第4話

 チロシです。


 御風呂屋チロシ最大のピンチも回避できたとです。


 これにはボクもほっこりとです。


 それと、ヴィヴィがボクにデレているとです。


 言葉ではツンケンしとるとです。


 でも、お尻を叩くと嬉しがるとです。


 ボクにも春がきたとです。




~*~*~*~




 人気の無い場所で、アクセサリーのガレージの開閉スイッチを押し、買った鉄球をヴィヴィに収納して貰う。そして三人は次の目的地の木材屋に着くと、親方の娘さんに頼んで、目的の物を出してもらい買って帰る。


 また人気の無い場所に行くと、ガレージを開き買った材料をガレージにしまう。


 ヴィヴィとエヴァはガレージで製作ものをする為に、ガレージに残して俺だけ町を散策しながら町外れまで行く。


 そしてガレージに戻ると、作業をしている二人に差し入れを手渡した。


 今日のオヤツは、業務用のバニラアイス&チョコアイスだ。二人には好きな方を選ばせてあげ、ヴィヴィはチョコを選び、エヴァはバニラを選ぶ。


 二人は美味しそうにアイスを食べ始め、お互いのアイスを見ていたので、俺は食べ比べをすればと提案した。


「食べ比べって、どんな事するの」


 一口ずつ、お互いの食べ物を分け与えるんだよ。


「チロシの住んでいた国では、そんな不思議な事をするのですね」


 どうやら、こっちの世界では食べ比べの文化は無いらしい。


「ヴィヴィ、口を開けてごらんよ」

「うん、あぁーん」


 そうして、二人はファミリーサイズの業務用アイスを食べ比べし始める。


 俺にも一口貰えるかな。


「「嫌ぁぁぁぁぁ」」


 酷い、この二人酷いよ。 


「だってチロシの顔付きが、ヤラシイ過ぎなんですもの」

「うんうん、チロシの顔がヤラシイ過ぎ」


 クッ何故だ。何故ばれた。


「見たら分かるよねヴィヴィ」

「そうですわ」


 俺はマイスプーンを取り出すと、強行手段に訴えたが、二人の怪力女に返り討ちにされてしまう。


  


~*~*~*~




「こんな感じの台何だけど、どうだろうかチロシ」


 それだと野外フィッティングルームの中が狭くなる、そうだな形を変えるか。


 俺はメモ帳を取り出すと、ハンガーラックを書く、ハンガーラックの下には衣類入れの籠が置ける用にもした。そして、これらは全て組み立て式にしてもらう。


「こんな物なら直ぐにでも作れるが、これはどう使うんだよ」


 エヴァは使い方が解らない様なので、ガレージの奥に掛けていたハンガーを持ってくると、ヴィヴィの上着を剥ぎ取り掛けて見せた。


「なるほど、こんな感じに使うんだ」

「ちょっとチロシ、わたくしの上着を剥ぎ取る何って酷いじゃないですか」


 ヴィヴィの抗議の声を黙殺して、俺とエヴァは目的の物の幅や高さを決めていく。


 そして。


「こんな物かな、スノコにハンガーラックの足を填め込み式にして、転倒しない設計にしたけど」


 足が一本だと倒れるぞ。これだと足を二本に足して、上をクロスさせれば倒れないし、下には籠も置けるんじゃないか。


「そうか、それで行こうか。足は四本になるけど幅を狭めてしまえば、邪魔にもならないだろうし、スノコに填め込めば転倒も防げるよね」


 そうだな。これで行こうか。


「わたくしだけ解らないのですが」


「「ヴィヴィはいいんだよ」」


「何で二人して声を揃えて言うのですか」


 ヴィヴィが頬を膨らませて怒っているが、俺とエヴァはヴィヴィの頭を撫でて期限を取ってから、スノコに開ける穴の位置を話し合いだした。


 そして。


 完成だ。これでマッサージも完璧だな。


「チロシわたくしの方から提案があるのですが」


 なんだ提案って。


「実はですね。チロシのくれる食べ物や飲み物を御風呂屋で、販売したら売れるのではないかと思ったのですわ」


「でも、さっき食べたアイスを皿に移して出したりすると、皿を洗う場所が必要になるよね」


 そうだな、あのままで出すのは流石に不味いだろうし。皿やコップに移す必要があるよな。


「あのまま提供したら駄目なのですか」

「ヴィヴィ、考えてもみてよ。あんな珍しい物を見せたら、きっと貴族や商会の者達がよからぬ事を考える に決まっている。そして、巻き込まれた挙句に命まで取られかねないなら、最初から見せない方が正解だよ」


 そうだな。エヴァは賢いな。


「この世の中で貴族ほど性質が悪い者はいないから。あっヴィヴィは違うから大丈夫だよ」

「うっ……ごめんなさい」


 ヴィヴィって貴族なんだな。 


「チロシには話して居なかったですけど、わたくしはケベス国の公爵家の娘ですの」


 公爵家って言うと王族なのか?


「そうですわ。わたくしの父上は国王の弟ですの。従兄弟は王子様ですわ」

「ボクがヴィヴィ様の身分を証明するよ。ヴィヴィ様は公爵家の姫様なのよ」


 えっエヴァ、いきなりヴィヴィを様付けで呼ぶとか、いったいどうしたんだ。


「エヴァ、今のわたくしに敬称は不要と申したはずです」

「はっ、申し訳ございません」


 いやっ、いきなり畏まられても俺が困るのだが、今までの事を考えたら俺って打ち首にされるんじゃないか。


「いえ、祖国は滅んだと言っても過言ではないのです。町の者に少し聞いたのですが、領地を守っている領主も居るそうですが、辺境の場所で攻め込むのに手間取っているだけだと聞きました」

「その通りでございます」


「チロシが、この町との分岐路で右に行っていれば、わたくしは死んでいたでしょう。二人には感謝しかありません」


 おっおう、死ななくて正解だぞ。


「エヴァはエクスタ王国で傭兵団団長の娘なのです。エクスタ王国の傭兵団は有名で、戦場に来れば高待遇で迎えられる程なのですよ」

「ボクなどヴィヴィ様に比べれば、無いような身分でございます」


 俺は只の平民です。


「二人とも、もう畏まらないでください。わたくしの事は一人の女として、接してくだされば結構です。今後、わたくしの事を思うのであれば敬称は止めて下さい」

「わかったよヴィヴィ」


 おう、俺もわかったぞ。


「軽いなチロシ、ヴィヴィに謝れ」


 何でだよ!


 話は解ったから、提供する商品を決めるぞ。案を出さなければ俺の独断と偏見で決めるからな。


「駄目に決まってるだろう」

「だめですわ」

 

 それと、連合王国の通貨単位と通貨を教えてくれないか、俺は他国の者だから知らないんだわ。


「そうだよね。ボクが教えてあげるね」


 

 そして、お勉強会が始まる。




~*~*~*~




 銅貨が百枚集まり、大銅貨一枚になり、大銅貨十枚が集まると、銀貨一枚になる、そして銀貨十枚で金貨一枚になるから。


 銅貨一枚で一円 大銅貨一枚で百円


 銀貨一枚で千円 大銀貨一枚で五千円


 金貨一枚で一万円 大金貨一枚で十万円


 連合王国の通貨単位はアクメと言うらしい。


 パン一つ(ホールケーキ五号)で十アクメする。


 食堂の一食が百アクメ(大銅貨一枚)


 宿代一泊が五百アクメする。


 大人一人の一月の稼ぎは、二万アクメ(金貨二枚)


 これが連合王国の通過単位と相場だそうだ。




~*~*~*~




 そうなると飲み物の値段は、一杯十アクメだと安いのかな?


「安くはないでしょうね」

「どうなのかしら」


 コーヒー一杯が五アクメ


 紅茶一杯は五アクメ


 ジュース一杯が五アクメ


 お酒が一杯が十アクメ


 こんな感じでどうだろうか?


「それで、いいと思うわよ」

「そうなのですか?」


 食べ物は、どんな物を提供したいんだ?


「そこは暑いから冷たい物が欲しいよね」

「そうですわね」


 アイス・ゼリー・クッキー・ビスケット・ケーキ


 こんなラインナップでどうだろうか?


「「チョコがない」」


 暑い場所だからチョコが溶けてしまうぞ。


「「クッ」」


 ケーキだけ十アクメで他の食べ物は五アクメで良くないか?


「それでいいかもね」

「良くわかりませんわ」


 それと本題に入ろうか、入浴料は幾らだと妥当だと思う。


「薪代・人件費・設備代・その他諸々を考えると、一回で百アクメから二百アクメは貰わないと、採算が取れないと思う」

「三百アクメでも良いのではなくて」


 百アクメで三十人が一日の利用する人数だとして、三千アクメか採算は取れるだろうか?一月で九万アクメ。


 よし、入浴料は百アクメで、マッサージを三百アクメにするぞ。


「マッサージ料が安すぎない?」

「わたくし達が大変になるのは嫌ですわよ」


 俺が、飲食の担当兼受付を担当する。


 エヴァがマッサージの担当だ。


 ヴィヴィはサウナを担当してくれ。


 これで仕事が回らないなら人を雇う事も考えるしかないだろうな。


「「そうね」」


 よし、営業の目処も立った事だし、三人で浴槽に肩まで浸かるか。


「「なんで?」」


 俺がキミ達の裸を見たいからだよ。


「死ね変態」

「最低ですわチロシ」


 寒空ガレージに、二人の女の子の罵声が響き渡って木霊した。





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