第29話 激突!! バレスタ
夜になりカストロ中隊は作戦通り二手に別れて拠点を後にする。
まず、カストロやボーラ、バスケス達が教会に向けて出立して行く。
それから少しの時間を空けてジョシュア、セシルを中心とした残りの者達が、通信の為に僅かな人員を残し、拠点を後にした。
「よし、いいか? 一応こっちのグループのリーダーは俺だ。現地で何か事が起こった場合は俺の指示に従ってもらうからな」
遺跡に向かう途中の車内でマーカスが皆に向かってそう指示を出す。
純粋な戦闘力や能力だけで言えばジョシュアやセシルの方が上であったかもしれないが、新人でまだ実戦経験が乏しいジョシュアや本来隊員でもないセシルに隊長を任せる訳にもいかないという事から、試作型バトルスーツをまとい実戦経験も豊富なマーカスがこの隊を率いる事となった。
「じゃあマーカス隊長よろしくお願いしますね。私に何かあったら助けて下さいよ」
「当然じゃないかセシルちゃん。やばくなったら俺の後に来な、俺が守ってやるぜ」
セシルがあざとく、上目遣いでマーカスを覗き込むようにお願いすると、マーカスは得意げにそう言ってのける。
そんな二人のやり取りを見て隊員達はクスクスと笑いを押し殺す。
マーカスの隊長としての資質に若干の不安は残るものの、兵士としての能力は疑いようもなく、隊員達は納得しているようだ。
暫くして車両は、街の東にある森の入口に到着すると車を停車させる。
「ようし、車で来れるのはここまでのようだな。ここからは歩いて行くぞ。隊列は乱すなよ」
そう言ってマーカスが先頭に立ち、その後にセシルが続いた。
隊列の
暫くそのまま森の中を進んで行くと木々が無くなり少し拓けた場所に行き着いた。
正面には石製の階段があり、奥には何やら建造物のような影も見える。
「どうやらここが噂の遺跡のようだな。思ったより古そうだな」
マーカスが周りを見渡しながら呟いた。
「そうね、これって旧暦でも古い部類に入る遺跡じゃない? それに思ってたより広そう……で? ここまで来たけどこの後どうするの? 私に考古学はわからないわよ」
セシルが前傾姿勢で、腰に手を当ててジョシュアに尋ねる。
「参ったな。ここに来れば何かあるかと思ったんだけどな……さて隊長どうしましょうか?」
「お前、こんな時だけ隊長を立てようとするな。まぁここで固まってても仕方ない。ちょっと広そうだし手分けしてこの遺跡を探るか」
そう言って数名づつに別れて探索を開始する。
そんな中、セシルが暫く探索を続けていると遺跡の中でも屋根も無く再び拓けた場所に出た。
「……ねぇマーカス。なんか星空が綺麗な所に出て来たけれど何? わざと?」
セシルが夜空を見上げながらマーカスに笑って問いかける。
「いやぁセシルちゃんとこんなロマンチックな場所で二人っきりになれるなんて素敵だよなぁ」
そう言ってマーカスは頭に手をやりながら笑っていた。
「ふふふ、本当ね……だけど残念ながら二人っきりじゃないみたいよ」
セシルはそう言って笑みを浮かべながら、鋭い視線を周りに配らせる。
「え? 何だ? どういう事だ?」
マーカスが慌てて周りを見渡しながら銃を構える。
すると物陰からサングラスをかけ、派手なアロハシャツに身を包んだガルフが姿を現した。
「はっはっは、なんだ勘がいいじゃねえかお嬢ちゃん。気配は消してたつもりだったんだけどな。それよりも、かなりの上玉だな。どうだい?俺の
「あはは、面白い冗談ね。残念ながら貴方みたいなのは好みじゃないのよ」
ガルフが卑下た笑いをしながら尋ねたが、セシルは酷く冷たい笑みを浮かべて返していた。
「そうかい。お前みたいな気の強い女を服従させてみてぇな。気が変わったらいつでも言えよ。死んじまう前にな」
そう言ってガルフは人狼の姿へと変わっていく。その横にいた者も虎の頭をした
「じ、人狼!? それに人虎まで!?」
マーカスが二人の怪物を前に戸惑いをみせる。
「あら、獣風情が私を好きにしようっての? 本当冗談じゃない。
セシルは腕を組みながら強気な姿勢を崩しはせず、寧ろ不敵な笑みを浮かべていた。
「おいおい、なんだすげえ言われようじゃねえか。とりあえず俺は腹が減ってるんだ。男の方は喰っちまってもいいよな?」
更にセシル達の後からトカゲの姿をしたリザードマンが姿を現す。
「ちょっとちょっと、何ここ? 動物園なの? アナベルって奴はサーカスでも開く気?」
次々と姿を現す怪物達に言葉を失うマーカスとは対照的に、セシルは笑みを浮かべながら挑発的な言葉を繰り返す。
「はっはっは、いつまでその強気な態度が続くかな。ますます服従させた時が楽しみだぜ」
「ふふふ、来なよワンコども。私がきっちり躾てあげる」
大きな口を空け、舌を出しながら卑下た笑いをするガルフ。
ガルフの方に指を向けクイクイっと曲げて、『かかって来い』と言わんばかりに冷たく見下したような目をして笑みを浮かべるセシル。
一触即発の張り詰めた空気が辺りを支配する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます