第11話
チロシです。
ガレージの中がイカ臭いとです。
辛かとです。
だから、消臭するスプレーを振りかけたとです。
でも匂いが消えなかったとです。
だから、野生のハーブを探しに行く事にしたとです。
~*~*~*~
よし、準備は出来たか?
「待って、オヤツを何にするかを決めてないの」
「そうなのだ。これは大切なことなのだ」
おい……お菓子なら好きなのを現地で出してやるから、行く準備を整えろ。
「「やったぁー」」
ヴィヴィとエヴァは、喜びながら車に手荷物と武器を積み込んでいる。今回は森の中に入ると言う事で、シムニ゛ちゃんを出す事にする。大きな石を取り込んだシムニ゛ちゃんは、燃料ゲージが全然減らない子になってしまった。幾ら飛ばして走ってもゲージが減る事はないのだ。
そんなシムニ゛のエンジンを町の外で掛けると、俺達はシムニ゛を出発させる。今回の行き先は、国境の関所の付近に村があったのだが、そこを通過する時にエヴァが、自生いるハーブを見たと言ったので、そこに行く事にした。
もしかすると、自生しているハーブは既に摘み取られているかもしれないので、森の少し奥まで行く心構えはしていた。関所までは二時間の距離だが、村までなら一時間もすれば着くはずである。
俺は、今回の移動を好機と捉え、ヴィヴィとエヴァにミッション車の運転の仕方を教えようと思っている。ふっ、優しく教えますとも、優しくね。(ニチャーリ)
よし、この広い場所で、ヴィヴィとエヴァにシムニ゛の運転を教える。
「「えっ、えぇぇぇぇぇぇぇぇ」」
二人の大音量の驚いた声が、シムニ゛の車内に木霊して煩かった。
「そんな、運転って、荷馬車ならした事はあるけど……」
「軍馬なら、操る事はできますが、これをわたくしが……」
大丈夫だ。安全に配慮して教えるから心配するな。
「「……チロシの心配するなは、怖いんだけど」」
おい、俺をそんな目で見るんじゃない。
二人は、俺を半目で見ているが、俺は二人を無視して、車の運転の注意事項から説明を始める。
車とは凶器にもなる乗り物だ。だから、
「「はい」」
それでは、車の操作方法を説明に入る。コレがハンドル、コレがアクセル、コレがブレーキ、コレがクラッチと言う。覚えたか?
「「うん、多分……」」
では、ヴィヴィに質問する。アクセルはどれだ?
「えっ、あくせるって言うのは、これでいいのよね?」
それはハンドルと言ったのだがね。(イラッ)
「チロシ、怖い顔をしないでください」
「そうだよチロシ、人ならば間違える事もあるよ」
そうだな。続けて質問するぞブレーキは、どれと言ったか覚えてるか?
「これですわ」
おい、それはシフトレバーと言うものだ。まだ教えてもないぞ。
「……ごめんなさいですわ」
もう一度言うぞ。よく覚えてくれよ。
「「はい」」
~*~*~*~
ハンドルやシフトレバーなどを覚えるのに、一時間を費やして覚えて貰った。苦労の甲斐あって名称の名前は覚える事は出来ていた。次の課題は運転である。
よし、ミッション車を運転するには、エンジンを掛けてから、クラッチとブレーキを同時に踏んでから、クラッチを切り替える、そして、切り替えたら、クラッチを軽く離して行き、クンッと軽い振動を感じたら、ブレーキを離してからアクセルを徐々に踏み込んでいく。これが発進するまでの手順だ。
「一杯言われても、わからないよ」
「子作りをした方が……いいのに……」
一つ良い事を教えてやろう。カーセックスという物があってだな。走行中の車内で車の振動で腰を突き上げられたら、そりゃー天にも昇る気持ち良さだと聞くぞ。俺もヴィヴィとエヴァに、天にも昇る快楽を味わって貰いたい。
「「ふっぁぁ?」」
俺が発進の仕方を見せるから、まずは見てから覚えてくれ。
「天に昇る快楽、だって……ゴクリ♡」
「じっるるるるるるる♡」
ヴィヴィさんや、涎が垂れてますぞ。
「あら、いけませんわ。わたくしとした事が♡」
では、出発する。
~*~*~*~
(ギャャャァ、ギァァァァァ、ガクッ、プス)
俺のシムニ゛のミッションが死にそうな声をあげていた。二人のヤル気スイッチは押せたのだが、押し過ぎてしまい、変な方向に進んでいる感じである。
「チロシ、ほら、進んでる、進んでるよボク」
(ガクンッ、ギャッギャァ、ギャァァァ)
ギアチャンジする時は、もっとクラッチを踏み込んでから、そして、タコメーターで回転数を見るか、エンジン音で聞き分けてからギアチェンジをしてくれ。
「うん、任せてよ。ボクは最速で極めるから」
「チロシ、早くわたくしにも乗せるのです。わたくしは軍馬に乗せれば国一番と評された者なのですわよ」
ヴィヴィは、まだダメだぞ。代わったばかりだからな。
「そんな、私の手綱捌きをもっと、チロシに見せたかったのに♡」
よしよし、分かったから後ろから胸を出すんじゃない。狭いのが更に狭くなるだろうが。
「触ってもいいのですよ。うふふふふ♡」
「ヴィヴィ、煩いから、集中させてよね」
おい、前、前を見ろエヴァ!
「えっ?」
(ドゴッン、グシャ、バキバキ)
やってしまった。等々やってしまった。車を止めてからバックしてくれ。
「……うん」
よし、此処で止めろ。
俺は車から降りると、轢いたのは何かを確認する為に、後方を見に行く。そして、俺が目にした物はと言うと、緑色した子供?いや、これがゴブリンと言う物だろう。
「あっ、ゴブリンだね。よかった。心臓がバクバクで張り裂けてしまいそうだったよ」
今回は魔物だったから良かったが、コレが人だったら大事になっている所だからな。今後は注意してくれよエヴァ。
「うん、ごめんねチロシ。許してね」
俺は、しおらしいエヴァも可愛く見えてしまい、お尻をヴィヴィに分からない様に揉みしだいた。
「チロシ、ヴィヴィにばれるから」
大丈夫だ。
「何が大丈夫なのかしらね」
俺とエヴァの後ろには、ヴィヴィが剣鉈を鞘から出して立っていた。
「「ひぃぃぃぃ」」
「何を驚いているのですか?早く魔石を回収して、先に進みますわよ」
おっ、おうっ……
~*~*~*~
それから、二時間後にはヴィヴィもエヴァも運転技術が上がり、無事に車の運転を覚えてしまった。まだ多少は不安だが、ボチボチ運転させて行けば慣れるはずである。
先程の村の周囲には、自生したハーブは無かったな。
「そうだね。ボクが覚えていた場所も無くなってたよ」
「森の奥に行くしか、手立てはありませんわね」
そうするか、ならば運転を交代してくれるか、森の中で二人に運転を任せるには早いからな。俺はヴィヴィと運転を交代すると、森の奥に進みはじめて一時間前後、自生しているハーブを見つけて、三人で匂いの強いハーブを摘んでいく。
「この位もあれば、いいんじゃないかな」
「このハーブは匂いが良いですわね」
そうだな、良い匂いだ。
(バキッ、バキバキッ、ドッサァ)
少し離れた場所から、嫌な音が響いてきた。
「チロシ、逃げよう」
「何を言ってるのですかエヴァ、此処は向え討つのです」
いや、何が近づいてるか不明なのだ。エヴァの言う通りにする。
「そんな、わたくしなら戦えますのに」
俺は戦えないからな。
そんなやり取りをしている間にも、音はどんどん近くなり、車に乗り込んだ時には、相手の姿が見え始めていた。
なんだ、あのデカイ熊は?
「あれは、デカントベアーって言う凶暴な魔獣だよ」
「大きいですわ。槍がないと太刀打ちできませんわ」
くっ、もう相手には見付かっている。このまま逃がしてはくれないだろうな。
「「無理でしょうね」」
だよな。ちくしょうめ。天下のシムニ゛ちゃんの強さを見せ付けたるわ!
俺はシムニ゛のアクセルを全快まで踏むと、シムニ゛を急発進させて突撃を慣行する。シムニ゛のバンパーから生えている角が、熊の腹部に突き刺さると、アクセルを踏んだままの状態で、熊を押し返し始める。
「チロシ凄いよ」
「外に出たいのですが、何処からか出れますか?」
俺はドアの窓を開けてから出ろと口頭で叫ぶと、ヴィヴィはスルリと窓から屋根に上ると、直ぐにボンネットの前に移動してしまう。そして、熊の首筋に剣鉈を叩き込むと、決着が付き熊は動かなくなる。
「ヴィヴィ怪我はない?」
大丈夫かヴィヴィ、無理をしたらダメだろうが。
「わたくしならば大丈夫ですけど、向こうの方に人影があるみたいです」
「「えっ」」
ヴィヴィの指差す方角を見やると、そこには薄汚れた身なりの女性と思しき、人影が地面に突っ伏して倒れている。
「アナタ、大丈夫なの、意識はある?」
「エヴァ、慎重に仰向けにしてね」
どうだ。生きてそうか?
「こいつ、生きてたのか!」
エヴァが森の中で大声を出していた。
そのエヴァの声は森に木霊して、少しの間だけ響き渡っていた。
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