第15話 試作型バトルスーツ②

 ゲルト少佐の話によると長髪のブロンドヘアーで端正な顔立ちの男性がシャーン少尉で、水属性の魔法を得意とするそうだ。

 目鼻立ちがはっきりした何処かエキゾチックな雰囲気を醸し出している、黒髪ロングヘアの高身長な女性のボーラ軍曹が火属性の魔法が得意だそうだ。


「あと一人は私直属の部下という訳ではないが、元から手伝っているセシル少尉に頼んでおいた。本人にもそちらを優先するように言ってある。我々の所の兵を使うのだからしっかりとした結果を出してもらいたいものだね」


 ゲルト少佐は常に笑顔を絶やさず、丁寧な物腰だが何処か冷淡な感じは否めなかった。


「ありがとうございます。では早速に移りたいのでよろしいですか?」


 そう言ってカストロが一礼をし、シャーンとボーラに促していた。

 自分達の任務を実験と言ったのはカストロの僅かな意地の表れだったのかもしれない。


 早々に魔法兵団の兵舎を後にした一行はシャーンとボーラを連れて実演場に場所を移した。


「まぁ命令だから協力しますけど、なんで私が選ばれたんだか……」

「この前の作戦で遅れをとったの、俺とボーラだっただろ? そのせいじゃないか?」

「はあ、最悪だわ……もうちょっと本気でやればよかった」


 遠慮のない二人の会話で殺伐とした雰囲気がその場を支配していた。


「あ、あのコレに魔力込めてもらっていいですか?」


 なんで俺が?

 そんな思いを抱きつつ、ジョシュアが二人に若干気を使い魔力のチャージを頼むと、二人は特に文句を言う事はなく素直に協力してくれていた。


「それで、私達が魔力込めたコレ。少尉が使うのかしら?」


 魔力を込め終わったボーラがジョシュアに向かって問いかけた。

 階級で言えばジョシュアの方が上にあたるが軍人としての歴やウィザードとソルジャーという違いからか、ボーラが遠慮してる様な素振りは見受けられない。


「いや、俺は以前から使用しているやつがあるから、これは他の隊員が装着するはずなんだが」


「なるほどね。じゃあ……彼がいいかな。あの端から二番目に立ってる背の低い彼」


 そう言ってボーラは一人の隊員を指さした。

 本来試作品のバトルスーツを試すのは他の隊員が務めるはずだったので少し場がざわめいた。


「ああ、ボーラ軍曹。彼はバスケス伍長だ。伍長はこのバトルスーツを試す予定になかったんだが、何か彼にする理由でも?」


「ああ理由? 直感よ。結構大事なのよフィーリングみたいな物。一つ誤解のないように言っとくけど彼が好みとかじゃないからね」


 カストロが間に入りボーラに問い掛けたが明確な理由は無く、平気で直感だと言われてしまった。

 少し戸惑ったがあまりにも平然と言ってのけるので、そういった物も大事なのかもしれない、と思い直しボーラの指示に従う事にした。


「おい、そう言えばジョシュアの同期のセシル少尉はどうした?」


「あ、すいません。一応伝えてはいるんですが、まだみたいです。時間通りに来る事の方が少ないんでまだかかるかと」


 カストロが思い出した様にジョシュアに問い掛けたが、ジョシュアが申し訳なさそうに答えていた。


「ちょっと! いきなり呼び出した挙句随分な言いようじゃない。何? 私の評判落としたい訳?」


 突然後からした声に驚き、慌ててジョシュアが振り返ると、そこにはセシルが腕を組み立っていた。


「あれ? どうした? いつもより早いじゃないか」


「今まではあんたとアデルに仕方なく付き合ってあげてた訳よ。今回からは軍の命令なんだからしっかりと協力するに決まってるでしょ」


 セシルが登場するやいなや捲し立てるようにジョシュアに言い放つ。

 毎度のことながらジョシュアは苦笑いを浮かべるしかなかった。


「おいジョシュア! お前こんな美人な子といつも訓練してたのかよ!」


 隊員の一人が結構な剣幕でジョシュアに問い詰めてきた。

 確かにセシルの美貌は同期の中でも一、二を争っていた。軍服を脱げば華やかな芸能の世界で活躍していても全く不思議じゃない程だ。

 しかし、気性の激しさも一、二を争うほどだった。

 そこに自身のルックスの事も自覚はあるようで余計にタチが悪い。


 今も先輩隊員に詰め寄られているジョシュアを見て、勝ち誇った様に笑みを浮かべているのだから。

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