銀世界

俺はあの後、ゲートには行かず、ホテルに直行した。


今日の事で色々と思うことがありすぎて疲れてしまったからだ。


「まさか、自分自身の力がこれ程とは思わなかった・・・」


老朽化していたとしてもだ・・・

あの力はヤバい。

あのままゲートに直行していたらヤバかった。

下手したら近くに人がいたらケガですまなかっただろうな。


「これからは気をつけて行動に移さないと」


でも・・・


「この力を制御できるんだろうか・・・」


俺が頭を悩ませていると突然頭がクラクラし始める。


「な、なん・・・だ?頭が・・・」


そうして俺は意識を失った。








「・・・き・・て・・・」


う・・・ん?

声が聞こえる?


「う~ん・・・」

「起きてください!」


バシッ


「あいたっ⁉」


頬を誰かに叩かれた?


「はっ⁉な、なんだここは⁉」


俺は目を覚ますと、先程までホテルのベッドの上にいたのに、辺り一面、銀白の世界にいた。


「な、なんだここは⁉」

「やっと目を覚まされましたか?」

「えっ⁉」


背後から声が聞こえ、振り返ると、そこに居たのは銀髪の髪色をした、瞳がエメラルド色

の美少女が立っていた。


「ぐはっ⁉輝き過ぎて直視できない!」

「それでは話ができませんね・・・これならどうでしょうか?」


輝きが納まっていく。


「えっ・・・調整ができるんですか?」

「最初のインパクトが大事ですから!それぐらいは簡単です」

「さ、最初のインパクト?」

「そんな事はどうでもいいので、本題に入ってもよろしいでしょうか?」


冷たい眼差しが俺を突き刺す。


「は、はい!お願いします!」


少女は人差し指を上に振ると、俺の目の前に長椅子が現れる


「お座りになってください」

「あ、失礼します」


これ夢だよな?


「安心なさって下さい・・・これは夢です」

「そうそう、これは夢・・・ゆ・・め・・・」


なんで俺が思っている事を分かったんだ⁉


「なんであなたの考えている事が分かったのか、今からお伝え致します」

「な、なんなんだ・・・君は・・・一体・・・?」

「私は擬似脳導並行処理能力ブレインです。あなたをサポートするためのスキルの1つです」

「ブレイン?スキルの1つ?」

「はい。先ほど私が言っている事を繰り返していますが、理解されてはいないようですね?」

「そ、そりゃ、すぐにこの状況を理解しろって言うのはさすがに・・・」

「なるほど・・・では、今日起きた事で、私は既にあなたをサポート、フォローいたしました」

「今日?」

「はい」

「今日の?」

「橋を壊しましたよね?」

「それを知ってらっしゃるんですか?」

「はい」

「終わった・・・」

「何を心配してらっしゃるのですか?私はあなたのスキル!あなたをサポートするのが私の仕事です。あなたを脅かす事は私はしません」

「あ、ありがとうございます」

「あの橋は老朽化が進み、どの道、撤去する予定だった物です。ですから御心配には及びません。ぶっちゃけ業者が資金を渋っていたため、撤去するのが遅れていたのが原因ですから」

「そ、そこまでの情報を何故知っているんだい?」

「私はあらゆる世界のあらゆる情報、分析、より良い選択を瞬時に導き出す事が可能です」

「マジっすか⁉」

「マジっす」


彼女の表情は変わらないが、腕を腰に当て、胸を張る。

そこまで聞いてふと頭に着地の事が浮かぶ。


「もしかして、高く跳び過ぎてバランスを崩していた俺の体を―――」

「修正し、体に負担の無いように着地を施しました」

「マジっすか⁉」

「マジっす」

「君はまさか―――」

「あなたの余分な動作などを瞬時に省き、より良いパフォーマンスができるようサポートもできます」

「じゃ、じゃあ何で俺は橋の支柱にぶつかったの?」

「私はその橋の支柱にぶつかった際の衝撃により、私にかけられた足枷を壊すことにより起動する事ができたのです。その前の間抜けな動作に関しましては、私が起動前だったため修正できませんでした」

「そ、そうだったんだ」

「本来は様々な過程を経て、私は起動するはずでしたが、まぁ・・・その全ての過程を壊す程の衝撃のおかげで、私は今あなたとこうやって話すことが可能になりました」

「い、いや、そう言われると、俺がマヌケ過ぎて申し訳ないというか・・・」

「まぁ、間抜けなのは確かなので、訂正はできません」

「で、ですよね~」

「が!私が起動したからには、あなたがやりたい事を、思う存分やってください!」


彼女は俺の顔付近に自身の顔を近づける。


「それが私の仕事なので!」

「は、はい!わかりました!よ、よろしくお願いします」

「承りました」


そして彼女は椅子から立ち上がり、俺の所に来る。


「どうしたんだい?」

「私に名前を付けてください」

「名前?ブレインじゃないの?」

「誰が好き好んでスキル名を私の名前にしますか?私の姿を見てもう一度ブレインと言ってみてください?私女の子ですよ!」

「お、おっしゃる通りです!でも、俺が名前を付けちゃっていいのかい?」

「あなたは私のマスターですので、その権限はあなたにあります」

「な、なるほど・・・女の子・・・女の子・・・」


名前を付けた事がない俺に、こんなかわいい子のネーミングセンスは俺にはないぞ・・・

だが、確かに、女の子にブレインって名前はかわいそうだ。

俺は目を瞑り、しばし考え込む・・・




「エマ」

「えっ⁉」


「君の名前はエマだ!」

「エマ・・・ですか?」

「うん!エマって言葉には宇宙や多才、博識って意味があるってゆうのを前に聞いた事があってさ!まさに君にピッタリかなって!」


俺がそう言うと、彼女は俯いてしまい、表情が分からない。

気に入ってくれないかな・・・?


「エマ・・・私はエマ・・・へへへ」

「気に入ってもらえた・・・かな?」


俺が恐る恐る聞いてみる。


「まぁいいでしょう!私は今からエマです!改めまして、マスター!私はエマ!あらゆる世界のあらゆる情報、分析、より良い選択を瞬時に導き出し、マスターをサポートいたします!マスターがやりたい事を、全力でバックアップいたしますので、思う存分やりたい事をやっちゃって下さい!」


彼女がまた急に輝き出した。


「よ、よろしく、エマ!あと、俺の事はマスターではなく雅人と呼んでくれるかい?俺マスターって呼ばれるほど大した奴ではないからさ」

「マスターはマスターなのですが・・・まぁ、マスターの言う事ですから~、仕方がありませんね・・・」


なぜだかエマの顔がほのかに赤い気がする。


「ウオッホン!それでは雅人!これからどうぞよろしくお願いしますね」



エマと俺は強く握手を交わしたのであった。

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