衝撃
翌日、俺は退院した事を、父と母に電話で伝えるとメチャクチャ怒られました。
「何をやってるのアンタわっ⁉」
「そうだ⁉お母さんの言う通りだ‼」
「いや、先生とも話をしたけど、どこも異常はないみたいだし、入院代も勿体ないからさ」
「勿体ないとかの話じゃないんだよ⁉」
「そうだそうだ‼お母さんの言う通りだぞっ‼お前は1年間も昏睡状態だったんだ!それをお前3日で退院とか、何かあってからじゃ遅いんだぞ⁉」
2人は俺の事を心配してくれているのが身に染みて分かる。
俺はほんっとに親不孝者だ・・・
「2人とも・・・俺は大丈夫だから心配・・・いや、もう心配させない様にするからさ。だから、もうちょっとだけ待っててくれよ」
「バカヤロ―――!!」
父さんが怒鳴る。
「俺はお前の親だ!親が息子の心配をするのが当たり前だ‼何が悪い!」
「お父さん・・・」
電話越しから母の心配そうな声が聞こえる。
「お前は俺の息子だ!お前なりに考えて行動を起こしたんだろう。俺も昔はそうだった・・・だから、その事について、咎める事はしない。だけどな、子どもが親に気を使うな!お前がやりたいと思ったことを全力でやれ!父さんと母さんは大丈夫だから」
俺は目頭が熱くなるのを感じ、必死に堪える。
「だから、お前がやりたい事をやれ‼」
「うん・・・うん・・・ありがとう」
「雅人、何か辛い事があれば、いつでも戻ってきていいんだからね!辛くて耐えられない事があったら、我慢せず、逃げてもいいんだから。アンタは今まで、苦しくて、キツくても負けず、立ち向かって頑張ってきたんだから。逃げたって、誰にも文句なんか言わせないんだから、お母さんが‼」
「ははは・・・分かったよ、ありがとう」
「ちゃんと顔を見せに来いよ」
「うん、近い内に顔を出すよ」
「絶対よ!」
「うん、約束する・・・それじゃまた」
そう言い、携帯電話を切る。
両頬を2・3回パシパシ叩く!
「よしっ!いっちょ、やりますか―――っ‼」
俺は病院から預かっていてもらっていた装備や、アイテムを取りに行き、チェックをする。
「まぁ、ほとんど大した物はないんだけどね・・・」
けど、これだけは別だ。
「あったあった・・・壊れてなくてよかった」
俺はネックレスを手に取る。
このネックレスは祖父と祖母がくれた物で、今ではこのネックレスは俺のお守りである。
「さて、ネックレスも回収できたことだし、早速行きますか!」
俺はこの近くにあるゲートに向かう・・・が、その前に、スキルの確認をするために、誰もいない場所に移動した。
俺は人気のない河川敷に移動し、軽く体をほぐす。
「さて・・・と、それでは確認しますか?」
俺のスキル、仮面武装を確かめてみる。
このスキルによっては、今後の方針が変わってくる。
俺は意を決して、画面にあった言葉を唱える。
「アム・スティール!」
そう唱えた瞬間、俺の体が眩く輝き始める。
俺は眩しくて目を強く瞑る。
数秒が経ち、輝きも落ち着いてくる。
目を少しずつだが開けていく。
まだ視界がボヤけている。
「うん?なんだ・・・これ?」
段々と視界が合ってくると、変な違和感を感じたので、手で顔を触ってみる。
ガシャッ
っと音を立て、触った感触がない。
すると俺の視界に銀色に輝く手甲が現れる。
「これは・・・俺の腕か?」
思わず手をにぎにぎと握ってみる。
「うん!俺の思った通りに手は動いている」
手の次に胴体、下半身と見ていく。
「これは鎧なのか?」
俺は河に移る自分を見つけ、近づく。
「これが・・・俺?」
水面に移る俺の姿は、銀色に輝く鎧を纏った男が立っていた。
水面に移る自分を見つめていると、目の前にスズメバチが迫ってきた。
「うおっ⁉」
俺は思わずスズメバチを払いのける。
バシュッ
スズメバチは一瞬で爆散する。
だがそれだけではなかった。
ドバアアアアアアアア―――――
「な、なんだ⁉」
スズメバチを払いのけた後の事だ!
突然水面が弾け跳んだのである!
「な、なんなんだ、今のは⁉」
スズメバチを払いのけるとスズメバチは爆散し、それと同時に水面が弾け飛んだ!
「ま、まさか・・・風圧?今の力はこれのせいなのか?」
自分の手をもう一度確認する。
そして俺はもう一度、スズメバチを払いのけた様に、水面に向け腕を振る。
ドバアアアアアアアア―――――
先ほどと同じ事が起こったのだ。
「ぐ、偶然じゃなかったのか⁉」
握りこぶしを作り、河川敷に向こう側に向け、右ストレートを撃つ。
シュッと空気を切る音。
ドゴオオオ―――ン!
と同時に地響きが起こり、向こう側にある河川敷の斜面にデカい窪みができたのだ。
「う、うそだろ⁉」
今の音で人が来るかもしれない。
そう思い、後ろを振り向いた瞬間―――
ドガッ
何かにぶつかる。
そして、いつの間にか空を向く形で、仰向けになっている俺・・・
「な、何が起こったんだ⁉う、うそだろ⁉」
上半身を起こし、周囲を見渡したところ、本日2回目のうそだろが出てしまった。
先ほどまで河の近くにいたのに、今俺がいる場所は50m後方にあった老朽化して使用されていない橋の支柱の下にいるのだ。
おまけに、何かにぶつかったと思っていたのは、橋の支柱で、ぶつかったであろう後も残っている。
ちなみに橋の上には人はおろか、動物もいないので安心して下さい。
「俺は今、あそこにいて、急いで後ろを振り向いた瞬間ここに移動した・・・のか?しかも、コンクリートにぶつかったのにも関わらず、痛みはおろか、どこもケガはしていない!逆にぶつかった支柱にダメージが・・・」
ビキビキ―――
橋から嫌な音が聞こえてきた
「や、やばい⁉崩れる」
このままでは瓦礫の下敷きになってしまう。
そう思った瞬間、俺はその場から逃げるために、足に力を込めた瞬間―――
「う、うそだろぉぉぉぉぉおおおお⁉」
俺は空高く舞い上がっていたのだ。
地面から数十メートルは跳んでいる。
跳んでいるのは分かった。
だが、問題は跳んでからのあとだ!
「着地はどうすればいいんだよおおおおおお⁉」
地面が段々と近づいて来る。
だがその前に、団地の屋上に墜落する事になりそうだ。
俺は死を覚悟した。
静かに目を瞑る。
目覚めて早々死ぬとか間抜けにも程がある。
父さん、母さん、弟達よ。
こんな間抜けな兄を許してくれ・・・
そう思っていたら目の前に団地の屋上が2mもない付近に近づいていた。
「さようなら・・・」
そう一言を呟く俺・・・
そして―――
スタッ
静かに着地することに成功したのであった。
しかもヒーロー着地。
「マジかよ・・・」
衝撃もなく、痛みもなく、着地に成功した。
「あんなに高く跳んだのに・・・体が勝手に・・・」
この仮面武装はまだ調べてみないと分からない事だらけだが、この短時間ですごい事が分かった。
「ゲートに潜るのは明日にして、今日は協会が斡旋しているホテルに泊まろう」
ただ、今日は色々な事が起こり過ぎて疲れた・・・
「あっ⁉橋⁉」
橋は崩れていない
「よかったぁ~」
そう言った瞬間―――
ドガァァァァァ―――
老朽化した橋は一気に崩れ去ってしまった・・・
「・・・うん!あの橋は老朽化していたし、いつ壊れてもおかしくはなかった!」
俺はそう自分に言い聞かせ、ホテルへと直行した。
後日、ニュースで橋が倒壊したと報道されたが、老朽化にあたり、倒壊したのだろうとニュースキャスターが言っていた。
ケガ人もいないとも言っていたよ。
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