第27話 バレスタ潜入
ハワード将軍にバレスタ潜入を言い渡されて数日後、ジョシュア達カストロ中隊は作戦通りバレスタに到着していた。
「さてと、まずは街を見て回るか。皆、くれぐれも目立つような真似はするなよ」
「わかってますよ勿論。まずは情報収集に徹しましょう」
カストロが皆に釘を刺すように言うとジョシュアが頷き言葉を返していた。
「お、お姉さん。めちゃくちゃ可愛いねぇ。何してるの? 観光とか?」
後ろからした声に慌てて振り返るとセシルが地元の者とみられる男に声をかけられていたのだが、当のセシルは眉根を寄せて、不快感をあらわにしている。
「え、ああよく言われるのよ。その台詞。今忙しいから残念ね」
「ええ、なんだよ。高飛車な女だなぁ」
「あはは、もうちょっとマシな捨て台詞ないわけ?」
「なんだこの女……」
見下したようにあしらい、嘲笑うセシルに男が殺気立つ。
するとセシルの足元に不自然な風が吹き始め、砂塵が舞う。
「こ、こいつまさかウィザードかよ!?」
不自然に風が吹き荒れ始め、その中で片方の口角を上げて冷淡な笑みを浮かべて佇むセシルは、さしずめ『魔女』のようだった。
たまらず男達はその場から走り去った。
「ふん! 最後までくだらない奴らね」
「いや、ちょっと待て。お前一般人に平然と魔法使うなよ!」
セシルが去って行った男達を
「あら、か弱い女の子が男達に囲まれてるのよ。正当防衛じゃない? まぁ殺したりはしないわよ。そうね……腕の一本落とすぐらいかな」
「おい。やりすぎだろ。だいたいか弱い女の子はナンパしてきた奴の腕なんか落とさねぇよ」
「あはは、冗談に決まってるでしょ。威嚇しただけじゃない。だいたいあんな風に軽く声かけてくる浮ついた男って好きじゃないのよ」
笑いながら当然のように言ってのけるセシルにジョシュアは頭を抱えた。
「ねぇちょっと! 日差しが強過ぎるんだけど日が落ちるまで宿で休まない? 私あんまり日焼けしたくないんだけど!」
今度は後ろでボーラが愚痴りだした。
確かにバレスタは気温も高く日差しが強い。ボーラは日焼けを嫌ってか黒い長袖を羽織り、顔はサングラスをかけ、鼻から下は布のフェイスベールで覆っていた。
元々背の高いボーラがこの地に似つかわしくない特異な格好をしている為、本人に自覚はないようだが周りは奇異な目を向けている。
「はぁ……ウィザードって皆どこかズレてるんですかね?」
ジョシュアが疲れたようにカストロに問いかけたが、カストロは首を振って苦笑いを浮かべているだけだった。
結局どうしても目立ってしまうセシルとボーラをバスケスが拠点としているモーテルまで送って行く事で、なんとか治まりをみせる。
その後バレスタの街を手分けして散策しながら情報収集するカストロ中隊。
そんな中ジョシュアがとあるバーで情報収集している時、突然男から声をかけられた。
「よう、兄ちゃん。さっきから色々話しかけてるみたいだけど何か探し物かい?」
ジョシュアが振り返るとそこにはサングラスをかけ、アロハシャツを着た大柄な男が座っていた。
それは人の姿をしたガルフだったが、しかしその事にジョシュアが気付く様子はなかった。
「いやぁ、まぁちょっと仕事で来てるんだけど、この街は古い遺跡なんかも多いみたいだから何かおすすめの所なんかはないかと思ってね」
「ははは、なるほどねぇ。なんだ遺跡に興味あるのかい?」
サングラスの奥にある目を光らせ、片方の口角を上げてガルフが笑って問いかける。
そんなガルフを見てジョシュアも何かを感じていた。
勿論明確な答えを掴んでいる訳ではない。
しかしジョシュアは感じ取っていた。
『この男は何か知っている。そして俺達を誘ってやがる』と。
「あぁ……遺跡というか、例えばシャリアとかかな。なんで世界を滅ぼそうとしたのか気にならないか?」
「なるほどな……だったら街の東にある森の中に相当古い遺跡があるんだが、夜そこに行ってみるといいかもしれないぜ」
ガルフは変わらない笑みを浮かべながらジョシュアにそう教える。
「……なるほど。森の中の遺跡か。夜の方がいいのか?」
「ああ、そうだな。夜の方がいいぜ。そうすればアンタらが探してる何かが見つかるかもしれねぇな」
「そいつは楽しみだ」
そう言って互いに笑みを浮かべてその場は別れた。
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