第12話

 チロシです。


 野生のハーブを探しに出かけたとです。


 その序についでに、二人には車の運転を教えたとです。


 教えるのに夢中で、二人にセクハラが出来なかったとです。


 悲しかとです。


 悔しかとです。


 それでも僕は泣かんとですよ。




~*~*~*~




 おい、エヴァ、どうしたんだ大声を上げて、その子がどうかしたのか?


 俺は、うつ伏せで倒れている女性と思しきおぼしき人物の横まで行くと、エヴァを見やるが、顔を怒りを露わにしており、今にも手に持っている斧を振り下ろすのではないかと、冷や冷やさせられている。


 落ち着け!エヴァ、斧を降ろすんだ。


「エヴァ、止めなさい。リアが何をしたって言うの?」


「こいつは、私達を囮にして逃げたんだよヴィヴィ」


「えっ……嘘よ。リアは逸れただけなのよ」


 どうやら、名前を呼んでいると言う事は、知り合いなのだろうな。ヴィヴィやエヴァを助けた時には居なかったから、俺がヴィヴィとエヴァを助ける前に逸れたと言う仲間なのだろう。


「ボクは見たんだよヴィヴィ。こいつが、私達から離れて森に消えて行くのをね」


「えっ……それは本当なのね……クッ……信じていたのに」


「エルフは、今回の援軍に懲罰部隊を送ったって噂になってたんだよ。そんな奴がヴィヴィに近寄ってきたから、ボクは警戒していたんだ。そうしたら、これだよね。仲間の危機も助けないで逃亡したよ」


 なるほど、事情は分かった。だが、見捨てて逃げただけで殺すのは可愛そうだと、俺は思うのだが……殺す以外で何とかならないか?


「殺す以外で……こいつは、このまま奴隷にしとく、それならばボクの怒りも納めるよ。でも、次に裏切れば殺すからね」


 このまま奴隷にするのは良いんだが、所有者は誰になるんだ?


「それは勿論チロシですわよ」


 奴隷って所有した事がないんだが、どうすれば良いんだ?


「奴隷はね、ボクの知っている限りでは、殺害や虐待は禁じられているんだけど、例外もあるんだよね。その例外ってのは所有者に害になった場合にのみ、殺傷処分か国に委譲が認められるんだ。一般人が所有出来る奴隷には、借金奴隷・犯罪奴隷(軽犯罪)までしか認められてないの。重犯罪者は国や領主が管理する決まりが連合王国で決められてるんだよ」


 因みに、リズだったか、この子は犯罪奴隷なのか?


「リアね、リア、こいつは、多分だけど犯罪奴隷だと思う、重犯罪者なら、戦場に連れて来るはずないもの、だから軽犯罪を犯したんだろうね」


「でも、リアは、私達と一緒に敵中に突撃して、武勇を示した勇敢な子よ」


 そうなのか?


「あれは、隣の戦域のエルフがヴィヴィの方に、逃げて来ただけと思うんだけどね」


「うっぅぅぅ……」


 どうやら気が付いた様だぞ。


「やぁーおはようリア。元気にしてた?」


「うっうぅぅぅ……何で私の名前を……んっ」


 おい、斧を降ろせって言っただろう。


「エヴァ、乱暴はダメよ」


 リアは目を覚ますと、辺りを見渡してから近くに居ると思しき人影を探すと、背中に重たい負荷が掛かり、うつ伏せで顔を横に向けて倒れている状況だった。そして、顔の横の地面には斧の刃が突き刺さり、リアの顔をエヴァが覗き込んでいる。


「お前は、死んでなかったのか?」


「お蔭様で、こんなにピンピンして生きてる♡この前の借りを返して貰おうか♡」


「お前に借りた覚えは無い、何が返せだ。図々しいにも程がある」


 エルフとドワーフって、こっちの世界でも仲が悪そうだな。二人の会話からピリピリした殺気が伝わってくる。これが一触即発って状況なのだろう。


「ボク達は、奴隷の首をしてないのが分かるか?もう奴隷ではないんだよ。お前とは違う身分なんだ。言葉には気をつけろリア」


「くっ、私も奴隷ではない。私も早く奴隷から解放しろ」


 いや、それは駄目だな。今日からキミは俺の奴隷になって貰う。


「貴様は誰だ人間」


 俺はチロシ、ヴィヴィとエヴァの夫だ。そして、キミの所有者になる。


「ふざけた事を抜かすな人間」


 キミは初めて会う人に、何時もそんな態度なのか?


「人間など、これで十分だろうが」


 あっ、もう駄目だわ。エヴァさんや。


「なに、チロシ?」


 その大型斧を貸してくれないか?


「チロシ、斧をどうするのですか?」


 こうするんだよ!


 俺は、エヴァから大型斧を奪い取ると、素早くエヴァを後ろに退かせて、リアの背中を足で押さえて動けなくしたまま、振りかぶっていた大型斧を彼女の目の前の地面に叩きつけた。


「ひぃぃぃぃ……ひっ」


 誰が御主人様か教育してやんよ。


「止めろ。止めろ人間。こんな事をして同胞が黙っては居ないぞ」


 ほう、そうか。ならば同胞に引き渡してやろうか?


「それだけは……それだけは簡便して」


 リアの脅し文句を逆手にとり俺は脅した。犯罪奴隷が国に帰ればどうなるか、分かっているのだろう、国に帰れば良い方だろう。多分だが、リアはケベス国のエルフの元に送られて死ぬまで戦わされる羽目になるだろう。エヴァに教えて貰わなくても、話の流れで分かる。


「ならば、チロシに従えよリア。もしも裏切れば、ケベス国に居る同胞様の元に連れて行ってやるからな」


「クッ……私に何をさせる気だ。もしかして、恥辱に塗れて生きろと言うのか。この人間の慰み者になれと。ふざけるな。殺せ!早く殺せ!」


 よし、そんなに死にたいなら、俺が今此処で介錯してやる。


「嘘、今のは嘘だから、本当は死にたくありません。もっと長生きしたいです」


「リアあなた……わたくしに言った事も全て嘘なの?」


 ヴィヴィとリアの間に、無言の時間が流れて行き、それを肌で感じたヴィヴィは腰に差していた剣鉈を鞘から引き抜くと、俺の倍のスピードでリアの目の前の地面に突き立てていた。俺は一瞬の事で動きを追う事が出来ず、気が付いたらヴィヴィが、そこに居たと表現するしかなかった。


「助けて下さい。助けて下さい。殿下、お願いします」


 おい、リアと言ったか、俺の癇に触ったら、どうなるか分かるよな?


 今までで一番良い笑顔をリアに見せてやったのに、リアは歯が震えだして、脅えだしていた。解せぬ。


「ボクもチロシと同じ意見だね。ボクの癇に触ったら、楽に死ねると思うなよ」


 エヴァの言葉を聞いた途端に、リアの股間から暖かい物が流れ出して、辺りをアンモニア臭で満たしてしまう。


「あっ……あっ、何でこんな事になるの……」


 失禁してしまったリアは、顔を手で覆ってからブツクサと何やら言っているが、俺はリアの扱いに付いて思案し始める。


 このままリアを奴隷として飼ってもいいが、言葉遣いが癇に触るから、何時かは俺が切れてしまう事は明白である。それよりも、手懐けてしまい俺の言いなりになってくれた方が、俺としても便利だし精神衛生的にも良いはずだ。


 よし、此処は飴と鞭作戦を発動させて、リアを手懐けてしまおう。俺はヴィヴィとエヴァに作戦を小声で話して伝えると、エヴァはノリノリで賛成してくれた。だが、ヴィヴィは少し考えてから、まだ彼女が会心するかも知れないとして、そこまでの賛同を得られなかった。だが、俺の素晴らしさを教える事には賛成の様だ。


 俺の素晴らしさってなんだ?


 独り言を言いつつも、俺はリアを助け起こすと歩かせている。ガレージに入る前に身体を森の中で綺麗にして貰いたかったからだ。汚いままでガレージに入られると掃除が大変だからね。


 折り畳み式のバケツにお湯を汲んでくると、リアの頭から掛けてやる。


「ちょっと、行き成り何する……のよ……エヴァの斧が首筋に……」


 俺はもう一回お湯を頭から掛けると、ナイロンタオル・シャンプ&リンス・ボディシャンプを持ってきて、服を脱がせてからリアの髪を洗い出した。


「目が痛い、目が痛いの……」


 目を瞑らないと泡が目に入るぞ。


 その後は髪を二回洗い、身体も二回洗い、爪の手入れもしてから本題にはいる。リアの股間の毛がモッサモッサなのが気に入らない俺は、俺が使っている髭剃り用のシェービング クリームを股間に塗りたくると、髭剃りを取り出してから、丁寧に剃り始める。俺はパイパン派なのだよ。ジャングルとか言う蛮行は俺には通じないのだよ。


「止めて、何でアソコの毛を剃るのよ。やめてよぉ~」


 森にリアのイヤイヤする声が木霊して、その声を聞いた人を興奮させてしまった。



 


 

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