第一話
女神の力を受け取った後、俺達は城の中へと案内された。
ちなみに城の中は豪華な造りになっていた。
床には赤い絨毯が敷かれており、天井には巨大なシャンデリアがぶら下がっている。
壁には絵画が飾られており、所々に高級感のある家具が置かれていた。
おそらくだがこの部屋は王の間なのかもしれないな。
「皆様。お疲れ様です」
玉座に座っていた王様が立ち上がる。
王様は金髪碧眼のイケメンで、いかにも貴族といった感じの男だ。
「初めまして勇者様方。私はこの国を治める国王のゼスト・アル・メルトと申します。まずはこの国を救っていただいたことに感謝を申し上げます」
王様が深々と頭を下げる。
「いえ、僕たちこそお世話になるのでよろしくお願いします」
三谷君が代表して謝った。
「いえ、そんなことはありません! むしろ感謝しているくらいです! 我が国は魔物の脅威に晒されています。そんな中、魔物たちを討伐してくれる救世主が現れてくれたのです! これほど喜ばしいことはございません!」
王様は本当に嬉しそうに言った。
「あの……それで早速なのですが……。魔物を倒すためにはどうすればいいでしょうか?」
佐藤さんが尋ねる。
「そうですね……。魔物たちは基本的にダンジョンと呼ばれる場所に巣食っていると言われています」
「ダンジョン?」
「はい。この世界には魔素と呼ばれるものが存在します。その魔素によって魔物た
ちは生み出されているのです」
「魔素が生み出した……」
「そして魔素はダンジョンにも存在します。その魔素の影響でダンジョンはどんどん成長していきます。そして1番最難関と言われている奈落のダンジョンの最奥にはこの世界を脅かす魔王がいると言われているのです」
「つまりその魔王を倒せば世界が救われるってことですか?」
「そういうことです」
「わかりました! ありがとうございます!」
「ところで勇者様方はレベルをお持ちですよね?」
「え、まぁそうですけど……」
「それならばすぐにでもレベルを上げてください!今のあなた達なら簡単にレベルを上げることが出来るはずです!」
「ど、どういう意味ですか……?」
「先ほど女神様が授けた力があるでしょう? あれを使えばいいんですよ」
『あっ……』
どうやら俺達は女神の力を使って戦わなければいけないらしい。
「じゃあ早速訓練をしましょうか」
俺は何か納得がいかないことがあったがここで訓練を受けずに出ていくのは申し訳ないと思った。だから仕方なく訓練を受けることにする。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「よし。今日はここまでにしましょう」
「は、はい……」
俺はぜぇぜぇと息を切らせながら地面に倒れ込んだ。俺以外のクラスメイトたちもみんな同じような状態だ。
「大丈夫ですか?」
「だ、だいじょうぶ……です」
俺はなんとか声を絞り出した。
「そういえばまだ名前を聞いていなかったな。君の名前は?」
「新島です。新島と書いてしんじまと言います」
「シンジ殿というのか。いい名だな。私はこの国の王であるゼストだ。これからよろしく頼むぞ」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
「では私はこれで失礼するよ。また明日もよろしく頼んだぞ」
「は、はい……」
王様は爽やかな笑顔を浮かべて去っていった。
「なんだったんだよあいつ……」
「なんか偉そうだったよね……」
クラスメイトたちが愚痴り始める。確かに少し高圧的だったように思う。
「ねぇ、それよりさ。早く戻って寝ようよ」
「そうだよ。もうクタクタだし」
女子生徒たちが帰りたいと訴え始めた。
「おいお前ら。あんまり我がまま言うんじゃねえよ」
リーダー的存在の鈴木が女子生徒を睨みつける。
「だって〜。こんなところにいたらストレス溜まるじゃん。それに私達、元の世界に帰れるかどうかわからないんでしょ?」
「それは……そうだけどよぉ」
「ならこんなところにいないで早く魔王倒して帰った方がいいと思うんだけど?」
「……ちっ。わかったよ」
鈴木は舌打ちをすると、不機嫌そうにその場を後にした。
それからしばらくして、他のクラスメイトたちも続々と城に用意された部屋に戻った。
結局最後まで訓練場に残ったのは俺を含めた数人だけだった。
「……はぁ。やっと終わったな」
「うん。疲れたね」
「じゃあそろそろ戻るか」
「あ、待って!」
「ん? どうかしたか?」
「あのさ……。ちょっと話したいことがあるんだけどいいかな?」
三谷君が真剣な表情で言う。
「別に構わないけど……」
「ありがとう。実は僕のスキルのことなんだけど……」
「ああ、確か【聖剣召喚】だっけ?」
「そうなんだ。このスキルはすごく強力で、使い方によっては最強の武器になると思うんだ」
「ふむ。それで?」
「それでね。僕はこの力でこの世界を救いたいと思っているんだ」
「なるほど。それで?」
「そこで頼みがあるんだ。この世界の人のためにその力を役立てて欲しい」
「断る」
「え!?」
三谷君は驚きの声を上げた。
「どうしてだよ! せっかくの強力な力なんだから有効活用しようよ!」
「いや、そういうのは柄じゃないっていうかさ。そもそも俺、勇者とかガラでもないしさ。悪いけど辞退させてもらうわ」
「そんな……!」
「じゃあそういうことだから。また明日な!」
俺は三谷君に背を向けると、足早に城へと戻った。
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