第7話 ママの仕事

あくる日、朝食はまたしても

豪華だった。サリーの母親は、

仕事前に、張り切って

ミートパイを作り、サリーに

喜んでもらおうとサリーを起こしに部屋へと向かうと、



サリーは、ある分厚い本を

見ながら、ぶつぶつと独り言を

話していた。


母親のサラは、そんな姿のサリーをにこやかに眺めながら


コンコンッ……と半開きの扉をノックすると


サリーは、とても目を真ん丸くして驚いていた。


『……ママ、何か見た?』


『サリーが独り言を言ってた所だけよ?』


『…………ママ、私……。』


『なぁに?サリー。』


『ううん!!何でもない!

今日の、朝食は何?』


『ミートパイよ?さぁさ。食べにいらっしゃいな?』


『うん!!お腹いっぱい食べる!』


サリーは、エルフが閉じ込められていた分厚い本を、慌てて

閉じると朝食を食べてくるね?



と……本に向かって、ひそひそと話しかけた。


エルフが、本の中に隠れていたのだ。

サリーと、エルフは


母親が居るときは、本の中に

エルフが隠れて、



サラが居ない時は、バラの家で

2人で遊んでいた。


バラの家は、大人のサラには

見えないのだ。


それが、なぜなのか?

サリーには分からなかった。



エルフは、サリーの口が固く

誠実である性格の為に……


すっかりと、気を許していた。



エルフは、いつしか抱えた不安な気持ちを捨てて、


サリーを友達以上の気持ちに

なりつつあることを



いつかきっと、サリーに

伝えなければ……と考えていた。



妖精が、人間に恋する。という事は、


その事実を隠し通さなければ

ならないのだが。



エルフは、サリーと永遠に

仲良くして居たい。と


強く願っていたのであった。



そして、サリーはサリーで、

エルフの事を、初めて出来た


と考えていたことを、いつかエルフに伝えたい。と思いながら




アツアツのミートパイを

サリーは、口いっぱいにほおばり


エルフにも、ミートパイ食べて欲しいな。



と、ぼんやりと思案していた。



(エルフは、薔薇の蜜しか飲めないのかしら?ミートパイを一緒に食べられたらなぁ。)



と、ママのサラが笑ってしまうほどに、サリーは


心ここにあらず。




という状態であった。

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