。」
「ならとりあえず最悪の事態は免れたか……」
ホッと胸をなでおろした様子の国王。
「安心はまだできませんぞ国王、一先ずラウル・ロックヴェルトの行方を掴まない事には。」
「そうか……」
「帝国へ渡っていないとなれば、可能性があるのは……グランディック大森林。」
大臣が魔法で空中に地図を展開し、王国の西に広がる森林を指す、実はまさにその通り、今ラウルとヘリオスがいるのはその大森林なのだ。
「確かに……その可能性は高いですな。」
「だとすれば、どのみち厄介な事には変わりありませんな、あの森林はB級からA級の魔物がゴロゴロひしめく場所……ラウル・ロックヴェルトにはドラゴンがついてる故問題は無いかと思われますが……」
「最近帝国が軍備を増強しているとの噂があります、今捜索の為に兵士を向かわせるのは得策ではありません。」
「冒険者ギルドに依頼してはどうでしょうか?」
「それも難しいかと思われます、我が国の冒険者は最高でもBランク前後、大森林に向かえる程の人材となると……」
「むう……」
ラウルとヘリオスの捜索に頭を悩ませる国王と大臣たち。
――――――――――
その日の深夜、ラウルが毛布に包まって寝息を立てていた時の事だった。
『―――』
「ん?」
外で複数人の話し声が聞こえたので目が覚めたラウル、教会の扉をそっと開けると……
「ついてないぜ、まったく……」
リーダーと思わしき金髪の男性剣士。
「アイテムどころか食料も尽きてるってのに……」
斥候と思わしき身軽な装備の男性。
「……クッ」
斧を持ったガタイの良い男性。
「もう魔力も残ってませんわ……」
修道服のような服を着た金髪ロングの女性。
「……しかも、ドラゴンなんて……」
三角帽を被った赤いセミロングの女性、そのグループがヘリオスと対峙していた、装備から見るに冒険者パーティーだろう、しかし、そのパーティーはかなり疲弊している様子だった。一方のヘリオスはキョトンとしている様子だった。
(……え? ひょっとして……敵だと思われてる……?)
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