第33話 大忙しの三週間

それから文化祭当日までの約三週間、私達生徒会は怒涛の忙しさだった。思った通り、私はクラスの準備にほとんど参加できなかった。


「ほんとごめんっ! 全然協力できなくて」


とクラス委員長に謝ると、委員長は笑って許してくれた。


「いいっていいって。だって理音のおかげで文化祭できるんでしょ? それだけで最高の協力だよ」


そんな嬉しいことを言ってくれた。


「そうだ、蟹場は最高の生徒会長だぞ!」

「いよっ、敏腕CEO!」

「ビューティー眼鏡美少女!」


これらは「お褒め屋」の練習だ。っていうか意味わかって言ってるのか。


生徒会の仕事は主に事務仕事だ。各団体から上がってくる要望に全て目を通し、許可できるものは許可し、そうでないものは却下する。

特に今回、予算がかなりシビアだ。極力無駄を省くようにみんなにお願いしているけど、どうしてもあとから必要なものが出てくる。それらの購入が可能かどうか、私と神流ちゃんで頭を悩ませた。


「神流ちゃん、軽音部がマイクにつけるアクリル板の購入費用を要望してるけど……」

「マイクにつけるアクリル板? なんですかそれ?」

「なんかこういうのがあるらしいよ。手に持つ部分と球の部分の間につけて、飛沫を防ぐ板だって」

「感染対策費用ですか。それなら予算を出しても……いえ待ってください、軽音部はこれまでに学外で何度か公演してます。そのときはどうしたんですか?」

「そのときはたまたまアクリル板があったって」

「じゃあ、今後アクリル板がないところで公演するときは、そのマイクを使うわけですよね? 文化祭以外でも使用するものには予算を出せません。却下です」


神流ちゃんの基準は厳しい、と噂になった。


「理音会長、小部屋に配置されてた1年4組が、やっぱり大部屋にしたいと要望しているんだが」

「大部屋? 大部屋は全部で15部屋あって、いま配置されてるのは10団体分だよね。うん、まだ余ってるから大丈夫だよ」

「わかった」

「り、理音会長。小部屋に入ってる2年2組が、小部屋がまだ余ってるなら2部屋使いたいって要望してます」

「2部屋? その発想はなかったな……小部屋は20部屋あって、いま使ってるのは6……いやさっき1クラス大部屋に移ったから5か……十分余ってるしいいよ」

「わかりました」

「理音会長、二階の大部屋に配置されたクラスが、出し物の関係上四階にしたいと言っているんだが」

「四階? ええと、四階に余ってる部屋はあったかな……」

「り、理音会長、小部屋がそんなに余ってるなら3部屋使わせてくれって要望が」

「えっと、うん、まだ余ってるけど……え、隣り合う3部屋? ちょ、ちょっと待って」

「理音会長、なんか大部屋と小部屋を使いたいってクラスがいるんですけど」

「り、理音会長、両隣が空いてる方がいいって要望が来たんですが」

「理音会長、角部屋がいいという要望が来たんだが」

「理音、脱出ゲームの都合上、東向きの窓の部屋がいいんだけど、余ってるかな?」

「理音会長」「理音会長」「理音」

「ごめん、ちょっと紙に書いて整理させて!!」


そんな大忙しの中、国枝先生からある知らせが届いた。iPadのメッセージ画面に、私達にとって驚きの言葉が書かれていた。


『蟹場さん、新聞の取材の申し込みが来ています。受けますか?』

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