5・決闘と真実
突然アラスターから決闘を申し込まれたラウル。
「ちょ、ちょっと待ってください兄上、何故いきなり……」
「来い!!」
アラスターはラウルの腕を掴み、連れて行く。
「俺は聞いたんだ……父上の話を……お前の秘密を……」
「え?」
中庭に向かいながらアラスターは話す、偶然聞いたアーノルドと執事の会話を
『ラウルの封印が解けただと……?』
『はい、そのようです。』
(封印……何のことだ……?)
『それが本当なら……マズいぞ、このままでは……』
二人の話を要約すればこうである、ラウルは生まれた時に強大な魔力を持って生まれていたが、家は長男が継ぐのが古くからの国の伝統である、そこで跡継ぎである長男の面子を守るためにラウルが魔法を使えないよう封印を施したのだという。
(……じゃあ……まさか……)
アラスターの顔に焦りが見えた、二人の話が本当なら、今まで自分こそが一番優秀だと思っていたのが、本当はラウルの方が優秀だったという事になるからだ。
(俺は……生まれた順と……国の伝統に守られてただけだったのか……?)
アラスターの顔が屈辱感で歪む。
(…そんな筈はねえ……そんな筈はねえ……)
話を終えると、中庭に到着した、話を聞いたラウルは唖然としていた。
(そんな……なら全て……父上が……)
そう、今まで魔法が使えず、友人からも裏切られ学校で虐められていた、それらの元凶は全て父親だったのだ。
「証明してやるんだ……俺がこの家で1番だってな、さあ、剣を取れ!!」
「……」
アラスターは剣を投げ、ラウルは黙ってその剣を取る。そして、その二人を眼鏡をかけた金髪の男性が物陰から見つめていた。ロックヴェルト家の次男、アウスト・ロックヴェルトだ。アウストはメイド服を着た黒いロングヘアの女性を連れている。
「思い知らせてやる……お前にも、父上にもなあ!!」
アラスターはラウルに切りかかる。
――――――――――
「ハァ……ハァ……クッ……」
「……」
十数分後、そこにはボロボロで片膝を付くアラスターと平然と立っているラウルがいた。跡取りという立場に甘えて魔法の勉強や剣の修行も適当だったアラスターと、落ちこぼれと呼ばれていた故に必死に努力してきたラウルの間には、魔法でも剣でも大きな差がついていた、封印による枷が外れた今、ラウルの実力は相当なレベルになっていたのだ。
「何の騒ぎだ……なっ!?」
父、アーノルドが庭に駆け込み、その光景に驚愕した。
「ラウル、これはどういう事……」
「父上!」
ラウルは詰め寄って来た父に対し、声を張り上げた。
「な……何だ。」
「俺が生まれた時、魔法が使えないように封印を施したというのは本当ですか?」
「な……誰がそんな事を」
「兄上から聞きました!」
「……!」
返答できずに言葉を詰まらせるアーノルド。
「ふざけんなぁ!!」
突然アラスターが怒りの声を上げ、巨大な魔法陣を形成した、ラウルとアーノルドも振り向く。
「納得できるかよ……跡継ぎは俺だ……一番は俺だぁ!!」
魔法陣から巨大なゴーレムが現れた。
「なっ……!?」
「ヒ……ヒィ……!!」
ラウルは驚き、アーノルドは腰を抜かして逃げ出した。
「死ねえクソがぁーーーー!!!」
ゴーレムは巨大な拳をラウルに向かって振り上げる。
「……!?」
ラウルはゴーレムの拳を避ける、そこには巨大なクレーターが出来た。
「避けんじゃねえ、潰れろぉーー!!」
アラスターはゴーレムを操作しながら怒鳴る。
(クッ……兄上、本気で……!?)
明らかに殺す気なゴーレムの攻撃に戸惑うラウルだが、なんとかその攻撃を避けていく。
「あっ……!!」
しかし、ゴーレムの攻撃で崩れた地面に足場を取られ、転倒してしまった。
「終わりだぁー!!」
「くっ……プロテクト!!」
ゴーレムは拳を振り上げる、ラウルは一か八か防御魔法を展開し、目を瞑る、その時、空の彼方から巨大な影が迫って来た。
「……?」
ラウルが目を開けると、いつの間にか飛んできたラウルのドラゴンがゴーレムの拳を片手で受け止めていた。
「お前……」
「ド……ドラゴン!?」
「ま……まさか……」
使用人やアーノルドが驚いていると、ドラゴンは片手をゴーレムに叩き込む、ゴーレムは轟音を立てて粉々に砕け散った。
「……グッ……ガッ……」
唖然としていたアラスターは突然胸を押さえて倒れた。
「アラスター!」
アーノルドと使用人はアラスターに駆け寄る。
「無理に魔力を使った影響で負荷がかかったようですな。」
使用人の男性はアラスターに肩を貸す。
「父上!」
立ち上がったラウルはアーノルドを呼ぶ。
「……う……うるさい!! そんな事より、跡継ぎであるアラスターにあんな仕打ちをするとは何事だ!」
「な……! あれは兄上の方から」
「言い訳をするな!! お前には厳罰を言い渡す、覚悟しておけ!!」
アーノルドは去っていった。
「……あっ」
ラウルが怒りに顔を歪めていると、ドラゴンが心配そうな様子ですり寄って来た。
「慰めてくれるのか……」
ラウルはドラゴンの顎を撫でる。
「……」
そして、物陰からその光景を見ていたアウストは口角を軽く吊り上げると、メイドの女性と共にその場を歩き去った。
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