第4話 作戦開始

『こんにちは! 生徒会長の蟹場理音です。この場を借りて、一つ提案したいことがあります。

 私たちは11月に、文化祭を開催したいと思っています。でも先生方に話したら、断られてしまいました。

 そこで、署名を集めたいと思います。文化祭を開催して欲しいと思う人は、下のリンク先に名前を書いて、投票してください! これを持って、もう一度先生方に交渉してみます!』


「こんな感じ?」

「良いと思う」


私の文章を読んで、燈はうなずいた。


「あとは姫名さんが作ったポスターを添付しよう」


姫名ちゃんが作ってくれた画像ファイルを載せた。これで良いのかな?


私たち生徒会メンバーは今、私のiPadの前に集まっていた。あれから数日で、姫名ちゃんが色々なものを作ってくれた。

まず、ポスター。「文化祭を開こう!」という文字と、お祭りっぽいイラスト、そして署名の協力のお願いが書いてある。


それから署名フォーム。クラスと名前を書いて「送信」ボタンを押すと、書いた内容が私たちの元に届く。さらに、書きたい人は一言メッセージを添えることもできる。書いた署名もメッセージも、私たちだけが読める仕組みだ。

姫名ちゃんはこういうの作るのが得意なんだ。


私たちの作戦は、こうだ。

うちの中学では、全員にiPadが配られ、さらにクラスごとの専用グループが作られる。そこにこのポスター画像と、私の文章を投稿するんだ。これは、クラス全員が見るはず。


だけどそのままだと、私のクラスの人しかこれを読めない。生徒会メンバー全員が同じことをやっても、五クラスにしか投稿されない。


そこで、次の文章を書き足す。


『※この文章とポスターを、違うクラスの友達にも送って、クラスグループに投稿してもらってください』


名付けて、えーと……。


「なんて言うんだっけ、この作戦」

六次ろくじへだたり」


そう、ロクジノヘダタリ作戦!

燈が言うには、「友達の、友達の、友達の、友達の……」って調べていくと、なんと六回で、全世界の人に繋がれるんだって!

世界のどんな偉い人だって、私の「友達の友達の友達の友達の友達の友達」のどこかにいるってこと。すごくない?


つまり、この投稿を見たクラスのみんなが、それぞれの友達に同じものを見せて、その友達がまた自分のクラスでこの投稿を広めて……って繰り返してくれれば、全クラスにこの文章が伝わるってわけ。


署名フォームを提案したのは姫名ちゃんで、ロクジノヘダタリ作戦を思いついたのは燈だった。二人の合わせ技で、この作戦は作られたんだ。


ただしこの作戦だと、先生たちにも私の文章が見られてしまう。クラスグループは、どの先生でも読めるからだ。

だけど、それで構わない。むしろ見てもらった方がいい。私たちが本気だってこと、先生たちに伝えるんだ!


「それじゃ、投稿するよ」

「うん」


私はもう一度文章を確かめてから、投稿ボタンを押した。


ポンッという音がして、私の文章と画像が投稿された。

そしてすぐに、みんなの反応があった。


『本当にやるんだ、文化祭』

『楽しみ!』

『署名しといたよ』


「やった! 反応いいよ!」


私は嬉しくなって、早速返信した。


『署名ありがとう! 拡散もよろしくね!』


「それじゃ、僕たちも投稿しようか」


燈たちも、自分のクラスに同じものを投稿してくれた。

きっとうまくいくよね、この作戦。


「あとは、署名が集まるのを待とう」

「はい。のんびり待ちましょう!」

「ううん、姫名ちゃん、のんびりもしてられないよ」


と私は釘を刺した。私たちにはまだ、やることがある。


「この間に、感染症対策について調べなきゃ」


これは神流ちゃんとの約束だし、文化祭を開くには必要なことだ。


「でも、どうやって調べるんですか?」

「それはやっぱり、インターネットかな」


インターネットを使った調べ物は、学校の授業でもよくやっている。難しくはないはずだ。


「他に方法があればそれでもいいよ。調べ方はみんなに任せる。来週、調べたことを発表し合おう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る