第61話 リオとの邂逅②
「えっと……ある
「そうね……とりあえず抱かれてくれる?」
リオが笑顔でそう言い放つと、眉尻を下げて戸惑いながら尋ねていたセシルは引きつった顔を見せた。
「え? じょ、冗談ですよね?」
「ふふふ、冗談よ、ごめんね。ただね、会ってくれた後は任せる。私もどうしたらいいか正解はわからないし、貴女が会ってくれたからって何かが変わるかもわからないし」
困惑しながら尋ねたセシルを尻目にリオは笑ったが、その後リオも困惑の表情を見せていた。
「すいません。話が見えてこないんですが……」
「まぁそうよね……とりあえずその会ってほしい
「えっと……私はその人に会って元気付けたらいいんですか? 私そんな事出来ますかね?」
少し困ったように笑うリオを見て、セシルは無下にも出来ず困惑していた。
「あっ、そんな難しく考えないで、紹介っていうか、とりあえず一回デートしてくれたらいいから。それに相手は不細工って訳じゃないからね。寧ろイケメンな部類に入ると思うから」
「……まぁそれでいいなら引き受けますけど、本当にデートするだけですよ?」
なんとか取り繕おうとするリオを見て、仕方なくセシルも引き受けたが、余りにも謎な頼みに乗り気にはなれなかった。何より必死に頼み込み、こちらが了承すると安堵の表情を見せたリオに対してある疑問が浮かぶ。
「……あのリオさん。間違ってたらすいません。その人の事、リオさんは好きなんじゃないんですか? だったら私なんかより……」
「ふふ、違うわよ。そんなんじゃないの。上手く説明出来ないけどそういう関係じゃないのよ。ただ今の彼の姿を見てられないって感じかな」
そう言って少し遠くを見つめるように微笑むリオを見て、セシルはそれ以上聞く事は出来なかった。
その後リオと軽く会話を重ね、その人物と会うのは後日ルカニード王国にセシルが赴く事で合意した後、セントラルボーデン軍本部に連絡を入れる。
やはりセシルはMIAと見なされていたようで電話の向こうでは慌てているのが伝わってきた。今はリッツカルドで療養していた事を伝えると迎えをよこすので待機しているよう命じられる。
「ごめんね、手間取らせるけど。なんなら旅費ぐらいは出すから」
「いいですよ。助けていただいたし、体の状態の事もあるから暫く休暇貰うつもりですので。それにルカニード王国も行った事ないですし観光がてら伺いますよ」
セシルはそう言って荷物を纏めるとリオ達の元を後にした。
最後まで丁寧に頭を下げ去って行くセシルをリオは軽く手を振りながら見送っていた。
「……そろそろ私達、顔出していいですか?」
そう言って別室からユウナが不満げな顔を覗かせる。
「えぇ、どうぞ、いいわよ。私がした事、余計なお節介だったと思う?」
「う~ん、どうでしょうね。余計なお節介だとは思いませんけど、良い方向に転ぶかはわからないですね。ただ、あの子である意味ってあるんですか?」
「それはただの直感よ。巡り合わせみたいなもんかな」
そう言ってリオは目尻を下げて微笑んでいた。
セシルが街の外れにある公園のベンチに腰掛けていると、迎えの兵が目に入った。すかさず合図を送ると兵達はセシルの元へと駆け寄って来る。
「ご苦労さまです。お迎えありがとうございます」
セシルが立ち上がり力強く敬礼をし礼を伝えると、迎えの兵達も力強い敬礼で返す。
「セシル・ローリエ少尉でありますね? お迎えにあがりました。宿でお待ちいただければそちらまで伺いましたのに」
「保護して下さったのは一般の旅行者の方です。これ以上迷惑は掛けられません」
「まぁ確かにそうかも知れませんが……とりあえず行きましょう。皆本部でお待ちです」
凛とした笑みを見せ迎えの車に乗り込むセシルだが、内心はリオ達の事を聞かれずに上手くかわせたと安堵していた。
「お疲れかも知れませんが少尉には一つお伝えするように言われてまして……よろしいですか?」
車両に入り落ち着くなり兵の一人から問い掛けられた。その含みを持たせた物言いに不安が過ぎり、少し戸惑いながら頷く。
「同期でお知り合いだと思いますがジョシュア・ゼフ少尉が現在拘束されています。容疑はスパイ及び隠避です」
余りにも予想だにしない情報にセシルはその大きな瞳を見開き、言葉を失ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます