第2章 リオたちの行動

第9話 私達で

「作ろう! 私達生徒だけで、私達生徒の文化祭カーニバルを!」


Zoomの画面越しに、生徒会メンバー達はあっけに取られていた。

3秒後、ともるが恐る恐るといった感じで聞いてきた。


『僕らだけで、一から文化祭を作るってこと?』

「そう! だってさ、140人分も署名が集まったんだよ? 今更『ダメでした』なんて言えないよ。開催に向けて、打てる手は全部打ちたい! だからさ、先生達の許可なんて取らずに、勝手にやっちゃえばいいんだよ」

『気持ちはわかるけど、無茶だ。準備してる間に怒られて中止されるのがオチだ』

「学校で準備してたらそうだろうね。でも他の場所なら?」

『他の場所?』

「公園とか神社とか、いつもお祭りをやってる場所を借りてやるの」


先生の許可が必要な理由は、学校でやるからだ。なら、学校じゃなければ、先生の許可はいらない。


『借りるったって、どうやって借りるのさ?』

「知らないけど、神社なら神主さんに頼めばいけそうじゃない? 公園は、市役所に行けば借りられるのかな?」


燈が頭を抱えた。


『理音が暴走するのは昔からのことだけど……』


私と燈は幼馴染だ。小さい頃から、こうやって走り出す私を、燈は後ろから引っ張ってきた。それは邪魔になることもあったけど、助かったこともある。そしてなんだかんだ言って、最終的には私の味方になってくれる。

ちなみに、燈が生徒会に入ったのも、私のためだ。私が生徒会に入ると言い出したら、「理音だけじゃ心配だから」と言って付いてきたのだ。どこまでも世話好きな奴である。


『でも、外でやるのは良いかもしれないですね』


意外にも、神流かんなちゃんがノリ気だった。


『外なら換気もバッチリですから、感染の危険性が下がります』

「そうでしょ?」


どうだ、と言わんばかりに燈の画面を見たけど、燈はまだ頭を抱えていた。


「と言ったものの、公園も神社も、文化祭をやるには狭いと思うんだよね。それに、どうしても『文化祭』というより『秋祭り』って感じになっちゃうと思う。だから、もっと良い場所を探したいんだけど……」


私は昨日の夜から、このことを悩んでいた。

文化祭って、結構広いスペースが必要だ。だって、本来なら3〜4階建ての校舎を数棟使ってやるんだから。それと同じくらい広い場所じゃないとダメなんだ。そんな場所、野球場くらいしか思いつかない。


そもそも、屋外でやるのが難しいんだ。どのクラスも部活も、飲食店ばかりやるわけじゃない。演劇とかの公演や、作品の展示なんかもする。そういったものは、静かな屋内の方がやりやすいはずだ。


私がそう話すと、まと君がゆっくり考えてからまとめてくれた。


『生徒が300人いて、お客さんも同じくらい来るかもしれない。その人達が全員入れて、換気もできて、静かな建物が欲しい。理音会長はそう言いたいんだな?』

「うん、そんな感じ」

『そんな場所あるわけない』

燈が即行で答えた。

『要するに、学校みたいな場所ってことじゃないか』

「そうなるね」


燈はまた頭を抱えた。

すると、お人形みたいな姫名ひなちゃんが、小さい声で言った。


『あ、あの、もしかしたら私、そういう場所、知ってるかもしれません。明日の放課後、見に行きませんか?』

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