第19話 俺、エスコートします。本番です。③

拍手に驚いていた俺の周りに数人の令嬢が来た。


「私、ダ、ダ、ダラス・フォン・カリンヌです。わ、私とも、踊ってください。」

「私、グドルス・フォン・ダリアよあなた良いわね。私と踊りなさい。」

「私、グラード・キグン・フロード・アーラルよ。あなたとは親戚ね。」


俺のもとに来た令嬢は公爵家が2人、

王族が1人だった。

なんで、王族が来たんだよ!!


公爵家の2人は王族に驚いて、すぐに退散した。

なんだったんだよ。


グラード・キグン・フロード・アーラル王女は、この国の王族の唯一の王女である9歳であり、他国からも一目置かれる程の美貌と知識を持ち、『グラード国のユリ姫』と呼ばれている。(次期国王の娘)


ユアン様がアーラル王女に言った。

「何故、アーラル王女がいらっしゃっるんですか?」


「あら、あまり驚かないのね。

ふふふ、意地悪なことを言ったわね、ごめんなさい。

でも、大した用はないわよ。」


じゃあ、来ないでくれよ。


「そうね、強いて言えば、かわいい従兄弟の顔を見に来たというところかしら。

あぁ、私の許可が必要ね。

ユーラセル・サウスに発言の許可します。」


平民の俺は貴族ならまだしも王族には許可を貰わないまま、発言が出来ない。

発言などすれば、即、死刑もあり得る。

貴族の場合は何もお咎めなしだが。


「はぁ、こんなことするのは面倒ね。

まぁ、仕方ないことだけれど。」


それは、俺も納得だ。


「さっきのダンスを見て思ったわ。

サウス、あなた、私と結婚しない?」


予想外だった。何故、結婚?


「何故、私がアーラル王女と結婚をすることになるのでしょうか?」


「私が面倒な婚約もなくなると思ったからよ。」


『グラード国のユリ』と呼ばれるアーラル王女には毎月沢山の婚約の申し込みが来る。

それは、グラード国の公爵などの貴族のみならず、他国の貴族、王族からのものだった。


理由に不審な点はないが、なんだか他にもなにこ理由があるんじゃないかと怪しくなる。


そんなことを思っているとアーラル王女が観念したと言わんばかりに


「あなたのことが好きになったから、結婚してと言っているのよ‥‥。」

と一言。


それと同時にユアン様は俺の前に庇うように、入ってきた。


いや、嘘に決まってるでしょ。


「サウスは私の専属執事ですし、今日はユラウス王子か主役です。なので、今日のところは、お引き取りください。」


真っ当な理由である、王族や貴族でも今、使用人をとるなどあり得ない。アーラル王女の行為は越権行為もいいところだった。


「そうね、それも確かだわ。

恋は盲目というものかしら?

とりあえず、今日は引き上げるわ。」


そうして、アーラル王女が去ろうとする同時に、怒鳴るような声が俺に届いた。


「おい、サウス!お前調子に乗るなよ!!」


この国の第2王子グラード・キグン・フロード・ナルシス6歳だった。


俺はその言葉で気づいた。

こいつ、嫉妬してんなーと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る