第38話 激突!! バレスタ⑩
「クソっ……油断したぜ」
マーカスが胸を押さえながら上体を起こして、顔をしかめて呟いた。
「マーカス、動けるか?」
ジョシュアが駆け寄り問いかける。
「結構やべぇな。まぁ動くぐらいは出来そうだが……それよりあいつ怒ってるぞ」
マーカスが苦笑いしながらも、軽口を叩くぐらいの元気は残っているようだった。
しかしジョシュアの目から見ても、マーカスと再び二人がかりで接近戦を繰り広げるのは無理なのは見て取れる。
「まぁ離れて後輩の応援でもしといてくれたら、きっちり仇は取ってくるんで」
そう言ってジョシュアは再びガルフの方へと身体を向けた。
「ふん、仇って。俺はまだ死んでねぇよ」
そう呟き中途半端な所にいては、足手まといになると察したマーカスは距離を取った。
そうして再び、ジョシュアとガルフの死闘が繰り広げられる。
ジョシュアがダガーを振るい、至近距離から銃を放つも、ガルフは躱し、己の爪や牙で反撃をする。
このままでは埒が明かないと思い、ジョシュアが距離を取り魔法を放とうとするがガルフは間髪入れずに襲いかかる。
魔法に集中出来ないジョシュアは仕方なく再び、ダガーと銃で応戦するしかなかった。
「タイマン勝負でそう簡単に魔法使わせると思ったか?」
「ははは、まぁそうだよな。だったらコイツで仕留めてやるよ」
そう言ってジョシュアは腰に
それはセシルが使っていたやや細身の剣とは違い、長く分厚い刀身は重厚感たっぷりで、振るうだけでもそれなりに鍛錬がいりそうな代物であった。
「へへへ、攻撃力はありそうだな。でもよ、そんな物振り回して俺のスピードについてこれると思ってんのかよ!?」
そう言ってガルフが右腕を振りかぶり一気に距離を詰めてくる。
実際ガルフの言う通りだった。
この大剣は攻撃力は高いが、ガルフのスピードについていける自信がなかった為、ジョシュアも抜けずにいた。
だがダガーと銃ではガルフに致命傷を与える事も困難な為、現状を打開するには
迫るガルフに対してジョシュアが剣を振り下ろす。しかしこれをガルフは簡単に躱し右腕で突きにくる。
鋭く伸びた爪がジョシュアの眼前に迫ったが、なんとか上体を反らしこれを躱す。
だが体勢が崩れたジョシュアに対してガルフはすぐに左手を振り下ろした。
ジョシュアも後方に飛び退き躱すが、鋭い爪はジョシュアの胸をかすめていた。
「はぁ、はぁ……ふぅ」
呼吸を整え、大剣を構えるジョシュアの胸からは血が滴り落ちていた。
「ははは、刻んでやるぜ兵隊」
血の付いた爪を振りながらガルフは笑っていた。
『やばいな。やはりこの剣じゃ奴の動きについて行けない。せめて魔法が使えれば……』
ジョシュアがそんな事を考えていた時、以前セシルが言っていた事を思い出した。
『どう? コツを掴めばこうやって小さな魔力を安定して使う事も出来るようになるわよ』
そう言ってセシルはその時、自らの掌の上で小さな竜巻を作っていた。
「やってみるか……」
そう言って剣を握り締める。
再び両者の間に重い空気がのしかかる。
剣を下方に構え、ジリ、ジリっと僅かににじり寄るジョシュア。
「……いいねぇ、この緊張感。だが、動かなきゃ面白くねぇよな」
ガルフが両手を広げて襲いかかった。
ジョシュアは下方に構えた剣を握りしめる。
飛びかかって来るガルフをジョシュアはあえて呼び込んだ。そして十分に射程圏まで呼び込むと握りしめた剣を一気に振り上げる。
しかしこれをガルフは予測していたかの様に笑みを浮かべて難なく躱してみせる。
振り上げた剣の勢いのままジョシュアの身体が伸び上がっていると、ガルフが振り回す様に右腕を振って襲いかかった。
これをジョシュアは勢いのまま横に飛び退き、そのまま回転する様にガルフの胴目掛けて剣を横に一閃する。
しかしガルフはこれを素早くバックステップで躱した。
「終わりだ兵隊!!」
ガルフが再び踏み込み鋭い爪を振るう。
確かにジョシュアは今、勢い余って剣を完全に振り切り、右手が離れて左手一本で大剣を握っているような状態だった。
「まだだよ!!」
そう言ったジョシュアは左手一本で大剣を振るった。常識では考えられない動きにジョシュアの左腕の骨はきしみ、筋肉や腱は今にもちぎれんばかりに悲鳴を上げていた。
しかしその剣の勢いは今まで振るっていたよりも鋭さを増している。
振り下ろしてきたガルフの右腕に対し、ジョシュアが左手一本で大剣を振り上げる。
次の瞬間、ガルフの右腕が宙を舞った。
踏み込んで来たガルフに対して、ジョシュアの大剣がカウンター気味に捉えた瞬間だった。
そのまま天に掲げるかの如く、高く振り上げた大剣を次は両手で掴み、一気に振り下ろした。
咄嗟に左手でガードしたガルフだったが、ガードした腕をものともせず、そのまま肩口に剣がめり込むと、一気に胸まで斬り裂いた。
「ごふっ……ば、馬鹿な……」
ジョシュアの怒涛の攻めにより、両腕は落とされ、大剣で肩口から胸まで裂かれたガルフが血を吐き、膝をつく。
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