第21話 再び報告会(その1)

数日後、私達は放課後の生徒会室で、調べたことを再び発表しあっていた。

まずは神流ちゃんから予算のこと。


「過去十年分の文化祭の予算を調べましたが、どんなに頑張って削っても、七十万か八十万はかかると思います」

「内訳は?」

「こんな感じです」


神流ちゃんはiPadの画面を私達に見せた。

話が長くなったのでかいつまんで説明すると、一番お金がかかるのは食べ物屋らしい。というか、単純に数が多いから、半分くらいに減らした方がいい、というのが神流ちゃんの指摘だった。ホテルの食堂に入らないしね。

で、それらが全て別の、展示とか物品販売とかに変更したとすると、だいたい七十万くらいになるそうだ。


「つまり、十万では無理ですし、全生徒から千円ずつ回収しても無理です」

「困ったな。いきなり詰んだじゃないか」

「さらにいうと、今年は感染症対策として消毒用アルコールなどを買う必要があります。手を消毒するスプレーが1本約2000円で、これが各部屋に2本ずつ、食堂と受付に3本ずつ、さらに予備で10本くらい買うと、17万2000円になります」


たっか。

てかあれって2000円もするんだ。色んなお店で見かけるのに、実は結構高いんだね。


「どうしよう……無理じゃん」

「方法はいくつかあります。できるかどうかはわかりませんが」

「なんでも言って。もしかしたらできるかも」

「ひとつは、部費を回収することです。各部活は生徒会から部費をもらっています。それを一部、返してもらうんです。うちの学校は部活が多いので、各部から二万ずつ返してもらえれば、なんとか開催できます」


そっか、生徒から千円ずつもらうんじゃなくて、部活から二万ずつ返してもらうって手があるのか。

でも、それはそれで、その部の活動を制限しちゃうことになる。できればやりたくない。


「他の方法は?」

「去年の文化祭予算を使うんです」

「去年の? え、でも去年の文化祭は……」

「はい、中止になりました。でも、予算はあったんです。その使わなかった予算は、学校に返却しています。その後どうしたか知りませんが、もし学校がそれを使っていなければ、丸々百万円が残っているはずなんです」


希望が見えた。

私は思わずガッツポーズを作った。


「良いじゃん、その手! それでいこう!」

「学校に残ってるかどうか、わかりませんよ」

「残ってるよ。だって、何に使うっていうの?」

「それはわかりませんが……」

「じゃあ、それで行こう。残ってなかったら、そのときはそのときで考えればいいよ」

「待て、理音。一応、他にも方法がないか、聞いておこう。神流さん、他に方法はあるの?」

「まだ、いくつか」


と、神流ちゃんはいくつか案を出してくれたけど、やっぱり去年の予算を使うのが一番良さそうだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る