第4話 とっておきの場所

サリーにとっては、場所。


それは……薔薇が咲き乱れる夜景を一望出来る高台であった。


ここの高台は、サリーにとっては遊び場所であり、

非日常的な幻想的な空間だった。


夜になれば、フクロウが鳴き、

そしてすず虫達が大合唱をする。



鼻からは甘い薔薇の香りがしてとても、サリーは気分が良くなるのだった。



(エルフには、どの薔薇が良いかな?)


エルフが言っていた

千年に一度咲く夜露に濡れた薔薇の蜜を、サリーは探し始めた。



そんな時……一際甘い香りが漂う一輪の薔薇を、サリーは見つけた。


サリーはその一輪の薔薇を見た瞬間に……思わず息をのんだ。



(うわぁーー素敵!!!何これ?)


サリーが見た、千年に一度の薔薇の花は、紫色をしていた。


サリーはしばらくの間、

その紫色の薔薇を見つめていた。


そして、思わず。



(欲しいなぁ。とっても綺麗。

お母さんにも、持って帰りたい!

いいかな?……)



サリーはまず、エルフの為に

夜露に濡れた蜜を採取し始めた。


黄金に光る蜜は、まるで

生き物という生き物たち、全てに幸運を呼ぶ様な美しさだった。



サリーは、蜜を採取しながらも

ドキドキワクワクが

止まらなかった。



(うわぁ、エルフがよろこぶねっ?お母さんの分も、持って行きたいな?そしたら。

お母さんの体が良くなるかな?)



サリーは息を潜めて、その一輪の紫色の薔薇を




と、折って……慌てて持ち帰ろうとすると、薔薇の花が

枯れそうになった。





(どうしよう。どうしよう!)


サリーは折った薔薇の花を

慌てて持ち帰った。



薔薇の蜜も、エルフの為に、

こぼさないようにしながらも


サリーは息が上がるほどに思い切り走り続けた。



そんな道中、足がつまづきそうになったこともあったが


エルフとお母さんの為に

サリーは懸命に走り続けた。





ようやく自分のみずぼらしい家に着くと、エルフが居なかった。



サリーが探していると……

母親の部屋には、やたらとまぶしい光りが放っていた。


サリーは気づく。



(エルフがお母さんの様子を見に行ったんだ!)


母親の部屋にサリーが入っていくと、エルフは


サリーのお母さんの額に手を当てて治療をしていた。



エルフの手からは、不思議な力が働いているのだ。



それを蜜と紫色の薔薇を一輪持ちながら、サリーは見つめていた。



エルフの額からは、汗がにじみ出ていた。

渾身の力を込めて、サリーの母親にヒーリング効果のある光りを

あてていた。



それから、エルフは呪文めいたモノを唱えていた。



エルフが力を出し切って、疲れ果てていると、サリーの存在に

気が付いた。



『やぁ、サリー……お母さんを

治療したからねっ!もう大丈夫だよ!あぁ疲れたよ。花の蜜は

とれたかい?』


サリーは信じがたい光景に、少し驚き……エルフに小瓶に詰めた

花の蜜を差し出した。




『ありがとう。サリー……。』

エルフは、花の蜜を受けとると


大切そうに、クピクピと飲み始めた。



千年の薔薇の蜜は、エルフにとってはご馳走なのだ。



あぁ…………幸せだよ。と

言いたそうにエルフは笑顔をサリーに向ける。




エルフは、ふわっと空を舞うと

『サリー……君は僕の恩人だ!

お母さんは、明日には回復する。


今から空を一緒に駈け巡らないか?』





エルフは、サリーの手をとると

二人で星空へと


高く……高く



飛びたったのであった。







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