第3話 超能力戦士 レッド・ルビー 前編

 揺らめく炎の中、破壊を撒き散らすバベルの戦闘用アンドロイド『バトロイド』

 十数体居るうちの一体が、足をくじいて避難し遅れたのだろう、痛みに顔をしかめ座り込んでいる女性を見つけた。


 そのまま、彼女のもとへ向かおうとするバトロイド。だが──。


「──やらせないっ!」


 何処からともなく甲高い少女の声が聞こえてくる。少女の声が聞こえてきた方向へ、向きを変えるバトロイドだったが、次の瞬間!


 ぐしゃり、という音とともに、バトロイドの装甲がひしゃげ、吹き飛ばされていく。

 そして、一回、二回と地面をバウンドして転がっていったバトロイドは、そのまま火花を散らして爆散する。

 バトロイドが破壊された爆発音で、他のバトロイドたちもようやく乱入者に気付いたようで、一様に乱入者を見る。


 そこには、拳を繰り出した姿勢の少女。ショートボブの黒髪にカチューシャを付け、軍服に似たコスチュームと身体全体が隠れそうな外套を身に纏い、手と足に鈍色に光る手甲と足甲を付けた彼女こそが、レッド・ルビー。

 超能力と体術を駆使し、かつてバベルを壊滅に追いやった正義のヒロインだ。


 その彼女、レッド・ルビーの手甲、『PサイコDディスCチャージャー』からは白い蒸気のようなもの。彼女自身の力の源、超能力を行使するためのエネルギー『サイキックエナジー』の残滓が噴出している。

 先ほど彼女がバトロイドを破壊した攻撃。

 自身の拳にサイキックエナジーを纏わせる攻撃こそ、彼女の最も多用する技。名をサイコ・インパクト。


 サイコ・インパクトでバトロイドを一体撃破したレッド・ルビーは、自身の拳を握ったり、開いたりして調子を確かめる。

 そして問題ないと判断したのか、彼女は元気よく声を張り上げて気合いをいれるとともに、へたり込んでいた女性に声をかける。


「よしっ、絶好調! ……そこの貴女、動ける?」

「は、はいっ!」

「じゃあ、ここは危ないから今すぐ逃げてっ!」


 女性に逃げるように言ったレッド・ルビーに対して、彼女は礼を言うと同時にルビーの無事を祈る。


「……っ! はいっ、レッド・ルビーも気をつけて」

「ふふ、ありがとう。…………行ったね。それじゃ、次々いくよっ!」


 女性が逃げたことを確認したレッド・ルビーは、残りのバトロイドたちに立ち向かっていく。


 まずは手近にいた一体に近づくとボディブロウのようの殴り、そのまま振り抜く。

 その攻撃で吹き飛ばしたことを確認しながら、彼女は勢いを殺さず、自身を独楽に見立てて回転しつつ近くのバトロイドたちに裏回し蹴りからの跳ね蹴りで次々と蹴り飛ばす。

 だが、ルビーが宙に浮いたことで隙ができたと判断したのか、残り六体のバトロイドたちが彼女を包囲するように迫ってくる。

 残りの敵たちが近づいてきたことを確認したルビーは着地すると同時に正面の敵に突貫!


「やあぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 自身の身体にサイキックエナジーを纏わせて体当たりをする。

 いくらルビーがうら若き乙女で、羽のように軽い。などと言われそうな体躯であろうと、強化された脚力と攻防一体のサイキックエナジーによる自身の身体を擬似的に弾丸化した攻撃に耐えられるはずもなく、正面のバトロイドたちは大型車にでも跳ねられたがごとく吹き飛ばされる。

 そうやって包囲の一角を破りつつ脱出したルビーは、脚をダンっ、と力強く地面に叩きつけて無理矢理減速しつつ背後を、残りの敵たちを見据えるように振り向く。

 そして今度は左腕を手前に、右腕は弓を引く。あるいは殴り付けるように引き絞る。

 するといつの間にか、左腕の近くには円形に象られたエネルギーの塊。

 彼女が使う対遠距離用の必殺技──。


「サイコ・バスタァァァァァァァ!」


 彼女は必殺の咆哮とともに、エネルギーの塊を思い切り殴り付ける。

 殴られたエネルギーの塊は、まるで散弾のように破裂すると残りのバトロイドたちに殺到する!

 これが彼女の対多数戦闘における切り札。サイコ・バスター拡散モードだ。


 因みに、拡散モードと銘打たれているように、この必殺技には対強敵用の集束モードも存在する。


 それはともかくとして、拡散されたサイコ・バスターは、バトロイドが回避行動をしようとする前に着弾!

 残りのバトロイドたちは、チーズのように穴だらけにされるとその場に倒れて爆散する。

 全てのバトロイドを倒したことを確認したレッド・ルビーは勝鬨をあげる。


「よっし! これで、終わりっ!」


 ──だが、彼女が喜んでいるのもつかの間。何処からともなく、忌々しげな声が聞こえてくる。


「おのれっ! おのれぇぇぇぇい! レッド・ルビーめ! またもや邪魔をしおってからに!」


 その声に驚いて振り返るレッド・ルビー。

 そこには人と蜘蛛を合体させたような異形。俗に言う怪人と呼ばれる存在が立っていた。


「──あなたはっ!」


 その怪人に見覚えがあったレッド・ルビーは思わず叫ぶ。

 怪人もまた怒り心頭の様子で彼女に咆哮する。


「ここであったが百年目! 今度こそ、このワシ、ガスパイダー様が貴様を地獄に送ってくれるわぁ!」


 そう言ってバベルの蜘蛛怪人。ガスパイダーがレッド・ルビーへと襲いかかった!

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