第137話 復活⑤
フェリクスと対峙するフィリップに更に通信が入る。
「中佐、後方からの敵部隊の正体がわかりました。奴らラフィン共和国です。
「何故もっと早くに見つけきれなかった!? 観測員は何してやがった!?」
「そ、それは中佐が『どうせ誰も来ない後方なんか気にしても仕方ない、前に集中してろ』と、それに少し前に中佐に呼び掛けましたが『後にしろと』言われまして――」
「うるさい! 俺は最前戦で体張って戦ってるんだ、貴様らで対処しろ」
通信しながら部下に怒鳴りながら指示するフィリップをフェリクス達は冷ややかな目で見つめていた。
「よくあれで中佐までなれたもんだな」
「確か名家の出身だからって噂よ。あと政治的な立ち回りは上手いんでしょ」
呆れた様にフェリクスとセシルが眉根を寄せて話していると、再び睨むフィリップと目が合った。
「もうそろそろ気付いただろ? お前らの陣形は崩れ、ラッカスも含めたら三方から攻められる。今すぐ武装解除して白旗上げるんならお互い無駄な犠牲も出さなくて済むんだかな」
「ふざけるな! ラフィン共和国にも援軍頼みやがって、世界を巻き込んだ国際問題になるぞ」
「お前らが言うなよ、国際問題起こしまくってる張本人が。それにラフィンには頼んでないからな。昔のツレにちょっと助けてくれって頼んだら張り切ってあんなに沢山連れてきたんだ」
そう言ってフェリクスが剣を構えて前傾姿勢を取ると、フィリップは一、二歩下がりたじろいだが右手を上に掲げて炎を灯した。先程までの少し緩んだ雰囲気から真剣な顔つきへと変わったフェリクスがすり足で僅かに前に出る。
並のソルジャーならまだしも、一流のソルジャーと真正面で一体一で対峙してしまうとウィザードは詠唱を唱える時間がなくなる為不利になってしまう。一流のソルジャーと対峙するなら詠唱無しでも強力な魔法を繰り出せる程の一流のウィザードでなければならないのだが、フィリップはそのレベルになかった。故にフィリップは既に動く事が出来ずにいる。ここでフィリップが狙えるのはフェリクスが飛び込んで来た所にカウンターで合わせるしかなかった。
それがわかっていたフェリクスはあえてじっくりと焦らしていく。飛び込まずにジリジリと近付くフェリクスに、フィリップは表情を歪めた。
そんなフィリップを見てフェリクスが突然距離を詰める様に飛び込むと、迎え撃とうとフィリップが慌てて右手を振り下す。しかしその時フィリップの横を風が駆け抜けた。
『
フィリップの右腕は振り下ろされる事なく炎を灯したまま虚しく宙を舞い、その直後にフィリップの横をフェリクスが駆け抜けた。
「が……ぐが……」
一瞬の出来事だったが、フィリップが喉が熱いと思った時には喉元から血が吹き出していた。吹き出す血を止める様に、己の喉元を押さえながらフィリップは自らの血の海の中に倒れ込んだ。
「余計な手出しだった?」
「いや、完璧なタイミングでの援護だったよ」
「それなら良かった。私も一撃ぐらい入れなきゃ気に食わなかったからさ」
フェリクスの横にセシルが立ち、二人で血の海に横たわるフィリップに目を向けると、フィリップが虚ろな目でこちらを見ていた。
「悪いな、俺とセシルのパーティーにお前を呼ぶ予定はないからな」
フェリクスの皮肉が聞こえたかどうかは定かでは無いがその後フィリップは恨めしそうにフェリクスを見つめながら血の海に顔を沈め事切れた。
元々疲弊していた上に司令官を失ったフィリップの部隊は呆気なくフェリクス達に壊滅へと追いやられてしまう。
「武装解除し戦意喪失している者には手を出すな。ラッカスの部隊と連携してやるんだ」
フェリクスが部隊に向けて指示を出していると懐かしい声が飛び込んできた。
「大佐! ザクス大佐! お待ちしていました。元ラフィン共和国第十四独立機動隊、只今参戦致しました。我々は――」
「いや待て待て、少し待て。まず俺は今は大佐じゃない。少し冷静に行こうエルザ。ヴェルザード少佐はどうした?」
「あ、すいません。ああ、あのヴェルザード少佐はたぶん暫く話せないかと。涙が止まらないようです」
通信を聞きながらフェリクスは苦笑いを浮かべていた。その後辺り一帯を制圧したフェリクスはセシルやリオを引き連れヴェルザード達と合流を果たす。
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