第3話 魔本との出会い

サリーは、しばらく放心状態だった。

今起こっている現実に頭が混乱していた。



(とりあえず……助けなきゃ。)


サリーは物置小屋の天井近くに

無造作に置いてある光り輝く一冊の本を、


どうにかして手元へとおろしてあげなくちゃ!と考えた。



まずは、転がっていた石を投げてみると……

かすりもせずに石ころは落ちてきた。


次にサリーは、ヤギの餌やり用の道具を持ち出すと、


本がある場所へとぶつけてみた。




天井近くから落ちてきた本は

とても分厚かった。


その重厚な造りに、サリーは

感動していた。



『うわぁ、なんだかすごいわ。』

サリーはホコリまみれになりながらも、本に語りかけてみる。



『げほっ。ねぇねぇ、さっきの

声は、あなたなの?』


『…………』


無反応だ。



サリーがその重厚な造りの本の

表紙を、恐る恐るめくると……



突然、物置小屋が一面光に包まれるほどに光り輝いた。


サリーは後ずさりすると

そこには…………



美しい妖精が……立っていた。



『ふぅ、ありがとう。礼を言うよ!僕の名前は、エルフ。

君は確か……サリーだよね?』



エルフと名乗る妖精は、窮屈そうに首をコキコキと鳴らしながら


外の景色を見渡して空気を思いっきり吸っていた。



『はぁ~~ホントにありがとう。

何百年ぶりの外の世界だよ!

サリー。君には礼をしなくちゃね?アハハ。』


サリーは、何が起きたかも理解出来ずに、ただただ

ぼやーっとエルフを見ていた。




エルフは続けた。


『前の持ち主なんてね?ホントにひどい奴さ。僕を閉じ込めたんだから。おかげでひどい目にあったよ!』



『サリー?君のおかげだよ!

僕は数百年ぶりに自由になれたんだから!うれしい!

君の願いを叶える前に、花のしずくを飲ませてくれるかい?』



『は……花のしずくって?』


『え?!花のしずくを知らないのかい?』



『う、うん。』



『じゃあ……僕が教えるね?

花のしずくってのは、千年に一度手に入る薔薇の夜露に濡れた

花の蜜だよ。分かるかい?』



『せ…………千年?!』


『僕が咲いてる場所を教えるから持ってきてくれる?

この小さな小瓶に詰めて。』



エルフは、いつの間にか小さな小瓶を手にしていた。


その小さな小瓶は、キラキラと

輝き、とてつもなく美しかった。



『この小瓶は、割れやすいから気を付けてね!サリー。


花のしずくの場所を教えるね!』




サリーが……美しい小瓶を手に持つと同時に、花のしずくの場所が

脳内に鮮明に映ったのである。



サリーは思わず声をあげた。


『あ!!いつもの場所だ!』



『そう。君にとってはいつもの場所なんだね?よかった。お腹ぺこぺこだよ。サリー。お願いだ。

花のしずくを、この小瓶に入れて持ってきてくれないか?』




サリーは、エルフに元気をたくさん貰えた様子で、



エルフの為なら!……と

走って花のしずくを取りに向かった。






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