第14話 試作型バトルスーツ

 ジョシュア達カストロ中隊はリバットより帰還して数日後、司令部へ招集されていた。


 カストロ中隊の面々は緊張からか皆、いつもの様な軽口を叩く事もなく表情を強ばらせている。

 それもそのはず、彼等を呼び出していたのは軍の中でもトップ三に入るジョン・ハワード将軍だったからだ。


「先日のリバットでの働きはご苦労だった。それで新型のクリスタル内蔵のバトルスーツはまだ実戦では使われてないようだが、どうなんだね少尉?まだ実戦投入は無理なのかね?」


「あ、いや……はい。なんとか実戦でも使えるように日々努力はしているのですが……」


 突然軍トップから呼び出され、直接尋ねられては流石にジョシュアもたじろいでしまう。


「私としては未来有望な兵士に期待を掛けて託したつもりだったんだがね。そろそろ結果も欲しいんだが……」


 そう言って将軍はにこやかな表情を見せる。

 実際将軍の口調は柔らかな物だった。

 しかし、誰の目から見ても含みを持たせたその物言いからは、圧を感じられた。


「まぁ、新兵だけに重責を負わすのも酷というものかな。そこでだ、カストロ中隊長。試作品の改造バトルスーツを更に二つ用意した。魔力を供給するよう魔法兵団にも話は通してある。先にあるバトルスーツと合わせて三つのバトルスーツを使って早急に結果を出してもらいたい」


 緊張からか、圧倒されたのか、言葉が出てこないジョシュアをハワード将軍は一瞥した後、カストロに視線を向けた。


「ありがとうございます。必ずやご期待に添えれるよう努力します」


「そうか。わざわざ君達に新兵器を託したんだから期待しているよ。なにせこの計画には人も金もかなりかかっているんだからね。一週間後、良い結果が聞けるのを楽しみにしているよ」


「え?……一週間後ですか?」


 さらっと一週間後に期限を切ってきた将軍の言葉にカストロが戸惑いを見せ、思わず聞き返す。


「ん? 不服かね?」


 圧を含んだ短い言葉と共に鋭い眼光がカストロに向けられる。


「いえ、必ずや結果を出してみせます」


「そうか、そうか。では一週間後、楽しみにしているよ」


 そう言って最後はにこやかな表情浮かべたハワード将軍に敬礼をした後、カストロ中隊の面々は司令部を後にした。


「どうするんですか? 最後一週間後にあんな約束しちゃって」

「あの状況で断れる訳ないだろが! もうこうなったらやるしかない」


 兵舎に帰った後、隊員達と言葉を交わしたカストロは覚悟を決めた様に言った。


 その後、技術開発局より試作品のバトルスーツを渡されたカストロ中隊はそれを手に、魔法兵団の兵舎へと赴いた。


「技術開発局所属のカストロ大尉だ。ハワード将軍の方から話は来てると思うのだが……」


 魔法兵団兵舎の衛兵にカストロが話掛けると、衛兵は少し笑みを浮かべた後「少しお待ちを」と言い残し、奥へと姿を消して行った。


「あの衛兵、ちょっと感じ悪いですね」

「魔法兵団の連中なんてあんなもんだろ」


 この世界では貴重なウィザード。

 その貴重なウィザード達だけで組織されている魔法兵団の中には自分達が特権階級だと思い込んでいる者も少なくなかった。


「お待たせいたしました。さぁこちらへどうぞ」


 再び戻ってきた衛兵がカストロ達を中へと案内する。

 中に入ると至る所に飾られた装飾品の数々に目を奪われる。


 自分達の兵舎とは随分違うもんだな。

 

 ジョシュアがそんな事を考えながら進んで行くと奥にある一室に通された。


「ようこそ、カストロ中隊の皆さん。私はゲルト少佐です。ハワード将軍からお話は伺っています。皆さんのにはこちらの二人、シャーンとボーラがお手伝いいたします」


 通された部屋の奥では、立派な机を前にゆったりと椅子に腰掛けたゲルト少佐がカストロ中隊を迎えてくれた。


 薄らと笑みを浮かべるゲルト少佐とは裏腹に、紹介されたシャーンとボーラは机の両端に立ったまま、自らの前で手を組み表情を一切崩さないでいた。


 恐らく俺達は歓迎されてないな。

 ジョシュアはその場の空気から、そう感じ取っていた。

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