第2話 摸擬戦と金髪ツンデレ爆乳お嬢様
そこは対インベーダーの前線基地「ゼセウス」。
俺とイグニスは早速、練度を確かめるためにそこの施設の一つ「アリーナ」に来ていた。
「ここで摸擬戦か、まあいきなり実戦投入でも構わなかったけどな!」
「流石です!」
「……」
目をキラキラと輝かせてこちらを見つめるイグニス。
その姿は傍から見たら女の子にしか見えない。
少し腕を触る。
「……意外と筋肉あるな」
「あ、当たり前です! これでも軍人ですから!」
まあ、洋上学園の卒業生なのだから、それはそうだろう。あの地獄のような特訓メニューをこなしてきたのは一緒なのだから。
「さあて、お相手は誰かな――って!」
そこに居たのは金髪で灼眼でその上おっぱいがデカい!! 金髪縦ロールのいかにもお嬢様みたいな感じの女子!! となんか冴えないメカクレ男子。
「見ろイグニス! おっぱい!!」
「は!?」
「いきなり人を指さして何言ってるんですのこの変態!?」
「ぶげらっ!?」
思いっきりビンタを喰らった。
当たり前か。
俺は努めて冷静に対応する。
「失礼レディ、俺の中の内なる獣が暴走してしまった。あなたの美しさには自制も利かないというもの……」
「あら、意外と紳士ですのね。目は死んだ魚のようですけれど」
「……」
そんなに俺の瞳は生気を失っているのだろうか……もっとギラギラした視線だと思うのだが。
「あ、あのマールーシアさん、そろそろお時間です」
「そうですわね、ミータ、あなたがコントローラーなのです、戦うのはあなた。しゃきっとなさい?」
「は、はい!」
「この摸擬戦に勝ったら……その……ご褒美を用意して……」
「えっ?」
「な、なんでもありませんわ! さ! 行きますわよ!」
……なんだ今の。
「仲良い二人でしたねー」
イグニスがのんきな声を出す。俺は怒りに打ち震えていた。
「勝つぞ、イグニス」
「えっ? あっはい」
「ご褒美なんて絶対、絶対に渡さねぇ!!」
「イルク……? まあ、やる気になってくれたなら……?」
パイロットスーツに着替えるために更衣室に向かう。
ついてくるイグニス。
「ん? なんでお前、
「はい?」
「あっ……」
見た目がほぼ女の子だから忘れていたが、イグニスは男だった。
ちなみに着替え中ちらちら身体つきを確認してみたのだが、意外と引き締まっており、くびれもあり、そして、アレもちゃんとついていた。畜生!! ワンチャン実は女の子説が消えた!!
「というかなんでこんなだたっぴろい更衣室の中で二人並んで着替えてるんだよ」
「あっ、ごめんなさい。傍に居たくて」
「きゅん……じゃなくて、そんなんで俺がデレると思ったら大間違いだぞ!」
「デレ……?」
パイロットスーツに着替え終わると、いよいよ人型戦術機体「アクエリアス」に乗り込む。
俺らが乗り込む機体は「マンドリカルドス」、叙事詩社が開発した「ヘクトールス」シリーズの最新鋭機である。装備は肩部レーザーキャノン、腕部マシンガン、脚部ブースター、背部ブースター、コックピットは胸部。マニュピレーターで武器を持つ事によって追加装備も可能である。今回はサブマシンガンを選択する。
「相手のバリアフィールドを削り切ったら勝ち、だっけか?」
「そうです。バリアフィールドが無くなったら自動的に装備にロックがかかる安全仕様になってます」
アクエリアスには標準でバリアフィールドが備わっており、それはインベーダーでも容易には引き剥がす事は出来ない。それこそアードランド博士の最高傑作であり、それ以外の男女ペアでしか乗れないだとか『何故か』美男美女ばかりパイロットに選ばれるだとか、そういう変態要素はその功績でひた隠しにされている。世間は功績しか知らず、選民思想じみたパイロットの選出方法に疑問を呈す者はいない。
機体に乗り込む。複座式で俺が後部、イグニスが前部。座席に座る。後ろから見るイグニスの姿は女の子にしか見えなくて。くびれとかあるし、髪さらさらだし。なんかいい匂いするし。
「もう既に絆されかけている……!?」
「なにかいいましたー?」
「い、いや、いくぞ! 起動、頼む!」
「はい! マンドリカルドス、イグニッション! ユーハブコントロール!」
「アイハブコントロール!」
格納庫からアリーナへとブースターを吹かして飛び出した。調子は絶好調だ。
相手の機体は――
「げぇっ!? 「リ・アテナ」!?」
リ・アテナ、とは神話社の最新鋭機である。アードランド博士の設計思想を取り込み独自の形に進化させた異形。追加のバリアフィールドを張る大盾が特徴だ。
「バリアフィールド、簡単に削り切らせてはくれなさそうですね」
「……気ぃ引き締めろイグニス。全弾使い切っても削り切る」
戦闘開始のサイレンが鳴り響いたのだった。
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