第23話 再び報告会(その3)

最後は燈と姫名ちゃんの発表だ。二人は感染対策について調べてもらっていた。


「改めて、保健室の樹里先生に話を聞いてきたよ。それと、佐伯さんにもね」


佐伯さんとは、私と一緒にZoomでやり取りした。だから燈の話は、私の発表とほとんど被っていた。

樹里先生の話も、前回とあまり変わらなかった。ひとつ付け加えるなら、入場制限の話だ。


「大部屋は20人以上入っても狭く感じないけど、感染対策という点からすると不安が残る。全員が2メートル以上距離を取れるようにするなら、15人が限界だろう。小部屋は7〜8人だ」


するとホテル全体では、300〜400人程度入れることになる。間をとって、350人とした。


「それから、全員分の連絡先を集めておく必要もある。万一感染者が出た場合、参加者全員に連絡しないといけないからね。ということで、生徒以外の参加者は、事前申込制にした方がいいと思う。申し込みのときに、連絡先も書いてもらうんだ。この方が人数も把握できるからね」


そして姫名ちゃんは、ネットで情報を集めてくれた。


「わ、わたしは、インターネットで過去のイベントの情報を調べました。前に燈先輩が、小規模なイベントなら再開されているって言ってたので」


そういえばそんなこと言ってたな。


「それで調べたところ、二日間で九万人が参加して、三人しか感染者を出さなかったイベントが見つかりました」

「えっ、それって大規模イベントなんじゃ?」

「はい。でも、感染者はたった三人。なので、そのイベントで行われていた感染対策を真似すれば良いと思います」

「良いわね、それ。実績があるのは説得力があるわ」


そうか、「あのイベントと同じ方法なので安全です」って言えるんだ。


「そのイベントは大きなホールで行われたので、ホテルとは違うんですが……」


そこで姫名ちゃんは、的君を見た。


「まず、的先輩の考えは大正解でした。イベントではお食事できる場所を決めていて、そこ以外では一切の飲食が禁止されてました。なので、やっぱり食事は、食堂だけでやるべきです」


おお、的君すごい。


「そして、入場時に検温をします。ここで体温が37.5℃以上の人は、入場をお断りします。あとは全員にマスク着用と、こまめなアルコール消毒をしてもらいます」

「それだけ?」

「いえ、まだあります。文化祭前の二週間以内に、感染者と濃厚接触していないことの確認が必要です。ただこれは、お客さんに自分で判断してもらうしかありません」


そこはちょっと不安だけど、まぁ仕方ないか。


「そして最後に、文化祭が終わったら、打ち上げなどはせずにまっすぐお家に帰ってもらわないといけません。これはお客さんじゃなくて、生徒達への注意です」

「……そっか、なるほど。終わったあと、みんなでファミレス行ったりできないんだ」

「はい。そこで感染することが多いみたいです」


『風のカーニバル』では、最後にみんなでファミレスに行こうって話で盛り上がっていた。そっか、あれもできないんだ。


「わ、わたしからは以上です」

「僕らの結論としては、ホテルでの開催は、感染対策として悪くない。それどころか、むしろ学校よりも安全だ、ってことだ。この点は、先生達に十分アピールできると思う」


それは嬉しい結論だ。月に何回かは学校で授業してるんだから、学校より安全な場所で文化祭ができないわけがない。


私は立ち上がった。


「ありがとう、みんな。それじゃ、これからこの内容をまとめよう。先生達へのリベンジに向けて!」

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