第28話 打診
国枝先生はすぐにメッセージを返してきた。
『だめですね』
あっさりと否定された。
「なんでですか!」
『食事は食堂でのみ行う約束です。蟹場さんが提案した感染症対策では、そのようになっていましたよね?』
先生たちを説得したときの話だ。ぐぬぬ、やっぱり頑固な先生だ。
『それに、宴会場は二つあるので、混乱のもとになります。片方の宴会場を飲食可にしたら、もう一方の宴会場でも飲食を始める人が必ず出ます。上演中に飲食を始めたら注意もしづらいですし、周囲への迷惑も大きい。ですので、宴会場での飲食は認められません』
国枝先生は淡々とメッセージを送ってきた。先生の意見には説得力があった。これはこっちの分が悪そうだ……。
「わかりました。宴会場は飲食禁止にします」
『はい、それでお願いします』
私はiPadを置くと、みんなを見た。
「だめっぽい」
「そのようだね」
燈もiPadを見ていた。私と先生のやり取りは、他のメンバーのiPadにも表示されているのだ。
「やっぱり予定通り抽選するしかないだろうね。残念だけど」
「そうだね……。でも、どうやって決めればいいかな?」
「クジでも用意しよう。Zoom越しに引いてもらえば、不公平感もないだろう」
「そんなことできる?」
「画面に裏返したクジを映して、番号で選んでもらえばいい」
燈はそれで、いったんこの話を終わりにした。
「それと、理音、うちのクラスから出た質問があるんだけどさ」
「うん、なに?」
「うちのクラスの出し物は、脱出ゲームに決まったんだ。だけど脱出ゲームは、部屋の形を知らないと作れない」
「燈先輩の写真があるじゃないですか」
神流ちゃんが指摘したけど、燈は首を振った。
「うちのクラスだけなら僕の写真を見せればいいけど、他のクラスじゃそうはいかない」
「まぁあの写真を見られるわけにもいかないでしょうし」
「そ、そういうわけじゃないよ。とにかく、理音、一度会場の下見に行くことはできないか、って質問が出てるんだ」
「下見……」
言われてみれば、私達生徒会はホテルを見たけど、他の生徒達は見ていない。部屋の広さがわからなければ、飾り付けの準備もできないだろう。
「でも、全員連れて行くわけにはかないよね?」
「うん。だから、各団体の代表者だけ連れて行きたいんだ。それでも30人以上になっちゃうけど……佐伯さんに頼めない?」
「わかった、あとで聞いてみるね」
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