第102話 N.G397年 最終決戦ケセラン・ハルト③
――
「報告します。現在我が部隊の前方にラフィン共和国軍の第十四独立機動隊と思われる部隊が集結しています。どのようになさいますか?」
「ふっ、性懲りも無くまた出て来たか。かまわん蹴散らせ。ただし圧倒的にだ」
兵からの報告に不敵な笑みを浮かべてアイリーン・テイラー中佐が指示を出すと、その佇まいに圧倒されつつ兵はすぐさまアイリーンの言葉を伝達しようとした。
しかし次の瞬間、前方に光が収束していくのを兵が確認する。
「中佐、前方に光源が出現! 防御体勢に入ります」
兵がそう叫ぶと同時にザクスによる
「ふっ、光属性か。珍しいな。守備隊は何をしている? ここは敵地、しかも敵の最終防衛ラインだぞ。次は反応遅れるなよ?」
「も、申し訳ありません。すぐに守備隊には対応させますので――」
「それが遅いと言っている。見てみろ。奴らはもう喉元に噛み付いてきたぞ」
慌てる兵の言葉を遮りアイリーンが微笑みながら外を指差す。そこには既にアイリーンの部隊に取り付き兵達をなぎ倒すザクス達の姿があった。
「ふふふ、なるほど。そうか、第十四独立機動隊はザクス・グルーバーの部隊だったか。どうりで展開が速い訳だ。誰を当てるかな? 久しぶりに私が出てもいいが……」
外の様子を見ながら少し楽しそうにアイリーンが眺めて考えていると横で控えていた男が名乗りを上げる。
「中佐、是非私に行かせてくれませんか? ナンバーズに抜擢していただいたものの、いまいち実績を上げれていません。もう一つぐらい功績を上げたいのです」
「ほほう、末席とはいえ仮にもナンバーズに名を連ねたお前ならいいだろう。ただし相手はあのザクス・グルーバーだ気を抜くなよ」
「はい、お任せ下さい。黒い死神とか言われてますが所詮はソルジャー。軽く捻って来ますよ」
そう言い残し男はアイリーンの元から駆け出して行った。男の名はモーリス・ベッツ。アイリーン直属の部下でありナンバー十六を与えられたナンバーズでもあった。
「よし、では
アイリーンの指示の元、セントラルボーデン軍魔法兵団特別遊撃隊はケセラン・ハルト攻略に向けて出撃しラフィン共和国軍と激しい攻防を繰り広げて行く。
――
「大佐、奴ら次々と出撃して行きます!」
「クソっなんとか止めないとまずいな。クリス援護してくれ、もう一発
アイリーンを筆頭に次々と出撃して行く敵部隊をザクスが阻止すべく、クリス達に指示を出そうとした時不意に氷の弾丸が襲いかかった。
咄嗟に身を
「お前の相手は俺だ、ザクス・グルーバー」
「面倒くさそうなのが出て来やがった。クリスまずはあいつからだ」
ザクスが億劫そうな表情を浮かべ構えるとクリスも横で頷きながら静かに構えた。そんな二人を見つめながらモーリスも右手を前に突き出し尚も不敵な笑みを浮かべている。
両者の間に緊張が張り詰めていく中、ザクスが先に仕掛ける。一気に距離を詰めるべくザクスは駆け出し剣を握り締めた。しかしその瞬間、モーリスは更にニヤリと笑う。
『
モーリスが上に手を掲げてそう唱えた瞬間、ザクスの周りに冷気がまとわりつき急速に気温が下がる。足元が凍りつき始めザクスの動きが鈍っていく。
「あれはまずい……ちょっと! そこの貴方! ウィザードよね? ザクスに向かって火球を放って!!」
少し離れた位置で戦況を見つめていたクリスが慌てて近くで戦っていたラフィン共和国軍兵士に声をかける。
「え? ザクス大佐に? 出来る訳ないだろ!」
「状況見てわからないの? やらなきゃ貴方のせいでザクス大佐は殺られたって報告するからね」
戸惑い拒否する兵士にクリスは激しい口調で畳み掛ける。クリスの剣幕に圧倒された兵士は即座に火球を放つとザクスは炎に包まれた。
「よし、ありがとう」
そう言い残しクリスが一気にザクスの元へと駆け出して行った。
「ザクス!!」
ザクスの近くまで来たクリスが叫び、己の剣の鞘をザクスに伸ばす。クリスの意図を理解したザクスが手を伸ばし鞘を掴むとクリスが一気にザクスごと鞘を振り抜いた。
なんとかモーリスの
「ふぅ、助かったよ。少し熱かったけどな」
「文句言わないでよ、緊急だったんだし仕方ないでしょ。近くに炎系のウィザードがいて良かったわ」
少し言葉を交わし息を整えつつモーリスの方へ目をやるとモーリスは変わらず不敵な笑みを浮かべて佇んでいた。
「どうしたザクス・グルーバー。もうお終いか? 来ないなら私から行こうか」
そう言ってモーリスが一歩踏み出す。ザクスの見立てでは恐らくモーリスを中心に半径五メートル程が
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