戸惑いからの・・・

俺と豪鬼さんは、仲良く座りながら談笑をしていた。


「そうだったのか・・・1年もの間昏睡状態だったと・・・して、目が覚め、まだ1週間も経たない内に行動に出たという事だな・・・」


俺はこれまでのいきさつを、豪鬼さんに話していた。


豪鬼さんは、鬼人族だけど、すごく話し易い人で、すごく優しい兄ができたみたいな感じがした。


「はい・・・そうなんです」

「苦労をしたのだな、雅人殿は・・・」


俺が下を向いていると、豪鬼さんは立ち上がる。


「よしっ!雅人殿‼私と特訓をしようではないか!」

「えっ、特訓ですか⁉」

「そうだ!私が戦い方を教える!雅人殿は師匠と呼べる方は今までいなかったのであろう?」

「は、はぁ・・・いません」

「なら好都合!善は急げだ!今日から一緒に修練を行うぞ‼」

「えぇえええええええええっ⁉」


そして・・・俺は、鬼人族の豪鬼さんとの奇妙な訓練が、急遽始まった。






――数時間後――



「ちがうっ!それでは真に強い者は倒せんぞ!!もっと下半身を意識するのだ!腕の力だけではなく、下半身に乗せた体重を上手く利用し、腰の回転で相手を貫くつもりで振りぬくのだ‼」

「はいっ!こうですかっ⁉」

「そうだ!それでいい‼今の意識を忘れない様に体に染み込ませるのだっ‼」

「わかりましたっ‼」


結論から言おう・・・

豪鬼さん、めちゃくちゃ教えるの上手‼



「ハァ、ハァ、ハァ―――」

「よしっ!今日はここまでっ‼」

「ありがとうございましたぁ―――‼」

「うむ、よく頑張ったな、雅人殿!」

「いえ、まだまだです・・・まだできますっ‼」

「うむ!その意気やよしっ!しかし、無理をして怪我をしては元も子もない!今日は帰って、ゆっくりと体を休め、明日また来なさい」

「え、明日も来ていいんですか?でもどうやって?」

「あぁ、それなら―――」


「いや~蒼海さん、すまなかったね!急遽変わってもらって!無事産まれたよ~!まさか、双子が産まれ・・・る・・と・わ・・・」


突如現れたレッドゴブリンは、俺と目が合うと、すぐに手で口を塞ぐ仕草をする。

俺はその姿を見て、天を仰いだのであった。


「あ~、そうゆう訳だったんだね~。ダメじゃない蒼海さ~ん!つっても僕もなんだけどね~あはは」

「あはは、いや~面目ない、紅林さん」


2人は和やかな感じで、お互いに報告をされている。


ちなみに、こちらのレッドゴブリンではなく鬼人族の紅林 砕鬼さんです。


「あ、あの~お2人は大丈夫なんですか?2人が喋れるゴブリン?鬼人族だとゆう事を俺が知っちゃいましたが・・・」


すると、紅林さんがこちらに視線を向ける。


「あぁ、その事ね~大丈夫大丈夫!うちの管理者(マスター)は、信用ができる者なら喋ってもいいってなってるから」


マジか・・・

うん?マスター?


「もし、信用ならないようなら―――」

「殺すしかないな~ははは」

笑っているが、目は笑っていない・・・


「雅人殿は口外しないから大丈夫!」

「はいっ!絶対口外なんかしません‼」

「いや~助かるよ~!口外されちゃうと、ペナルティーとして、給料減額されちゃうからさ~!これでも15人の子を持つお父さんだからさ~」

「15人⁉」

「そうっ!15人の子を養わないといけないから、大変だけど、それだけ、この仕事にはやりがいを感じてるんだ」

「紅林さん・・・」

「僕の事は砕さんって気楽に呼んでくれちゃっていいから」

「は、はぁ・・・」


どこの世界も大変なんだなとしみじみ思っていると、豪鬼さんが喋り出す。


「それで、雅人殿、先ほどの話の続きなのだが―――」

「あっ、はい⁉」


砕さんの話がインパクト強くて、忘れていた!。


「紅林さんお願いがあるんだが、明日からここで雅人殿を訓練させたいのだが、大丈夫だろうか?」

「訓練かい?なら、あそこの部屋を使うといいよ~」


あっさりOKが出た。


「ここで訓練をするとなると、業務に支障が出ちゃうから、あそこの部屋なら存分に訓練するといいよ!その前に、管理者に確認するから、ちょっとだけ待ってもらえるかな?あっ、もしもし紅林です―――」


そう言うと、砕さんは、懐から携帯電話を取り出し、どこかに掛け始めた。


携帯を普通に使ってるんだ・・・


俺がそんなこんな考えていると、砕さんが話終えたみたいだ。


「はい・・・はい、わかりました。それでは失礼しま~す」

「ど、どうでしたか?」


恐る恐る聞くと・・・


「大丈夫!OKだってさ!よかったね~雅人君、蒼海さん」


OK出たんだ!


「いや~ご迷惑をおかけして申し訳ない、紅林さん」

豪鬼さんが戦さんに頭を下げる

「豪鬼さん頭を上げて下さい!俺が迷惑を掛けてるんですから、俺に謝らせて下さい‼」


俺はすぐに砕さんに向け、頭を下げる。


「砕さん、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした‼」

「いやいや、2人とも頭を上げて上げて⁉僕は全然気にしてないし、むしろ、僕が急遽、蒼海さんに代わってもらったのが悪かったんだから―――」

「いや、紅林さんは奥さんと、産まれてくるお子さんが心配だったんだから、これは致し方がないこと!紅林さんが謝るようなことは一切ない‼」

「そうです!むしろ、俺がここに来なければ、この様なことは起こらなかったと思います‼ むしろ俺が悪い―――」

「いいや、私が―――」

「いいや、僕が―――」


――10分――



「ハァ、ハァ―――」

「ゼェ、ゼェ―――」

「ハァ、ハァ・・・もぅ、ムリ――」


お互いに言い合い過ぎて喋り疲れてしまった。


「とにかく、ハァ、明日から、ハァ、訓練を開始とゆうことで・・・」

「わ、わかりました・・・」

「ふ、2人とも訓練、が、頑張って・・・」



息を整え、明日の事を話し合う。


「明日からは、ここの部屋を使うといいよ」


砕さんがそう言うと、壁に沿って歩き出し、魔力を注ぎ始める。

すると、ガコンっと音が鳴り、岩だった場所が開き始め、広い空間が現れた。


「す、すごい・・・」

俺は驚いていると、横から豪鬼さんが話しかけてきた。


「明日、ここに来たら、紅林さんが私に連絡してくれるように話は付いているから、この部屋を開け、待っているように!」

「わかりました!」

「それと、課題を1つクリアしてから、ここに来るように!」

「課題ですか?」

「そうだっ!課題はここまでに来る間に、モンスターを100匹倒してから来るように!」

「100匹ですか?わかりました」


今日だけで、200匹以上は倒したはず。

2~3時間あればクリア出来るはずだ。

午前中に終わらせるためにも、9時前位にはゲートに入ろう。


「すいません・・・そろそろ帰ろうかと思います。今日は本当にありがとうございました。明日からよろしくお願いします」

「うむ!こちらこそ‼また明日‼」

「うん!君が今日ここに来てくれて助かったよ~また明日」


2人に一礼し、帰ろうかと思ったその時、俺は重大な事に気付く。


「あ、あの・・・確かこの部屋って出るには、その・・・豪鬼さんか、砕さんを倒さないと扉って開きませんよね?」


そう言うと、2人はそうだったと言わんばかりの形相になっていた


「ま、まさか・・・他に方法が無いってことですか⁉」


最悪だ・・・2人の事を知った上で、戦うのなんて無理だ・・・つか、俺もそうだが、なぜ2人は帰る間際まで気付かなかったのだろうか?


「ってのは冗談で、ちゃんと他に扉を開ける方法はあるから、心配しなくて大丈夫だよ」

「あ、あるんですね⁉よかった~!ん?ならなぜ、2人はあのようなリアクションを?」

「そりゃ~―――」

「雅人君の驚いた顔を見たかったからさ~へへ!」

「ドッキリ大成功ですな!はぁっははは!」


2人はイエ~イと言いながらハイタッチしている。

俺は拳を握り、攻撃する仕草を取る。


「わ、悪かった!ほら、紅林さんも謝って‼」

「ご、ごめんねっ!もうふざけた事しないから‼」


2人がそう言うと、俺は下を向く。


「ふ・・・ぅぅぅ・・・」

「ま、雅人殿・・・だ、大丈夫か?」

「ま、雅人君、本当にごめんね?まさか泣くほどとは・・・」


「・・・ふ・・・ふふ・・・あ~はっはっはぁ‼」

「「えっ⁉」」


2人は、急に俺が笑い出した事に対して、目を大きく見開き、驚いている。


「ははは!すいません、冗談です!2人がドッキリ仕掛けてきたから、仕返しです!」

俺は笑いながら、2人を見ると、2人とも頬を膨らませて、こちらを睨んでいる


「雅人殿も人が悪い・・・やれやれ」

「雅人君、演技が上手だね~おじさんビックリだ!あはは」

「2人には負けますよ~」


お互いにふざけ合ったところで、砕さんが手をかざす。

手をかざした先が歪み、歪んだ先に手を入れた。

すると、砕さんは歪んだ所から手を引くと、リモコンみたいな物が出てきた。


「はい、それじゃ、扉を開くからね」


リモコンを扉がある方に向けると、ピッと音が鳴る


「扉が開いたよ~!今なら扉の外に人は居ないから、今がチャンスだよ」


リモコンで開けるんだ・・・


俺が呆けていると、豪鬼さんが俺の肩をポンと叩く。


「気を付けて帰るんだぞ」


そう言った、豪鬼さんの目はとても優しい目をしていた。


「はい!それではまた明日」


俺はそう言って、駆け足で帰って行った。

ちなみに、帰りの道中は、モンスターを倒しながら帰りました。

俺はその後、ホテルに戻り、シャワーを浴び、ベッドの上で横になる


「さて、今日の成果を確認しますかっ!」


ステータスオープンと言い、目の前に画面が現れる。


九瀏 雅人 Lv.6


体力:45

魔力:36

筋力:41

俊敏性:35

命中率:89%

回避率:61%

運:25

属性:雷 Lv.1


スキル

【仮面武装】Lv.1 ・ 【擬似脳導並行処理能力】Lv.1 ・ 【※※※※】


よし!

着実に成長している。

そして、着目する点は1つ!

目にしたのが、今までになかった項目。

属性である。


「これは、以前まで無かった項目だ・・・雷?」


なぜ、雷?




あっ、思い出した!


「たしか、帰りに、黄色いスライムが現れたんだけど、他のスライム同様、デコピンで倒していたら、一瞬だけビリッて来たんだよな~!まさかあのスライムのおかげかな?」


でもそれだけで属性が付くもんなのか?


『稀に受けた攻撃により目覚める事もあるようですよ。ですが、今はやめといた方がいいですよ』

「あ、エマさん!てっきり寝ているのかと思ってましたよ」

『寝ていません!あれからずっと起きていました』

「じゃぁなんで話しかけてこなかったんだい?」

『この出会いは雅人を強くしてくれると思ったので、口を出さずにいました』

「豪鬼さんの事かい?」

『はい』

「エマから見た豪鬼さんの評価は?」

『まちがいなくファーストクラスの強さを持っています!それに、あの勇さんという男も力を隠し持っていました』

「えっ⁉マジっすか⁉」

『大マジです!もし戦闘になっていたら今頃ここにはいませんよ』

「うわっ⁉聞きたくなかった!」

『あのゲートはただのゲートではありません!』

「えっ、どういうこと?」

『あのゲートはゲートであってゲートではないという事です!』

「意味が分からん!」

『あのゲートは誰かによって作られたゲートだという事です』

「ゲートって作れる物なのかよ⁉」

『はい!あのゲートは人が多く入る事により、人が発している喜怒哀楽を糧に莫大な力を吸収しています』

「人体には影響はないのか?」

『はい!人体に影響が出る様なら、私が止めています』

「そりゃそうですよね・・・」

『その力をどのように使っているのかは不明ですが、私が気になったのが3つあります!』

「気になった・・・こと?」

『はい!まずはは豪鬼さん、砕さんは種族を偽り戦っていたこと!見た目や肌色も偽っています』

「え、そこまで違うの⁉」

『違います!』


う~ん、たしかに疑問に思うのも無理はない。

実はあの幻の戦闘民族・鬼人族でしたって知ったら誰もあそこのゲートには行かないだろう。


『次に、砕さんは突如現れました!あれは別次元からの転送による力が働いていると思われます』

「別次元って事は・・・異世界⁉」

『その可能性は否定はできませんが、それ以上調べようとしたところ邪魔が入りました』

「邪魔だって?」

『はい。最後に・・・私が調べている事に気付いた者が私に警告文を送ってきました・・・詮索はするな・・・と』

「なにそれ⁉めちゃくちゃ怖いじゃん⁉つか、エマの存在に気付いたのかよ⁉それよりも明日行きますとか言っちゃったけど大丈夫かな?」

『大丈夫でしょう!警告文にはまだ続きがあります。「詮索を止めれば訓練に参加してもいいよ~」っと・・・』

「最後の語尾が怖さを和らげてはくれるけどさ!もう誰か分かったじゃん!」

『はい・・・おそらく砕さんが言っていた管理者でしょう・・・私はそれは無理だけど、訓練に参加させてくれませんかとお願いしました。そしたら「しょ~がないな~!あとでお話の機会を設けるから、その時まで待てない?」っときましたので、「承知しました。ぜひお願いします」と返答をしたところ・・・』

「譲らなかったんだな・・・それで・・・?」

『「OK!もうちょっと待っててね!今繁忙期だから、これを凌いだら連絡するね」っときました』

「繁忙期ってなんだよっ⁉」

『おそらく砕さんが言っていた給料、家族、何度もやられてもやりがいがある仕事!これを総合して出た答えが・・・』

「答えは?」

『福利厚生は良いのかと!』

「めっちゃ優良企業じゃん!ってそうゆう事じゃなくて⁉」」

「冗談ですが、冗談ではありません!これは働いていくためには大事な事です!話を戻しますが、ゲートに人を呼び、生命力を何かしらの力でお金に変換、もしくはちがう何かで商売をしているのではないかと思われます』

「ゲートで商売・・・じゃ、じゃぁ他のゲートもその可能性は―――」

『いえ、可能性として低いとは思いますが、今現状はあそこだけでしか分かりません・・・しかし、それ以上調べようとしましたが、シャットアウトされてしまいました・・・現状、私のレベルではこれが限界でした』

「なるほど・・・この仕組みを知っている人はいると思うかい?」

『少なくともいると考えた方がよろしいかと』

「知りたくはなかった・・・」

『仕方がありませんよ・・・遅かれ早かれ、あちらからコンタクトを取ってきたでしょうし、早いに越したことはないかと!それに・・・』

「それに?」

『幻の戦闘民族、鬼人族たちとの訓練は雅人に大きな利益を生むと思われます!』

「あぁ・・・それは俺も考えてた」

『雅人に足りない物は色々ありますが、まずは闘い方を教えてくれる師が必要でしょう』

「実戦経験を積めって事だな」

『その他にも盗める者はとことん盗み倒してください!こんな機会を逃したら後で後悔しますから』

「言われなくても!」

『その勢いやよし!ですが、私から禁止令がございます』

「禁止令・・・ですか?」

『はい。それは・・・』

「それは・・・?」

『アムスティールは使わず、訓練に参加して下さい!』

「え、そのつもりだけど」

『・・・はい?』

「いや、だからアムスティールは使わないって」

『なぜです?』

「いやいや、使うなっていったのはエマだろうが⁉」

『てっきり使う者かと』

「エマが言っていただろ!俺自身の地の力を鍛える事で、アムスティールは更に強くなるって!」

『覚えてらっしゃったのですね』

「つい最近の事まで忘れるほど、老いぼれてはいねぇよ!」

『ふふふ』

「な、なんだよ急に笑い出して」

『いいえ、なんでもありません!私は少々調べる事がありますので、話しかけても答えませんから・・・この後、くれぐれも余計な事をせず、体を休めて下さいね』

「な、なんのことでしょうか?」


「本当に答えなくなった!ったく」


俺はガチャガチャにこんがらがった頭を整理するため目を閉じて深呼吸をする。

今は色々と考え込んでもしょうがない。


「スゥ―――ハァ―――」


深呼吸をし、そして、カッと目を見開く!


「なら!」


属性が付いたんだ!

やはり試したくなるのが男の性ってもんでしょう!


俺は人差し指を出し、意識を集中させる。


――バチッ――


「うおっ⁉で、出たっ!」


指先から、小さい火花が散ったのである。

初めて魔法を使った!


「面白いな!ちょっとずつ強く・・・」


――バチンッ――


「よしっ、いいぞ!」


俺は意識を集中し、目の前の何もない空間に、魔法を放つ。


――バチーンッ――


「やった!さっきより大きな雷を出せた!よし、次・・・は―――」


先ほどよりも大きな雷を出そうとした瞬間、俺の意識は闇へと落ちたのであった・・・



『言いましたよね・・・余計な事をせず、体を休ませる様に言いましたよね?ハァ・・・魔法は魔力調整をしっかりと行わないと、すぐに魔力が枯渇してしまいます。枯渇すると最悪死んでしまいます!そうなる前に意識をブラックアウトしました・・・調子こくからですよ!反省してください!』



「すいません・・・」


俺は夢の中でエマにこっぴどく怒られました。

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