第43話 機材トラブル
「……わかった、すぐ行く」
私は列を抜けて、再び食堂を出た。
機械のことなら、私より姫名ちゃんの方が詳しいだろう。私は地下にいる姫名ちゃんを呼びに行った。
ちょうど交代の時間で、私達は地下の入り口でばったり出くわした。
「わ、どうしたんですか、理音会長」
「姫名ちゃんごめん、一緒に宴会場に来てくれる? プロジェクターが壊れたらしいんだ」
「え?」
宴会場では、燈と映画部の人たちが、ステージ横の機械やパソコンをいじっていた。そして神流ちゃんが、リモコンを天井に向けていた。あれはプロジェクター用のリモコンだ。
「燈、どうしたの?」
私が声をかけると、燈は手を振った。
「どうやっても映像が映らないんだ。もうずっと格闘してるんだけど……」
本当なら、ステージの奥の壁に映像が映るはずだった。でも今は、真っ暗なままだった。
「だめ、全然わかんない」
神流ちゃんが「お手上げ」って感じのポーズで言った。
「姫名、あんたこういうの得意でしょ。なんとかならない?」
「う、うーん……」
姫名ちゃんは天井を見上げて、目を細めた。
「……電源は入ってるね。でも映像が出てない……いま映像データは送ってるんですか?」
パソコンをいじっていた映画部の人たちが、顔を上げた。
「ずっと送ってるよ。でもうんともすんとも言わない」
「昨日はちゃんとできたのに……」
パソコン画面では、何かの動画が再生されていた。本来は、これがプロジェクターに送られて、壁に映るはずなんだ。
「もう一回再起動してみるか」
パソコンの電源を一度落としてから、再び電源を入れた。でも、やっぱり映像は映らない。
「ケーブルが間違ってるとか?」
と私はパソコンに繋がってるケーブルを持ったけど、そこにはばっちりと「プロジェクター」と書かれたテープが貼ってあった。たぶん間違ってない。
「……あれ?」
と、プロジェクターを見上げていた燈が言った
「なんかチカチカしてない? 昨日、あんな風に光ってたっけ?」
みんなで一斉に、上を見た。プロジェクターについてる赤と緑の小さいライトが、点いたり消えたりしている。
姫名ちゃんが、「あっ」と声を上げた。
「あれはきっと、エラー表示です。あれの意味を調べれば、なんで映らないのかわかると思います」
「どうやって調べるのよ?」
「説明書とかあれば……」
そんなものはない。
「あ、でも、あのプロジェクターの商品名がわかれば、ネットで検索できます」
「いや、それこそ説明書がないとわからないよ」
車を見ただけで車種がわかる人がいるけど、プロジェクターを見ただけで商品名がわかる人は滅多にいない。私達の中に、そんなレアな人はいなかった。
だけどそのとき、神流ちゃんがスマホのカメラをプロジェクターに向けた。そしてパシャリ、と写真を撮ると、スマホに話しかけた。
「OK、Google。この画像で検索して」
数秒後、スマホの画面を姫名ちゃんに見せた。
「出たわ。VP-IC-3000だって」
え、す、すごい。そんなことできるの!?
「いま何やったの?」
「Googleって画像で検索できるんですよ。だからプロジェクターの写真で検索かけたんです。そしたら、同じのが出てきました」
なに当たり前のこと聞いてるの、って態度だった。わ、私スマホ持ってないし……。
「それで、姫名、ここからどうすればいいの?」
「か、貸してください。メーカーのホームページが見たいんです。そこに説明書があるはずです」
姫名ちゃんはスマホを受け取ると、ひょいひょいと操作した。そして、「うっ……」とうめいた。
「さ、最悪です。どうやら、映像を映すためのランプが壊れたみたいです。あのプロジェクターは、もう使えません」
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