第136話 復活④
セシルとユウナ達の狙撃隊からの援護を受け、先陣を切っていたフェリクスが更に加速する。守備を固めようとするフィリップ率いる世界連合軍だったが時間をかけてラッカスを攻め続けさせられた兵士達は疲弊しており、フェリクス達の勢いを止める事は出来ずに一気にフィリップがいる
「敵部隊の一部が
「何をしている!! 前方にいる兵も防衛に回らせろ!」
「しかし前線の兵を回せばラッカスの連中は息を吹き返しかねません。ひとまず勢いを止めれば待機していた兵達だけでも十分守りきれる筈です」
「馬鹿者が! ここが落ちれば意味がないだろうが!!」
部下の進言をあっさり斬って捨てると、フィリップは自ら前衛にいた兵士達に命令を下し、防衛にあたらせた。
そんな中、戦場を分析していた兵士の一人がある事に気付く。
「これはひょっとして……フィリップ中佐、敵前衛に見覚えのある人物がいるように思います」
兵士の言葉に怪訝な表情を見せたフィリップはその兵士の元々へと歩み寄る。
「どういう事だ?」
「これを見て下さい。この風を操っている様な女兵士、セシル・ローリエ少尉に見えませんか?」
そう言って兵士が指さす画面を見て、フィリップの表情はどんどんと険しくなり、不快感をあらわにした。
「間違いないセシルだ……何をしている?……!? 先陣を切って乗り込んで来た奴の画像を出せ!」
画面の中にセシルを確認したフィリップが何かに気付き兵士に指示を出す。兵士は指示に従い必死にカメラを動かし戦場で躍動するフェリクスを捉えた。
「……! やはり貴様か、フェリクス・シーガー」
苦虫を噛み潰したような表情をし、フィリップは司令室を飛び出して行く。慌てて部下が止めようと声を掛けたが、その声がフィリップに届く事は無かった。
フィリップは数名の兵士を引き連れ戦場に飛び出すとフェリクスを探した。戦場を見渡すと、兵士達の叫び声の先にフェリクスを見つける。フィリップは怒りの表情を浮かべたまま、右手に炎を灯すと感情のままにフェリクスに向けて炎を放つ。
放たれた炎は味方兵士も巻き込みながらフェリクスに迫るが、炎に気付いたフェリクスは後方に飛び退き、呆気なく炎を躱してみせた。
「貴様、よくも我が兵士を……」
「今のはお前が炎で焼いたんだろが」
怒りの表情で睨むフィリップに対してフェリクスが呆れた様に呟く。間に幾人もの兵士を挟み対峙する二人だったが二人の心情は全く異なっていた。フェリクスに対して怒り心頭のフィリップはフェリクスを目の敵としており、対するフェリクスはうんざりとした表情を浮かべていた。
「大尉のファンはあちこちにいるようですね。まさか男性にもそんなにモテるなんて」
「俺は別に男にモテても嬉しくもなんともないぞ」
リオが通信を入れて軽口を叩くと、フェリクスも苦笑いを浮かべて返していた。そしてそこに前線に加わってきたセシルも入る。
「へぇ、なんか女にはモテたいみたいね。後でじっくり聞かせてくれる?」
「い、いや違う。その、あれだよ、言葉のあやだ」
慌てて取り繕うフェリクスに対してセシルが笑みを浮かべながら半目でじっとりと見つめていた。
フェリクスの横にいるセシルを見て、フィリップの怒りは更に増す。
「貴様らー!!」
怒りの表情で叫ぶフィリップは、その身を炎で包み込んだ。それを見たフェリクスは軽くため息をつくと、あらためて呆れたような表情を見せる。
「階級からして上の立場だろうに。喜怒哀楽が激し過ぎるんだよ。しかも個人的な感情で」
「知った風な口を聞くなー! 全員であの男を殺れっ!!」
フィリップの号令にやや戸惑いをみせた兵士達だったが、次々に兵士達はフェリクスに襲いかかった。先程までは余裕を見せていたフェリクスだが流石に多勢に無勢、後方に下がりながら敵の攻撃をなんとか捌き続ける。
「フィリップ中佐!」
「うるさい! 後にしろ!!」
部下からの声を制してフィリップは、静かに佇み笑みを見せるセシルを睨む。
「お久しぶりですねフィリップ中佐。あんなに金切り声を上げてどうされました? いつもの余裕は何処に行ったんですか?」
あえて丁寧に語り掛けてくるセシルに、フィリップは不快感を示す。
「貴様、私の元を去った事を後悔させてやるぞセシル」
「ふっ、自分の物にならなかったら手の平返したかのような脅し文句。器が知れるわよ。だいたい貴方の元になんかいたためしないけどね」
セシルが冷たい目をしてそう言い放ち、半身に構えると腰に
フィリップは怒りの形相を浮かべて前傾姿勢を取る。そんな中、フィリップの部下が再び叫ぶ。
「フィリップ中佐ー!」
「なんだうるさい」
「右後方に新たな敵影! 距離二千、いやもう既に千五百まで迫って来ています!」
部下からの報告に驚きの表情でフィリップは振り返る。既に肉眼でも微かに捉えるその軍勢にフィリップは言葉を失う。後方に現れた軍勢は既に長距離射撃を行っており、フィリップの部隊には被害が出始めていた。
「そ、そんな……何処からだ? 何処にあんな軍勢が?」
「ふん、
迫る兵士達を上手く躱しながらフェリクスが再びフィリップの前に立つ。
セシルの横に立つフェリクスを見てフィリップは歯ぎしりをし、怒りの表情は更に強まっていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます