第27話 集計結果

一週間後。出店の申込期間が終わった。

手分けして集計し、私達はうなり声をあげた。


「「困った……!」」


申し込んできたクラスは、全15クラス中13クラス!

申し込んできた部活は、全28部活中25部活!

合計38団体!


「多すぎるわ!」

「署名のときは140人分しか集まらなかったのに!」

「いざ開催するとなったらやる気になった人が多いんだろうね。あと、団体単位での申し込みだから、1人か2人反対する人がいても通っちゃうんだろう」


燈が冷静に分析した。

ホテルの客室は大小合わせて35室しかないから、38団体すべてを客室に入れることはできない。

が、問題はそこじゃない。一番の問題は、内訳のバランスの悪さだ。


38団体中20団体が、食べ物屋を希望している!

残り18団体のうち6団体がステージ発表希望、残り12団体が私のクラスのような企画系や展示系だ。


「20は無理だね」


燈はiPadの写真フォルダを開いた。ホテルの食堂の写真が何枚もある。写真には私達も一緒に写っていて、広さが分かりやすかった。


「1つの食べ物屋にどのくらいの広さが必要かわからないけど、仮に夏祭りの屋台くらいの広さだとすると、食堂の中に入れるのは5店舗くらいだろう。中庭を合わせても、10が限界だ」

「半分の団体には諦めてもらうしかないな。俺のクラスもだが」

「的先輩のクラスは何を希望したんですか?」

「綿菓子屋だ」


大きい的君が綿菓子を作ってる姿を想像すると、なんか面白い。

いや、そんなこと考えてる場合じゃない。


「食べ物屋が多い場合は抽選になるってことは、事前に伝えてある。だから誰も文句は言わないだろうけど……」


せっかくやる気になって、希望を出してくれたんだ。できれば希望を通してあげたい。

何か、何か方法はないだろうか。


「食堂に近い客室を飲食店にしちゃうとか……」

「だめだ。飲食は食堂だけにするっていう約束だ」

「だよね……」


これ以上約束を破るわけにはいかない。今度こそ中止にされかねない。


「で、ですけど、たこ焼きみたいなパックに入る食べ物なら、いいんじゃないでしょうか? 客室で売って、食堂で食べてもらうんです」


姫名ちゃんが良いアイディアを出したけど、神流ちゃんが否定した。


「難しいと思うわよ。その途中で食べ歩きする人が絶対出てくるから」

「そ、そうだよね……」

「抽選するしかないと思いますよ。最初からその約束なんですから」

「ううん……」


私は燈の写真フォルダを次々とめくった。みんなで一緒に見てると、姫名ちゃんが言った。


「……なんか、理音会長が写ってる写真、多くないですか?」

「え、そうかな?」


私が次々写真をめくると、燈の目が泳ぎ出した。


「そ、そ、そんなことはないよ!」

「そうですか? だってほらこの写真なんて、宴会場を撮ってるのに理音会長の横顔が中央に大きく……」

「それは別にたまたまそうなっただけで狙ったわけじゃ……!」


燈がわたわたと両手を大きく振り、姫名ちゃんと神流ちゃんが気持ち悪いものを見るような目で燈を見ていた。的君は同情するような目だった。


でも、そんなことより、私は良いことを思いついていた。


「そうだ、宴会場だよ! 片方の宴会場を飲食可能にしよう!」

「え? いやそれもだめじゃない?」

「だめかもしれないけど、国枝先生に頼む価値はあると思う。食堂くらい広いんだから、感染対策的には同じでしょ?」

「でも、ステージ系の出し物はどうするんだ?」

「それも平気」


私は集計データを見せた。


「ほら、ステージ発表を希望してるのは6団体しかない。文化祭は午前9時から午後4時の7時間だから、宴会場ひとつで全部の発表ができるんだよ」


全ての発表を1時間以内に収めてくれれば、1時間は余る。ステージの入れ替えの時間を考慮しても、ぎりぎり時間は足りるはずだ。


「だから、宴会場の片方でステージ発表して、もう片方で飲食店を出すことができるはずなんだよ。さっそく、国枝先生に相談してみよう!」


私は国枝先生にメッセージを送った。

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