第5話 なんかいいなと感じる瞬間
私は石の階段を上り下りすることが多い。
1年前からそういうルーティーンで生活している。
今日もいつものように少し長めの石の階段を登っていた。
土曜日なのに学生がちらほら。
階段を登っていると、後ろにはエナメルバッグを肩にかけた高校球児が二人。
「エグいエグい、ふひひ」
という話し声が聞こえた。
山沿いの静かな場所にある石の階段。雑草と錆びた手すりに味わい深さを感じる。
視界に入るのは最近水が張った田んぼ、あとちょっとした集合住宅くらい。
じめっとした日の昼下がりに、こんがり焼けた高校球児二人がケタケタ笑って階段を登っていた。
なんかいいなと思ってしまった。
多分あと5年もすると、その二人が会話で使っている単語も表現もイントネーションも全て移り変わるんだろうなと思う。
今その瞬間、そのコミュニティだけしか使わない言語があるんだと思う。その二人を見た時にそう感じた。
私も10代のある期間しか使わなかった共通言語がきっとある。
今ではもう思い出せないけど。その時付き合っていた友人や恋人との間でしか使わない共通言語がきっとあって、それは間違いなく移り変わっていると感じた。
なんか分からないけど、今日の石の階段はよかった。
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