第32話 お願いと提案

休憩のあと、私は受付に移動した。

生徒会メンバーがロビーにそろっていて、全ての掃除が終わったと教えてくれた。


「じゃあ、放送かけようか」


掃除が終わった人たちは、適当な場所で休憩してもらっていた。生徒会の誰かに会えれば、報告して帰ってもよかった。実際、何人かはすでに帰っていた。


200人以上いると、このホテルでは一ヶ所に集まることができない。部屋の広さ的にも、感染対策的にも。

だから私は、館内放送で呼びかけることにした。


「えー、みなさん。生徒会長の蟹場理音です。本日はお疲れさまでしたっ! たったいま、全部屋の掃除が終わったことを確認できました!」


パチパチパチパチ、とロビーのソファに座っていた生徒達が拍手してくれた。

いや、よく耳を澄ますと、食堂からも拍手が聞こえてくる。たぶんいま、ホテル中の生徒達が拍手している。


「ということで、本日はこれにて解散……なのですが、これからお呼びする方達は、ちょっとだけロビーに残ってください」


そう言って私は、いくつかの部活を呼んだ。ボランティア部とか、吹奏楽部とか……食べ物屋に落選した人達と、ステージ系の人達だ。


「以上です。では今度こそ解散! みんな、打ち上げとかしないでまっすぐ帰ってね」



呼び出した12の部活は、全員合わせると60人くらいいた。ロビーには入りきらないので、食堂に移動した。

中庭はすっかり暗くなっている。もう午後5時を回っているからだ。うちの学校の完全下校時刻は午後6時だから、それまでにはみんなを帰さないといけない。


「みんな、疲れてるところ呼び出してごめんね。実は、お願いしたいことと、提案したいことがあります」

「まだどこか掃除するんですか?」

「いえ、まさか。掃除はもう十分。お願いしたいのは、文化祭当日のこと。そして提案したいのは、食べ物屋に代わる企画です。実は……」


そうして私は、ステージ系の人たちにお願いを、落選した人たちに企画を説明した。

話終わると、みんな乗り気になってくれて、ほっとした。

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